宮崎県内で牛や豚など29万7808頭が殺処分された口蹄疫(こうていえき)の発生から、20日で14年。県は素早く防疫に取り組むための家畜防疫演習を19日、実施した。
これまでは年2回の演習のうち、春は口蹄疫への対応を訓練してきたが、今回は、国内への侵入リスクが高まっているアフリカ豚熱の発生を想定して取り組んだ。
都城市の農場で、アフリカ豚熱への感染が疑われる豚の大量死の通報があったとの想定で、県や市の職員ら約110人が参加した。
都城市のJAみやざき都城地区本部の駐車場では、幹線道路沿いなどに開設する消毒ポイントを運営する演習があり、簡易消毒ゲートで10トン車に自動で消毒液を噴霧する作業が実演された。
この場所は、宮崎自動車道都城インターチェンジと、今年度中の全線開通が予定される都城志布志道路の結節点に近く、志布志港(鹿児島県志布志市)から飼料を運搬する車両などを実際に消毒する場所と想定されている。
ゲートは、小林市の防疫機材製造会社が開発。高さ3・9メートルのポールを固定したもので、車両が通過すると車の足回りなど12カ所の穴から消毒液が噴出する仕組みだ。
県によると、これまで、動力噴霧器を使った消毒ポイントには最低3人を配置する必要があったが、ゲートを使えば誘導役1人だけで済む。県で保有するゲートはないが、最大5台をリースできるという。
アフリカ豚熱は、豚やイノシシの感染症で、感染力や致死率が高く、有効なワクチンもない。農場で発生した場合は全頭殺処分が必要になり、感染が広がった場合、口蹄疫と同様、予防的な殺処分も認められている。
2018年に中国で蔓延(まんえん)した際には、1億5千万頭以上が死んだともいわれる。2024年1月以降、日本との航路がある韓国・釜山のフェリーターミナル近くで野生のイノシシへの感染が広がり、国内でも厳戒が続く。
演習の冒頭、県農政水産部の殿所大明部長は「アフリカ豚熱は口蹄疫と並び、最悪の家畜伝染病といわれている。口蹄疫の防疫の経験がない職員も多くなっており、習熟するには演習しかない。一連の流れを確認し、内容を検証して欲しい」とあいさつした。
県内では、全国2位の81万8200頭の豚が飼育されており(23年2月1日現在)、都城市は22年の豚の産出額が283億1千万円と全国1位となっている。(中島健)