直前に上がった雨の不安定な天候に翻弄されつつ、各チームとも臨機応変の対応力と柔軟性が求められた2024年スーパーGT第3戦、鈴鹿サーキットでのGT500クラス“3時間”の決勝レースは、今季初ポールポジションからスタートを切った37号車Deloitte TOM’S GR Supraの笹原右京/ジュリアーノ・アレジ組が両者GT500クラス初となる悲願の初優勝を達成した。

 最終ピット作業でのまさかのミスに泣いた14号車ENEOS X PRIME GR Supraが粘りの追い上げで2位に入り、トヨタ陣営の2024年型GRスープラがワン・ツー・フィニッシュを飾っている。

■雨は降るのか降らないのか、読めない天気がチームを悩ませる

 初夏の陽気に恵まれた前日土曜から一転、台風1号のエネルギーが残り活発化した前線の活動により降雨の可能性が高まっていた日曜は、朝の小雨に続いて正午のウォームアップ走行前には本格的に路面を濡らす状況へと変わった。

 これにより、各チームともウエットタイヤのスクラブ(皮剥き/慣らし)に精を出し準備を整えるも、20分のセッションを終えグリッドへの試走を迎える頃には日差しが戻るなど、判断を迷わせる時間が続く。

 例年、この鈴鹿で猛威を奮ってきたニッサン/NMC陣営は、前戦富士でのワン・ツー・フィニッシュによるサクセスウエイト(SW)搭載分も響き、予選合算タイムで3号車Niterra MOTUL Z(SW:54kg/1ランクダウン)の6番手を先頭に、23号車MOTUL AUTECH Z(SW:44kg)、12号車MARELLI IMPUL Z(SW:10kg)、そして24号車リアライズコーポレーション ADVAN Zと全4台が中段グリッドに陣取る。

 その前方では、今季初ポールポジションを手にした37号車Deloitte TOM’S GR Supra(SW:8kg)を先頭に、16号車ARTA MUGEN CIVIC TYPE R-GT(SW:4kg)、14号車ENEOS X PRIME GR Supra(SW:6kg)、さらに16号車ARTA(SW:6kg)と、やはりトヨタ、ホンダの両陣営でも軽量なチームが入り乱れてシーズン前半戦での大量得点を狙う。

 13時30分のパレード&フォーメーションラップ開始を前に路面のドライアップも進み、気温は24度、路面温度も31度とほぼ前日同様の条件を取り戻す。各車とも湿度80%越えの蒸したコース上でタイヤへの熱入れを進め、静かなレース立ち上がりとなったが、グリップ発動後の4周目には3番手発進の14号車ENEOS X PRIM福住仁嶺が前方の16号車ARTAに急接近。最終コーナーからテール・トゥ・ノーズへ持ち込み、続く5周目には古巣のシビックを仕留めて2番手へ浮上。速くもトヨタGRのワン・ツー体制を築く。

 続く6周目には12号車MARELLIベルトラン・バゲットに、7周目のターン1では24号車リアライズ松田次生と立て続けに、23号車MOTUL AUTECHのロニー・クインタレッリをオーバーテイク。松田にとっては昨季まで長年連れ添った元チームメイトの前に出る。

 レース20周目を前にふたたび上空にはどんよりとした雲が立ち込めるなか、ここから3番手争いが激化。背後の8号車ARTA松下信治がターン1のアウトから16号車ARTA大津弘樹に仕掛けるも、続くターン2で姿勢を乱した2台はあわやクラッシュの接触劇を繰り広げる。中継映像では、両チームを兼任する鈴木亜久里監督が苦笑いするシーンも。このバトルの余波もあり、後続の38号車KeePer大湯都史樹以下11番手の王者au TOM’S GR Supraまで9台が1パックの様相となる。

 ここで5番手を守り続けてきた38号車KeeperのQ1/Q2→スタートタイヤが力尽きたか、背後の3号車Niterra、12号車MARELLIの2台に一気に先行を許すと、続く23周目に先陣を切って最初の義務ピット作業へ。ここではドライバー交代をせず、大湯がダブルスティントでコース復帰して行く。さらに松下に突き上げられていた16号車の大津も25周目にピットへ向かい、ここで佐藤蓮にスイッチして作業静止時間44秒3で送り出す。

