5月18日、イタリアのミサノ・ワールド・サーキットで、ファナテック・GTワールドチャレンジ・ヨーロッパ(GTWCヨーロッパ)第3戦ミサノが開催された。2024年シーズン2度目のスプリント・カップイベントとなった週末は土曜日に計2レースが行われ、チームWRTの46号車BMW M4 GT3(マキシム・マルタン/バレンティーノ・ロッシ)がレース1を制すと、日没後にスタートが切られたレース2では同じくWRTの32号車BMW(シャルル・ウィーツ/ドリス・ファントール)がポール・トゥ・ウインを飾った。

“ドクター”こと元MotoGPチャンピオンのロッシがGTWCヨーロッパ初優勝を果たしたのが、ここミサノだった。あれから約10カ月、母国イタリアでふたたび表彰台の頂点に立つチャンスがやってきた。前日の予選で僚友のマルタンがレース1のポールポジションを獲得したのだ。

 決勝ではそのマルタンが前半のスティントを担当。元DTMドイツ・ツーリングカー選手権のドライバーはスタートから危なげない走りでトップの座を守り、32号車BMWからプレッシャーを受ける2番手54号車ポルシェ911 GT3 R(ダイナミックGT)を3.3秒引き離し、レース中盤に義務付けられたピット作業でロッシにステアリングを託した。

 後半スティント担当のロッシに与えられたミッションは首位を守り切ること。その相手は、予選6番手から007号車アストンマーティン・バンテージAMR GT3エボ(コムトゥユー・レーシング)や14号車フェラーリ296 GT3(エミル・フレイ・レーシング)らを相次いでかわした後、迅速なピット作業でさらに順位をひとつ上げてきた姉妹車32号車を駆るウィーツだ。スプリント・カップ開幕戦ですでに今季1勝目を飾っている3冠王者はロッシとの差を2秒弱に保ってチャンスの到来を待つ。

 レース最終盤、首位を走るロッシが周回遅れに引っ掛かり2台はテール・トゥ・ノーズの状態に。イタリアのファンが固唾をのんで戦況を見守るなか、最後はブルーと蛍光イエローのBMWが赤いリバリーのM4 GT3より0.275秒早くフィニシュラインを超え、見事ポール・トゥ・ウインを達成。ロッシ/マルタン組がミサノで2勝目を飾るとともに、チームWRTがワン・ツー・フィニッシュを決めた。3位には予選11番手からポジションを8つ上げることに成功した69号車フェラーリ296 GT3(エミル・フレイ・レーシング)が入り、フロントロウスタートだった僚友14号車が4位となった。

■ロッシ、ホームで連続表彰台「素晴らしい週末になった!」 

 現地21時から開始されたレース2は、ポールから完璧なスタートを決めた後に入ったセーフティカーによる仕切り直しを挟みつつ、リスタート後も後続につけ入る隙を与えなかったファントール/ウィーツ組32号車BMWが完勝。フロントロウの2番手から同じポジションでフィニッシュした48号車メルセデスAMG GT3エボ(ウインワード・レーシング・チーム・マンフィルター)のマーロ・エンゲル/ルーカス・アウアー組から選手権リーダーの座を奪っている。

 3位はレース1を制した46号車BMWだ。ワン・スリーの一翼を担ったWRTの1台は、5番手からスタートしたロッシが序盤に111号車アウディR8 LMS GT3エボII(CSAレーシング)をターン1でかわした後、ピットインのタイミングで69号車フェラーリにも先行する。ピット作業後、レース後半はマルタンが48号車に迫ったが0.589秒およばなかった。

「チームの全員にとって、ここミサノは素晴らしい週末になった」と語るのは、2戦続けて母国レースの表彰台に立ったロッシ。

「とても楽しかったよ! マキシム(・マルタン)は最初のレースでクルマをポールポジションに置くという素晴らしい仕事をしてくれた。32号車と戦うのはとても難しいと思っていたけど、(昨年の初優勝から)1年後にまた勝ててハッピーだ!」

「レース1の最後はシャルル(・ウィーツ)と戦っていたので困難なドライブだった。けれど僕は仕事をやり遂げ、ミスもしなかった。またレース2でも表彰台を獲得することができた。ライバルをオーバーテイクするのはさらに難しかったけど、こうしてダブル表彰台を獲得し“ホーム”で素晴らしい週末を過ごすことができた!」

 チームWRT勢が、一週間前にスパ・フランコルシャンで行われたWEC世界耐久選手権第3戦での無念を晴らすかのような爆発力を見せたミサノ・ラウンドが終了した後、シリーズは1年のハイライトとなる第4戦スパ24時間レースを迎えるため、ベルギーのオールドトラックへと向かう。次戦の開催は6月26〜30日だが、これに先立ちスパでは5月21〜22日に“プロローグ”テストが行われる予定だ。