国名勝の庭園・依水園(いすいえん)(奈良市水門町)にある寧楽(ねいらく)美術館で、今年度の展示「中国・朝鮮半島・日本の美をもとめて」が開催中だ。同館が収蔵する東アジアの美術・工芸品から名品が選ばれている。

 寧楽美術館は神戸市で海運業を営んでいた中村家が収集した中国、朝鮮半島、日本の美術工芸品を所蔵。近年は外国人の来館者が増えていることもあり、今年度はテーマを設けず、名品を見てもらう展示を企画した。

 「梨子地(なしじ)菊山水蒔絵(まきえ)硯(すずり)箱」は、昭和天皇が1951年に行幸中の奈良で、サンフランシスコ講和条約と日米安全保障条約に署名する際に使った江戸時代の筆記具箱。「粉青沙器(ふんせいさき)印花菊花文鉢」は、灰青色の陶土に印花文を施し、白土釉(ゆう)で浮かび上がらせた朝鮮王朝時代の陶器だ。

 コレクションには古代中国の青銅器も。中国王朝が諸侯や諸民族に与えた印といえば福岡市の「漢委奴国王(かんのわのなこくおう)」の金印が有名だが、同館は古代中国の銅印を多数所蔵。鈕(ちゅう)(つまみ)の形は亀、ラクダ、蛇など様々で、来館者にも人気という。

 「秀品コーナー」では、同館のコレクションの中でも特別な逸品を3カ月ずつ公開する。4〜6月は長州藩主の毛利家に伝わった安土桃山時代の「黄金茶碗(ちゃわん)」を展示。木製の碗に金の薄板をかぶせて作られており、その精巧さに驚かされる。

 12月23日まで。依水園の開園時間は午前9時半〜午後4時半(入園は同4時まで)。火曜休園。9月24日〜10月1日は休園し、展示品の一部を入れ替える。入園料一般1200円、高校・大学生500円、小中学生300円。問い合わせは同園(0742・25・0781)へ。(今井邦彦)