WRC世界ラリー選手権第6戦『ラリー・イタリア・サルディニア』は6月4日、競技最終日デイ4のSS16〜19が行われ、前日終盤に総合首位に立ったヒョンデ・シェル・モビスWRTのティエリー・ヌービル/マルティン・ウィダグ組(ヒョンデi20 Nラリー1)が優勝。昨季最終戦ラリージャパン以来の勝利を飾った。

 地中海に浮かぶ“リゾートアイランド”サルディニア島を舞台に、6月1日(木)から4日間にわたって開催された2023年シーズン第6戦ラリー・イタリア・サルディニア。道幅の狭いステージを比較的速いスピード域で駆け抜ける難関グラベル(未舗装路)ラリーとして知られる同イベントは、前戦ポルトガルから7戦にわたって続く“グラベルラリー連戦”の第2ラウンドだ。

 この週末、ラリーの拠点が置かれた島北東部のオルビア周辺は不安定な天候が続き、一日を通してすっきりと晴れわたることは終ぞなく、強弱の差こそあれど連日のように雨絡みのラリーとなった。その影響がもっとも顕著に表れたのは3日(土)のデイ3だ。

 競技初日、2日目ともに総合トップで終えたエサペッカ・ラッピ(ヒョンデi20 Nラリー1)と、トヨタGRヤリス・ラリー1を駆るセバスチャン・オジエがコンマ1秒差で迎えた競技3日目、午前中は晴れ間も見えたが午後には雨模様に。一部のステージは非常に激しい降雨に見舞われた。両名が激しいトップ争いを繰り広げるなか、この雨を味方につけたヌービルはSS13で優勝争いに最接近すると、続くSS14ではオジエがコースアウトしデイリタイアとなったこともあり3番手から一気に総合首位に浮上した。

 雨の影響はウォータースプラッシュにも表れた。コース上にできた水たまりの水かさが通常より増したため、多くのマシンが水の餌食となってしまう。日本人ラリードライバーの勝田貴元(トヨタGRヤリス・ラリー1)もそのひとりで、デイ3オープニングのSS8のスプラッシュゾーンでマシンフロントを大きく壊し、その後デイリタイアに追い込まれてしまう。

 また、同日はオット・タナク駆るフォード・プーマ・ラリー1にスプラッシュ通過後に電気系トラブルが発生し、こちらもデイリタイア。4番手を争っていたエルフィン・エバンス(トヨタGRヤリス・ラリー1)もマシンにダメージを負って遅れを取ってしまった。さらにコースアウトでのデイリタイアとなる直前には、オジエのマシンも外装にダメージを受けていた。

■雨予報の最終日、勝田がSS18でステージウイン

 波乱のデイ3から一夜明けた4日(日)のデイ4、最終日のオープングSS16は現地7時05分にスタート。ここでは再出走を果たしたタナクが一番時計を記録しヌービル、エバンスの2名が同タイムで続いた。これにより首位ヌービルと2番手ラッピのタイム差は前日終了時の36.4秒から41.4秒に拡がる。

 ヌービルの快走はその後も続きSS17で4番手、勝田が今大会2度目のステージベストを記録したSS18では3番手タイムを記録。SS19の最終ステージを前にその差を42.5秒とした。

 午後に入って一時激しい雨が降ったために泥道と化した“パワーステージ”では、大量の貯金を活かし余裕を持った走りで7番手タイムでフィニッシュしたヌービル。サルディニアで過去2勝を挙げているベルギー人が待望の2023年シーズン初優勝を達成した。なお、この勝利はヒョンデチームにとっても今季初めての勝利となり、それをヌービルとラッピによるワン・ツー・フィニッシュで飾っている。

 表彰台の最後のスペースは前後との差が大きく開き“ひとり旅”状態にあったカッレ・ロバンペラ(トヨタGRヤリス・ラリー1)が獲得。前戦ポルトガルで“フルポイントマーク”でのシーズン初優勝を飾った男は、ここでもパワーステージ最速のボーナス5ポイントを獲得しつつ3位表彰台を得た。

 総合4位はトヨタのエバンスだ。彼はパワーステージの右コーナーでワイドに膨らみリヤウイングを損傷するダメージを負うも、無事にフィニッシュまでクルマを運びチームにポイントをもたらした。一方、5番手で最終日に臨んだダニ・ソルド(ヒョンデi20 Nラリー1)はSS18開始前にメカニカルトラブルにより無念のリタイアとなった。

■フルモーが勝利目前でクラッシュ、リタイア

 この後方にはWRC2クラスの上位勢が並ぶこととなったが、最終パワーステージでドラマがあった。同クラスをリードし優勝目前にあったアドリアン・フルモー(フォード・フィエスタ・ラリー2)が、左のロングコーナーでアウト側にはらんでしまいコースオフ。右リヤの足回りを中心にダメージを受け、最後の最後でリタイアを余儀なくされた。
 
 この結果、先にラリーをフィニッシュしクラス2位以上を確定させていたアンドレアス・ミケルセン(シュコダ・ファビアRSラリー2)が順位を上げてクラスウイナーに。クラス2位はテーム・スニネン(ヒョンデi20 Nラリー2)、同3位にはシュコダ・ファビアRSラリー2を駆るカエタン・カエタノビッチが入っている。

 前日のデイリタイアから復帰した勝田、オジエ、タナクはいずれも完走を果たし、3名全員がパワーステージのボーナスポイントを獲得した。ボーナスポイントの内訳はタナク4ポイント、勝田3ポイント、オジエ2ポイントだ。