2023年度の県産米の輸出量が前年度と比べて約1・6倍も増えたことが、福島県が26日に公表した「県産農産物の輸出実績」でわかった。東京電力福島第一原発の事故で、輸出が途絶えた時期もあったが、着実に増加傾向を見せている。

 県内の輸出関係者を落胆させたのは、22年度の数字だった。前年の21年度の輸出量が397トンと過去最多を記録しながら、翌22年度は一転して約4割減の244トンまで落ちた。それが23年度は383トンとなり、不振だった前年度から復調した。

 県産品振興戦略課によると、県産米の輸出先は11年の東日本大震災の前までは、世界最大のコメ消費国である中国や、台湾が中心だった。だが、原発事故が起きたことで、多くの国は福島などのコメを含む食品の輸入を停止。翌12年度から2年間、福島からのコメ輸出量はゼロになった。

 このため、その後は輸出先を東南アジアに変え、輸出量を確実に伸ばしてきたという。

 国も後押ししてきた。国内の年間1人当たりのコメ消費量は1962年以降減少を続けているうえ、人口減も加わり、年間の需要量は毎年約10万トンずつ減っているからだ。

 回転ずしなど外食チェーンの海外進出などを背景に、日本産米の海外需要は年々高まっている。農林水産省によると、海外の日本食レストランは、21年の約15・9万店から23年には約18・7万店にまで増えた。福島から輸出されたコメも、主に日本食レストランで使われているという。近年は、玄米のまま輸入し、現地の店で精米して握りたてのおむすびを提供する店も、米国やフランスなどで人気だ。

 だが、こうしたコメブームを受け、国内の「コメどころ」による競争が激しくなった。低迷した22年度は、シンガポールが前年比40%減の65トン、香港も26%減の30トンになるなど大苦戦を強いられた。「産地間競争に負けてしまった」と県の担当者も言う。

 そこで、新たに着目したのが北米だった。米国では、原発事故による輸入規制が21年に全廃されたため、それを機に輸出を開始。復調した23年度は、米国向けが前年度の5.6倍になる152トン、カナダ向けは2.5倍の96トンと急増し、作戦が功を奏した形だ。両国だけで全体の65%を占めた。

 ただ、国内では北海道、岩手、宮城、新潟、茨城、富山などの輸出量がそれぞれ1千トンを超え、福島の上を行く。農林水産省によると、年間約3千トンの輸出量がある「みやぎ登米農業協同組合」は、輸出用米の生産者が22年には492人に上った。生産者を増やし、上位地域にどう食い込んでいくかが今後の課題となりそうだ。(荒海謙一、岡本進)