川辺川への流水型ダム建設をめぐり、「子守唄の里・五木を育む清流川辺川を守る県民の会」など9団体は12日、熊本県や国に対し、建設に反対する住民の意見に耳を傾けるよう促す声明文を出した。ダムの環境影響評価については、日本自然保護協会(東京)も国に懸念を表明している。

 声明文は、15日で退任した蒲島郁夫前知事に対して、重要課題については任期切れ直前に進めず次期知事にゆだねること、16日に就任した木村敬知事に対しては、公聴会でダム反対の立場からの発言が圧倒的に多かったことを踏まえて対応することなどを求めた。

 蒲島前知事は退任直前の12日、環境影響評価法に準じて国が出した「準備レポート」に対し、「環境に極限まで配慮されたもの」などとする知事意見を提出した。

 準備レポートでは、工事や、実際に水をためて安全性を確認する試験湛水(たんすい)により、流域の希少な生物が生息できなくなる可能性について認めた上で、環境保全措置などで「できる限り回避、低減される」と結論づけている。

 「県民の会」の土森武友事務局長は「(知事意見は)住民の意見も参考にするとしていたが、公聴会ではほとんどが問題があるという意見だったのに、百八十度違う内容でおかしい」と訴えた。

 準備レポートについては、日本自然保護協会も国に意見書を出している。

 意見書では、流域にある洞窟「九折瀬洞」が一定期間冠水することにより、洞窟に生息するコウモリ類や固有種ツヅラセメクラチビゴミムシなどに不可逆的な影響を及ぼすと指摘。九折瀬洞の特殊な生態系を踏まえ、冠水しない地域への移植は不確実性が高いうえ、過去に例のない保全策のため、国が助言をあおぐとする専門家の名前を公表すべきだと求めた。

 さらに、カワガラスなどについても、ダム供用開始後には行動圏や生息域が分断されるとして、十分な環境保全措置をとるべきだとした。

 また、環境省のレッドリストで絶滅のおそれのある地域個体群に指定されているカワネズミについても、環境保全措置の検討を求めた。

 同会保護・教育部の大野正人さんは準備レポートについて、「ダム整備による環境への影響を過小評価をしているように感じる」と懸念を述べた。(大貫聡子、杉浦奈実)