東京電力福島第一原発事故で福島県から新潟県に自主的に避難した人ら634人が、国と東電に計約23億8千万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が19日、東京高裁であった。木納敏和裁判長は、608人に計約2億円を支払うよう東電に命じる一方、一審に続き国の賠償責任は認めなかった。

 原発避難者への賠償をめぐっては、最高裁が2022年6月、先行した同種訴訟で国の責任を否定。その後、下級審ではこの判断を踏襲する判決が続いている。

 19日の高裁判決は、02年に公表された国の地震予測「長期評価」に基づき、国が東電に対策を命じた場合、防潮堤の設置などの対策がとられた可能性が高かったと指摘。ただ、実際の津波は想定より規模が大きかったため、防潮堤を設置していたとしても「同様の事故が発生した可能性が相当にある」として国の賠償責任を否定した。

 原告側によると、原告の一部については、東電が謝罪して和解金を支払う内容で、今年1月に和解が成立。和解に応じなかった原告らが判決を受けた。(米田優人)

 「地裁判決から後退しなかったという程度の評価しかできない。不当な判決だ」

 判決言い渡し後に開いた記者会見で、遠藤達雄弁護団長はそう憤った。

 認められた賠償額は一般的な成人で1人当たり28万6千円、子どもや妊婦が39万6千円。地裁判決よりそれぞれ5万〜10万円ほど増えた。ただ、原告らが求めていたのは300万円。「本当にわずか。とても被害がまかなわれたと評価することはできない」(近藤明彦弁護士)と語った。

 国の責任が認められなかった点についても、近藤弁護士は「(22年6月の)最高裁判決と同じ理屈で、コピペ判決だ」と批判。今後の方針については「不満がある原告はたくさんいると思う。結論が変わる可能性がどのくらいあるかという問題はあるが、希望者がいれば上告して最後まで闘っていきたい」と述べた。

 原発事故の約1年後に、福島県郡山市から新潟市に娘2人と避難したという原告の女性(50)は「ちょっとでも金額がプラスされたのはありがたいが、国の責任も認めてほしかった。国を許したわけではない」と話した。(初見翔)