全日本スーパーフォーミュラ選手権は、5月19日に大分県のオートポリスで2024年シーズン第2戦が行われた。季節外れの暑さなか実施されたレースでは、好スタートを決めてトップに立った牧野任祐(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)がシリーズ参戦6年目にして悲願の初優勝を飾った。

 決勝レース後、全ドライバーが参加して行われる取材セッション“ミックスゾーン”から、ドライバーたちが決勝について語った内容を2回に分けてお届けする(第1回はこちら)。

■大湯都史樹(VERTEX PARTNERS CERUMO・INGING) 決勝15位

 11番手スタートから、1周目を終えた段階で9番手に浮上した大湯は、「持ち込みからセオリーとは違うようなセットアップになっていた」というが、決勝に向けてはそれを「一般的なセットアップにして走ったら、まぁ『中の下』くらいでは走れました」とレースを振り返る。

「今回のレースウイークの中では、いい走りができていた」というレース前半、ずっとクリーンエアの中を走行できたこともあって大湯はもっともピットインを引っ張ることとなったが、ピットワークでミスが生じてタイムロス、後方に沈むことになった。

「その後は彼(とベン・バーニコートを指す)に塞がれてフラストレーションはありましたけど、順位が順位なので……」と大湯。「最後はあのまま行っていたら当たっていたので、普通に外に避けました。あんなところでぶつかっていてもしょうがないので」と終盤のナカヤマ精密(1)コーナーでのサイド・バイ・サイドを振り返った。

 決勝レース前半の走りはポジティブな要素はあるものの、「課題だと思っている部分をどう直せばよいのかというところが正直見えていない」と悩みも大きい様子。「38号車(阪口晴南)も、レースペースはそこまで良いわけではなさそうなので、そこはチームとしても課題なのかなと思います」。

■国本雄資(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL) 決勝19位

 今季、インパル陣営へと移籍した国本は、開幕戦では接触により1周でリタイア。リベンジを期したオートポリス戦だったが苦戦を強いられることとなり、決勝スタートは14番手からとなる。

「引っ張る作戦で行って、後半抜かなきゃ行けなかったのですが、そこがうまくいかなかった。ペースもあまり良くなく、ちょっとパフォーマンスが足りませんでしたね」

 最終盤には、前方の笹原右京(VANTELIN TEAM TOM’S)とともに、松下信治(TGM Grand Prix)を攻略しようとしていたが、第2ヘアピンで笹原と接触してしまう。

「(2台前方にいた松下の55号車が)フラットスポットができていたのかペースが悪く、ブレーキングで毎回ロックしていました」と状況を振り返る国本。

「3コーナーですごく詰まって、前の2台は100Rで横並びになっていました。そこでOT(オーバーテイクシステム)使って2台の横に左側から並ぼうと思ったのですが、ヘアピン手前の緩い右(コーナー)で幅寄せされてしまってアクセルを戻したので、並び切れないままブレーキングに入ったら中途半端な形になってしまいました。(55号車の)ブレーキングも思ったよりも早く、自分はイン側だったので(コーナリング半径が)きつく曲がらなければいけない状況で、僕のフロントウイングと相手(笹原)の左リヤがヒットしてしまいました」

 フロントウイングを壊した国本はピットへとマシンを戻し、チェッカーを受けずにレースを終えた。

 今回は予選、決勝ともにパフォーマンスが足りなかったといい、「まだまだ、ちょっと課題は大きい」と、2016年王者の苦悩は続いているようだ。

■笹原右京(VANTELIN TEAM TOM’S) 決勝12位

 12番グリッドからスタートした笹原。スタートでは抜群のダッシュを見せ、ナカヤマ精密コーナーまでに4台をパスしてポジション圏内進出かと思われたが、その後は行き場を失う形となり、1周目を13番手で終了。そこからレース中盤まで引っ張る作戦をとるも、ピットストップで大きく順位を上げることはできず。

 終盤には松下や国本とポジションを争った際に国本と接触するシーンもあったが、最後までしっかりと走り切り12位でチェッカーを受けた。

 少し後手を踏むような展開となったように見えたが「自分の中では、やっと『霧が晴れた』という感じがしたレースでした」と笹原。内容面では今までで一番という収穫があったという。

「今まではレース中に何をどうやっても、ただただペースが落ちていって『とにかくしんどい』だけでした。今日に関しては確かに辛い部分もありましたけど、自分の走りは『こういうふうだったのかな』とか『クルマをもっとこういうふうにした方が自分に合うのかな』とか……朝のフリー走行では遅くて『どうしよう……』とはなっていたのですけど、レースを終えて『こういう理由で遅かったのか!』というヒントを拾うことができました。今までTOM’SでSFに乗っていたなかでは、一番のヒントが得られました」

 とはいえポイントを獲得できなかった悔しさはあるようで「結果は残念でしたけど、それ以上にすごく収穫があったので、少し複雑な気持ちではあります」と笹原。次戦のSUGOで、どこまで上位に来られるのか、目が離せない。

■太田格之進(DOCOMO TEAM DANDELION RACING) 決勝5位

「スタートは良くて、坪井(翔)くんを抜いて、野尻(智紀)さんにも仕掛けたのですが、そこは抜ききれなくて。ペースは良かったと思う」と7番グリッドスタートだった太田。レギュレーションで許される最低周回数、いわゆる“ミニマム”でのピットインは「ある程度、決めていた」という。

 だが、ここで2番手を走行する山本尚貴(PONOS NAKAJIMA RACING)も同様の戦略に。太田はピットアウト以降、山本のテールを見つめ続けることになった。

「あそこで尚貴さんに詰まっていなかったら、ちょっと展開は変わったと思いますけど……。アウトラップも速かったし、すぐに追いついたのですが、(追い抜くには)決定打に欠けましたね」

 レース終盤には、タイヤがフレッシュな坪井翔(VANTELIN TEAM TOM’S)や岩佐歩夢(TEAM MUGEN)に迫られると同時に、山本とのポジション争いも続くというタフな状況となった。

「僕は結構最終コーナーが厳しかったので、自力で尚貴さんを抜くのは難しかった。OTも最後はちょっと少なかったので、厳しいかなと。それだったら無理に抵抗するのではなく、(タイヤがフレッシュな車両には)前に行ってもらって、『前で何かあればいいな』くらいの感じでした」

 しかし前方では「何か」は起きず、太田は5位でチェッカーを受けた。

「練習走行が全然ダメだったのですが、チームのおかげでどんどん良くなっていって、Q1をトップで通過できたし、決勝も5位で終われたことはポジティブ。このコースは、僕としては一年で一番苦しいだろうなと思っていたので」と第2戦での収穫を振り返った太田。

 なお、チームメイトである牧野任祐の初優勝は「嬉しい」と祝福している太田だが、少々引っ掛かっていることもある様子。

「(フィニッシュ後に)無線で『おめでとう!』って言ったのに、『SFgo』見たら切れてるんですよ」

 のちに『SFgo』アプリで確認したところ、チェッカー直後に「任祐勝った? 勝った?」とチームメイトの勝利をまず第一に気にかけ、その後牧野の車両に真横につけて祝福を送る太田の姿が。それに続き、「おめでとうございます! チームとして本当に最高だと思う。次も勝ちましょう。次は僕が勝ちます」という無線を聞くことができる。