スペイン人ライターのF1便り:フェラーリの優先順位に変化の兆し。エースとしての正念場を迎えるベッテル

スペイン人ライターのF1便り:フェラーリの優先順位に変化の兆し。エースとしての正念場を迎えるベッテル

 スペイン在住のフリーライター、アレックス・ガルシアのモータースポーツコラム。2019年シーズン当初はエースドライバーとしてチームを引っ張る存在だったセバスチャン・ベッテル。しかし、度重なる自身のミスだけでなく、チームメイトであるシャルル・ルクレールがベルギーGP、そしてフェラーリの地元であるイタリアGPで2連勝したことで苦しい立場に。今後のフェラーリはベッテルに対してどのように接していくのだろうか。

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 ベッテルは2018年シーズンからいったい何回のスピンを喫しただろう?どこまで数えたか分からなくなりそうだ!もちろんこれは誇張だが、4度のF1世界チャンピオンであり、スクーデリア・フェラーリのエースドライバーであるベッテルが、2018年のドイツGP以降あまりに多くのミスを犯している事実は変わらない。

 2018年のベッテルは、母国GPである雨のホッケンハイムでトップ走行中にドラマチックなミスを喫しリタイア。モンツァではルイス・ハミルトン(メルセデス)と接触しスピン、さらに鈴鹿にオースティン……そして2019年は第2戦バーレーンGPでまたもスピンを喫し、第10戦イギリスGPではマックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)とクラッシュ、さらには第14戦イタリアGPで、単独スピンに加え他車を巻き込んでの接触&ペナルティだ。私は不思議に思ってしまう。ベッテルはどこに向かっているのか?

 だが、一方で今シーズンのベッテルが確かなパフォーマンスを発揮しているところも我々は目にしている。第7戦カナダGPではフィニッシュラインまで素晴らしいレースを見せていた。最終的にはタイムペナルティを科され2位となってしまい見事なパフォーマンスが不要なミスにかき消されてしまったのは残念だったが……。

 ベッテルはフェラーリで5シーズン目を迎えているが、まだタイトルを獲得できていない、そのため極度のプレッシャーにさらされていると私は考えている。5年という期間は、かつてフェルナンド・アロンソとフェラーリの状況が悪化していった時と同じ長さだ。

 アロンソと同じように、ベッテルはタイトルを勝ち取るチャンスが2度あったが、両方のチャンスをふいにしている。アロンソの場合は滅多にないミスで高い代償を払い、フェラーリも十分な競争力のあるマシンを提供できていなかった。ベッテルの場合も、フェラーリに競争力がないだけではなく、メルセデスが無敵であるという点を除けば同じ状況だ。

 2015年以降のフェラーリはメルセデスほど強さを出せず、ベッテルは過度に自分を駆り立ててタイトルのために戦うチャンスを得ようとしなければならなかった。2017年に次々と技術上の問題が起きてタイトル争いから脱落するまで、ベッテルは善戦していたのだ。そして2018年と2019年もベッテルは力強い走りをするかに思えた……。

 今も私は、ベッテルがミスをする原因は渾身の力で走行しているからだと感じずにはいられない。ベッテルは、メルセデスに勝つためには取れる限りのポイントが必要だった。ベッテルはもっと楽なポジションに落ち着くこともできたかもしれないが、それでは不十分だった。真のチャンピオンにとって、2位になることは選択肢にはないのだ。


 2019年シーズンが訪れて、フェラーリには特別な雰囲気があった。「今年こそは、チャンピオンにならなければならない」。これは、私がバルセロナで耳にした言葉だ。何年もかけて、彼らはメルセデスにどんどん近づいていって、オフシーズンテストでは期待の持てる速さを見せていたのだ。だが、開幕戦オーストラリアの現実がフェラーリと、そして誰よりもベッテルを打ちのめした。

 今となっては、ベッテルは何に勝たなければならなかったのだろう?新たなチームメイトであるシャルル・ルクレールに打ち勝って選手権を3位で終えたところで、それが成功になり得るだろうか?モチベーションは何になるのか?そうして物事は間違った方向へ進み始めたのだと思う。

 いっぽうルクレールは、第7戦カナダGP以降の8戦連続でベッテルを予選で上回っており、ふたりのタイム差は大きく広がっていることが多かった。ベッテルはルクレールよりわずかに強力なシーズンスタートを切り、またフェラーリから完全なサポートも受けていた。しかしシーズンが進む間に、マシン性能をさらに引き出せるようになったルクレールが、ベルギーGPとイタリアGPで連勝を飾ったのだ。

 今ではフェラーリがチームの優先順位をベッテルからルクレールに替えようとしているように思える。だが、ベッテルが見捨てられることがないのは確実だ。フェラーリは過去数年にわたってベッテルに多くの借りがあるし、チームは彼を高く評価している。

 ベッテルはチームからエースドライバーとして完全に重用されている状況下で才能のすべてを引き出すことができるということを我々は知っている。レッドブルでタイトルを獲得した2010年〜2013年はチームから完全なサポートを得ていた。しかし、2014年にダニエル・リカルドがチーム内の争いに挑んできた時に苦戦。翌2015年からフェラーリへ移籍する決断を下している。

 フェラーリが2019年からルクレールと契約したことは、すでに何かが起こる兆候だった。チームは将来について準備しており、もしベッテルが移籍やF1引退を選択しても、エースドライバーを務めることができるルクレールがいるのだから。

 フェラーリがベッテルをサポートとして活用し、スパ・フランコルシャンでのルクレールの初勝利の助けにしようとした事実と、モンツァで勝利したのがルクレールであるということは、重要な兆しだ。

 今シーズン末までに何が起ころうとも、もう関係ないだろう。フェラーリの運命はモンツァで決まったのだ。2020年のフェラーリは、エースドライバーとセカンドドライバーという構成でシーズンをスタートさせることはないだろう。競争に制約はない。最速のドライバーが勝つことを祈るのみだ。

 もしベッテルが、ふたたびフェラーリの最優先事項となれるのなら、彼にはチャンピオンという目標を達成するチャンスがあるかもしれない。しかし、2019年と2020年にルクレールがベッテルを下した場合、2021年にベッテルがF1でレースをしているところを想像するのは難しい。

 だが4度のF1世界チャンピオンであるベッテルは自身の力を証明し、不振から復活することができるだろう。2020年にフェラーリがタイトルを争えるマシンを持っていたら、何が起こるだろうか?


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