2年ぶりのアメリカGPで、アルファタウリ・ホンダの2台は揃ってトップ10グリッドを獲得。しかし9番手スタートのピエール・ガスリーは、リヤサスペンショントラブルで早々にリタイアを喫してしまう。

 そんなピンチの状況で、角田裕毅はよく踏ん張った。10番グリッドからスタートでふたつ順位を上げ、その後はバルテリ・ボッタス(メルセデス)、キミ・ライコネン(アルファロメオ)に猛追される展開が続いたが、ミスのない走りで9位入賞を果たした。そんな角田を本橋正充チーフエンジニアは、「非常に落ち着いて、状況を把握しながら走っていた」「戦略を最大限活かすドライビングをした」と絶賛した。

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──初日は2台とも、かなり苦しんだ印象です。

本橋正充チーフエンジニア(以下、本橋CE):そうですね。路面のバンピーさもありますが、何よりコース自体非常に難しい。セットアップが思うように決まらなかったですね。初日を終えて、かなり大きく変えていかないといけないなと覚悟しました。土曜日には、まだ十分ではなかったとはいえ、なんとか戦えるところまでは持って来れましたね。

──バンピーな路面は、パワーユニットのセッティングにも大きな影響を与えたのでしょうか?

本橋CE:はい。跳ねた時のオーバーレブとかは、気にしていました。ただ思ったほどは、問題が発生したりとかはなかったですね。大きくセッティングを変えることは、なしで行けました。

──路面のバンピーさは2年前よりひどい感じでしたが、パワーユニット側はなんとかなったということですか。

本橋CE:そうですね。年々ひどくなっている感じですが(苦笑)、特別な対策はせずに済みました。一方で車体側は、最適なバランスを取るのに苦労していました。いろんなコーナーがあって本当に面白いサーキットなのですが、攻略は難しい。コースレイアウトが難しいのに加えて、路面のバンピーさもひどいですから。

──気温、路面温度も例年より高くて、リヤタイヤのオーバーヒートも非常に早かったですね。

本橋CE:ええ。一発だけのアタックでも、セクター3ではかなり厳しくなっていた。しかもセクター3がああいうレイアウトですから、さらにタイムを失う。初日の状況から、その辺りをどう対策するかという方向で、セットアップを変えて行きました。レースでのでグラデーションも、予想より早かった。なのでピットインタイミングも、第1スティントは早くせざるを得なかった。暑さとレイアウトは、かなり響きましたね。

──角田選手はFP3の時点では、とてもQ2に行けそうにないと言っていた。それでもQ1では11番手タイムを出し、Q2もライバルたちのグリッド降格ペナルティに助けられたとはいえ、トップ10内のタイムを出した。

本橋CE:そこは十分評価できると思います。トルコGPもそうでしたが、しっかりタイムを出す走りができてました。車体セットアップをFP3で大きく変えたことも功を奏しましたが、大きくバランスが変わったクルマをいきなりプッシュするのは決して簡単なことではない。それでも角田くんは、パフォーマンスを最大限発揮引き出す走りをしてましたね。

──角田選手に話を聴いた際に、初日から慎重に周回を重ねて習熟していくやり方では、自分本来の速さが発揮できず、ロシア、トルコあたりからまたアプローチを変えたようなことを言っていました。そんな変化は、現場でも感じましたか。

本橋CE:はい。最初の頃は、もちろん緊張もありましたが、同時に楽しんで乗っている感も十分伝わっていました。それに似た感じが、最近また戻ってきた気はします。乗り方にしても、若干コンサバだったり、迷いがあったのが、スパッと決めるというか、自分自身を持って走っている印象です。今日のレース中にしても、エンジニアとのやりとりのなかで、自分の印象をしっかりフィードバックしていた。セッティング変更の指示に対しても、「そこはこうじゃないか」と返したり。その意味でも、自分の意思が感じられる気はしました。あくまで僕の個人的な印象ですが。

──それはロシアあたりから?

本橋CE:いえ、トルコ、そして特にここですね。

──その種の変化について、具体的に話をしたわけではない?

本橋CE:それはしてないです。データや無線のやり取りで、そう感じました。

──レースではすぐにバルテリ・ボッタス(メルセデス)が迫ってきて、状況としてはトルコでのルイス・ハミルトン(メルセデス)とのバトルと似ていたわけですが、そこでタイヤを使いすぎることもなかったのですか?

本橋CE:ええ。その時に限らず、第2スティント、それから特に第3スティントですね。青旗が振られるなか、同時に直近のライバルとも戦っていた。そこでしっかり状況をコントロールできていましたね。非常に落ち着いて、状況を把握しながら走っていたと思います。

 スタートも慎重にいくだけではなく、アグレッシブに入って行って順位をふたつ上げていた。アグレッシブさと状況の見極めの、両方ができていましたね。周囲がしっかり見えていると感じました。

──スタートの蹴り出しがよかっただけでなく、そのあとの位置取りも素晴らしかった。

本橋CE:そう思います。うまくやってくれたと同時に、危なっかしさは感じなかった。1コーナーへの飛び込みで、しっかり状況が見えていたのだと思います。

──Q2でミディアムタイヤが使えなかったことでレースでの影響が危惧されましたが、そのハンディキャップはまったく感じさせなかったですね。

本橋CE:はい。全然感じなかったです。自分に与えられた条件を、落ち着いてこなしていた。戦略を最大限活かすドライビングをしていました。ソフトのグリップのよさというアドバンテージを、スタートでは十分活かしてましたね。