角田裕毅(RB)がF1第7戦エミリア・ロマーニャGP初日を3番手で終えた。

 筆者の記憶では、角田が初日を3番手以上のポジションで終えたのは、2021年にF1にデビューして以来、初めてのことだと思う。セッション後の取材で角田にそのことを確認すると、本人も「(これまで)なかったと思います」と語っていた。

 なぜ今回、角田が初日に3番手に立つことができたのか。理由はふたつ考えられる。ひとつは、RBのマシンの戦闘力が上がったことだ。

 フリー走行を終えた角田は、次のようにマシンのフィーリングを語ってくれた。

「クルマはすごくコンスタントで、フリー走行1回目の走り始めからペースがよかったので、焦ることなく、時間を有意義に使って、徐々にペースを上げることができました。それがよかったのかなと思います」

 走り始めからマシンの調子がいいというのは、ファクトリーでシミュレーションしたイニシャルのセットアップが正しかったことを意味している。イニシャルのセットアップというのは、いつも必ず正しく機能するわけではなく、多かれ少なかれサーキットで微調整が必要となる。それが多いとピットインを繰り返すこととなり、走行時間が減って、結果的にマシンに自信が持てないため、プッシュできずにタイムが出ない。2戦前の中国GPでの角田が、まさにこれだったと考えられる。

 今回は微調整がほとんどなかったため、走行時間が多く、フリー走行1回目から走り込みができたことで、フリー走行2回目のソフトタイヤでのアタックで100%に近い形でプッシュできたようだ。

 ちなみに角田の自己ベストタイムは1発のアタックではなく、連続走行しながらの2回目のアタックで記録したものだった。

 角田が3番手になったふたつ目の理由は、ライバル勢は初日にまだ実力を出しきれていなかったことだ。

 今回、多くのチームがエミリア・ロマーニャGPにアップデートを投入してきた。新しい空力パーツを装着しているので、データ取りが必要となるだけでなく、セットアップをいつもと変えなければならない部分も出てくるため、そのスイートスポットを見つけるまでに時間を要する。

 これに対し、RBは前戦マイアミGPでアップデートを投入していたため、今回はデータ取りの必要がないだけでなく、マイアミGPの経験からよりアップデートを効果的に機能させられたと考えられる。そのことは角田の次のようなコメントからもうかがえる。

「いまのところはマイアミGP以上に安定して走ることができていると思います。タイムを出しに行くときに、ほぼ全コーナーでいい動きをしてくれていたので、いい感じだと思います」

 ただし、まだ安心はできない。アップデートを投入したグランプリでは、金曜日の夜に初日のフリー走行の結果をもとにセットアップを見直して、土曜日になって一気にパフォーマンスを上げてくるチームが少なくないからだ。

 そのことは、角田も認識している。

「3番手は難しいと思いますが、確実にトップ10には入りたい。もちろん、タイムが接近しているので、何が起きるかわからないので、とにかくクルマからパフォーマンスを最大限引き出すことに集中したい」

 したがって、ライバル勢が挽回してくる可能性は十分考えられる。ただし、角田がこのエミリア・ロマーニャGPで初日に力強い走りをしたことは、紛れも無い事実だ。