テオ・プルシェールの全日本スーパーフォーミュラ選手権(SF)離脱に伴い、急きょITOCHU ENEX TEAM IMPULの19号車から2024スーパーフォーミュラ第2戦に参戦することとなったベン・バーニコート。オファーを受けてから数日で準備を済ませて来日し、チームと合流した。

 FIA F2チャンピオンであるプルシェールは、ITOCHU ENEX TEAM IMPULから“SFルーキー”として今シーズンの全9戦に出場することとなっていた。しかし、第2戦オートポリスの開幕1週間前になって、彼がNTTインディカー・シリーズに参戦するアロウ・マクラーレンと正式契約を結ぶと同時にSFからの離脱が決定。プルシェールの代役として、今回はIMSAウェザーテック・スポーツカー選手権で活躍するイギリス人のベン・バーニコートが参戦することとなった。

■「スタンディングスタートは4年くらいやっていない」

 北米スポーツカーシリーズではレクサスRC F GT3のステアリングを握るバーニコート。彼は昨年末にVANTELIN TEAM TOM’SからSFルーキーテストに参加し、12月8日午後のセッションでは1分37秒482でトップタイムを出した。

「本当に興奮している。まずはレースをする機会をくれたチームインパルとTOYOTA GAZOO Racing(TGR)に深く感謝している。スーパーフォーミュラはF1以外では一番速いカテゴリーでシリーズのレベルも非常に高い。そこに今回参戦できるというのは本当に嬉しい」とバーニコート。

 5月17日、走行前日にサーキットに着くとエンジニアとの打ち合わせやシート合わせ、プロフィール写真の撮影など忙しくしていたが、日本に来るまでの数日間もかなりバタバタしていたという。

「この話を聞いたのは先週の日曜日(5月12日)。ちょうどIMSAのレースがラグナ・セカであって、そのレース後にTGRの人からスーパーフォーミュラの話を聞いた。すぐに『ぜひとも!』と回答したよ」と迷いなくオファーを受けたことを明かしたバーニコート。

「シングルシーター用のヘルメットがイギリスにあったから、それを取りに戻って、日本に着いた。すごくバタバタした1週間だった」と彼は続けた。

 オートポリスのコースも彼にとっては初体験となるが、それについては「福岡についてからシミュレーターができる場所を探して、練習することができた。そこではコースのレイアウトを確認できた程度で、どういうふうにコーナーが現れてくるかはある程度覚えることができた。オートポリスは鈴鹿サーキットと似ていて高速コーナーから低速コーナーまであって、アップダウンもある。鈴鹿での経験が活きると思う」と、限られた時間で準備を進めたという。

 とはいえ、簡単なレースウイークにはならないだろうと予想しているバーニコート。「僕にとってはすごくハードはレースウイークになる。コース以外にも、覚えないといけないことがたくさんあって、ピットストップの手順やオーバーテイクシステムの使い方、あとはスタンディングスタートも4年くらいやっていないから、僕にとっては難しい要素が多いかなと思っている。万全な準備ができているとは言い切れないけど、この週末はベストを尽くしたい」と抱負を語った。

■眠れぬ日々を過ごした星野一樹監督

 また、今回のドライバー交代劇についてITOCHU ENEX TEAM IMPULの星野一樹監督は「話せることはあまりないですね……。プルシェールサイドが離脱を決めて出ていったという事実だけですね」と、かなり複雑な表情をして、重い口を開いてくれた。

 いずれにしても、ドライバーがバーニコートに決まるまでの数時間は怒涛の日々だったとのこと。日本と時差があるアメリカやヨーロッパと昼夜を問わず連絡を取り合っていたようで「(バーニコートの発表ができてから)昨日と一昨日くらいはゆっくりと寝られました」と安堵した表情をみせていた。

 気になるのは、第3戦以降のドライバー起用について。バーニコートはGTDプロクラスのディフェンディングチャンピオンとしてIMSAに参戦中で、スーパーフォーミュラと何戦か日程重複してしまう。

 当のバーニコートも「今はIMSAを優先したいと思っている。今週のレースは全力で戦うけど、今シーズンに関してはIMSAに集中したい。レクサスUSAとの契約もあるし、IMSAで今年もチャンピオンを獲りたいと思っている。トヨタから別の話が来ない限りは、この方針で行く予定だ」と、ある意味で代役という形で今回のみの参戦に集中している様子だった。

 星野監督も「今決まっているのは今回の代打がバーニコートというところまでで(第3戦以降は)完全に白紙の状態です」とのこと。第3戦以降のドライバーについては、改めて発表を待つことになりそうだ。

 開幕戦では思わぬ苦戦を強いられたITOCHU ENEX TEAM IMPUL。2カ月のインターバルで可能な限りの対策は施してきたという。

「自分たちは前回の鈴鹿でハマってしまって、それを『なぜだ?』というところ(の原因究明)にずっと費やしてきました」と説明した星野監督。

「鈴鹿の答え合わせをし終わってからオートポリスに対してどうなるかというところまで……ただデータだけを見直すのではなくて、スタッフのみんなが頑張っていろいろなことをしてきました。本当は同じ体制で答え合わせをしたかったですけど、(プルシェールが)離脱してしまったので、違うドライバーで答え合わせをすることになります」

「でも、彼(バーニコート)がルーキーテストでみせた期待値はものすごいものがあったし、トヨタさんに推薦してもらった部分もあるので、本当に楽しみです」と、星野監督はバーニコートと国本雄資の活躍に期待を寄せていた。