【2021年6月7日 JAXAはやぶさ2プロジェクト】

太陽光は進行方向に垂直な面内で様々な方向に振動しているが、天体にぶつかって散乱や反射されると、その振動方向に偏りが生じる。この偏りの程度は偏光度と呼ばれ、光を反射した物質の種類や形状、大きさを反映する。つまり、偏光度を調べることで天体表面の情報を得られる可能性がある。

小惑星リュウグウは、探査機「はやぶさ2」や複数の望遠鏡での観測により、多くの調査がなされている。それらのデータや「はやぶさ2」が持ち帰ったサンプルと偏光度の情報とを比較すれば、さらに詳しい分析が可能になったり、今後の小惑星の偏光観測の礎になり得ると期待される。

京都大学の黒田大介さんたち「はやぶさ2地上観測サブグループ」は、2020年9月から12月までの計24夜にわたって国内外4か所の望遠鏡と偏光撮像装置を用いてリュウグウの偏光度を観測し、53%という結果を得た。これは太陽系小天体としてはこれまでで最大の値だ。

偏光度変化の比較
様々な小惑星と月の、偏光度変化の比較。赤丸がリュウグウ(提供:京都大学)

さらに、観測結果と複数の隕石の偏光度との比較から、リュウグウの表層の大部分にサブミリメートルサイズの砂粒が存在するか、もしくはサブミリメートルサイズの粒子が集まってより大きい石を構成しているという、2つの可能性が示唆された。「はやぶさ2」の小型着陸機「MASCOT」が撮像した表層画像では暗い色をしたカリフラワー状の組織を持つ岩が多く写っており、今回の観測・研究で得られた結果のうち後者のほうと調和的である。一方で最近公開されたリュウグウのサンプル画像では、サブミリメートルサイズの粒子の存在も確認されていて、少なくとも一部は前者の結果とも一致する。

リュウグウ表層と岩石サンプル
(左)MASCOTが撮影したリュウグウ表層。(右)リュウグウで採取した岩石サンプル(提供:(左)MASCOT/DLR/JAXA、(右)MicroOmega/IAS/CNES)

今後、リュウグウのサンプルの偏光度を測定すれば、どのような表層構造が偏光度に影響するのかが明らかになるだろう。また、観測で得られた偏光度を再現することにより、サンプル取得の際に失われてしまったリュウグウの表層構造の再構築もできると期待される。

太陽系小天体の表層には天体の進化の履歴が残されているが、現状ではその調査は探査機に大きく依存している。今回の研究成果をもとに、望遠鏡により得られた偏光度から小天体の表層調査が実証され、探査機に頼らずに天体表面状態の推定ができるようになれば、数多くの天体進化の履歴追跡が可能となり、太陽系の起源と進化の解明が大きく進むだろう。