第106回全国高校野球選手権三重大会は、5日午後2時半から三重県四日市市の四日市ドームで開会式を迎える。4日は本番に備えてリハーサルがあった。試合は6日に始まり、昨夏より2校1チーム少ない62校60チームが甲子園出場をかけて59試合を戦う。3年生にとっては「集大成の夏」が始まる。

 「セカンド、行くよ」。三重県松阪市の松阪高校グラウンドに高い声が響く。ノッカーは女子部員の得平(とくひら)百華さん(3年)。自分専用のピンクのバットで内野ゴロを打ち分けていく。

 小学3年の時、2歳下の弟と野球を始め、津市の久居中では男女混成の野球部で投手や一塁手を務め、主将にも指名された。

 高校で野球部のマネジャーになったが、1年の秋に竹内伸監督に請われて、ノックの練習を始めた。1人、グラウンド隅のネットに向かってひたすら球を打ち、かき集める日々。2年から公式戦前のノックもするようになったが「打球がコントロールできず、めげた」と振り返る。

 うまく球が打ち分けられるようになったのは、2年の秋だ。ライバル校の監督に「もう使わないから」ともらった軽めのバットがなじみ、打球がうまく転がるようになった。それがピンクのバット。「最初は野手の正面に。徐々に左右に球を散らしていく。難しい球を捕ってくれると、こちらもうれしい」

 松阪は6日に津球場である1回戦で、伊勢工と対戦する。記録員兼ノッカーとしてベンチ入りする得平さんにとっても「集大成の夏」。夏の甲子園出場の経験がある近隣校同士。「接戦になるだろうが、粘り勝ちしてほしい」。後輩の女子マネジャー3人は野球経験がなく、ノッカーを務められないのが心残りだが、いずれ自分の経験を継いでくれる部員が現れると信じている。(本井宏人)