■Zが止まりきれず追突。GRスープラのリヤが大破

 スタートから1時間、レース3分の1経過を前に空模様も見つつの判断ながら、30周目突入で36号車au TOM’S GR Supraが動き、坪井翔のダブルを選択したTOM’Sが同時ピットで名取鉄平にスイッチした24号車リアライズに先行。続く31周目で1時間が経過すると、ここで上位勢も続々とピットインを決断する。

 ひと足早く33周目に大嶋和也に交代していた14号車ENEOS X PRIMに対し、続く34周目に首位の37号車Deloitteも反応。ここでも笹原右京のダブルスティントとしたTOM’Sがひとまず14号車のアンダーカットを阻止する。

 背後の3番手では16号車ARTAがポジションを取り戻し、対象的に38号車KeePerは12号車MARELLIばかりか36号車auにも先行を許すと、40周目には24号車リアライズ名取にもオーバーテイクされ、ペースの上げられない厳しい戦いを強いられる。

 するとその直後、41周目のシケイン進入で8号車ARTAとのブレーキング勝負に挑んだ23号車MOTUL AUTECHの千代勝正が、33周目にクインタレッリから引き継いでいたマシンを止め切れず38号車に追突。これでKeePer CERUMO GR Supraのリヤカウルが大破して散乱し、ここでFCY(フルコース・イエロー)が発動する。

 ピットクローズの前段階で38号車はマシン修復のためエントリーにマシンを向け、続く43周目の再開以降、折り返し点となる1時間半を目前としたところで、今度は8号車ARTAの野尻智紀がスローダウン。ここで2戦連続のトラブルに見舞われ失意のなかマシンをガレージへと戻すことに。

 46周目には17号車Astemo CIVIC TYPE R-GTのセカンドスティント担当、太田格之進にオーバーテイクを許した23号車MOTULは、50周経過でドライブスルーペナルティを課され、直後にはGT300のトラブルで2度目のFCYが介入する。

 中間スティントを通じて秒差圏内のバトルを展開してきた首位攻防は、このカウントダウンで14号車ENEOSの大嶋がブレーキングでロックを喫する場面もありつつ、そのままレースは残り1時間の終盤戦へ。

■オーバーカットで前に出たENEOS X PRIME GR Supraだったが……

 先に動いたのはセオリーとは異なり首位の37号車で、61周目に38秒ジャストの作業静止時間で笹原からジュリアーノ・アレジへ。対してここから2周、トラック上でスパートを見せた14号車ENEOSは大嶋がマージンを稼ぎ出すことに成功。63周目に38.6秒の静止時間で逆転し、ふたたび福住にラストスティントを託す。

 しかしこの際、同じ周回でピットレーンへ飛び込んできた100号車STANLEY CIVIC TYPE R-GTがファストレーンにいる状況でピットを離れた14号車は、まさかのアンセーフリリースを受けることになり、70周を前に無念のドライブスルー・ペナルティを消化することに。66周目から2周連続の1分50秒切りでファステストラップを更新した12号車MARELLIの前、4番手から仕切り直しの追い上げを強いられる。

 これで上位は首位を取り戻した37号車Deloitteのアレジに16号車ARTAの大津、そして3番手には36号車auの山下のトップ3へと変わり、開幕勝利も含めすでに62kgのSWを搭載するチャンピオンが、しぶとく表彰台圏内まで進出してくる。

 しかし燃料リストリクター1ランクダウンのパワーでは追走する14号車のスピードには抗えず。72周目のバックストレートでは福住がポディウム圏内に復帰し、残り30分を目前に首位までのギャップは14秒と、諦めることなく前を追う姿勢を見せる。

 勢いそのまま2番手の16号車ARTAに迫った福住は、78周目のシケイン飛び込みでインをズバリ。昨季のチームメイトである大津を差し切り、これで2番手とする。

 しかし首位アレジも追走する背後のタイムに反応する力走を見せ、約10秒のマージンを削らせない走りでファイナルラップへ。最終的に92周を走破した37号車Deloitteのふたりが、待望のGT500初優勝をポール・トゥ・ウインで飾る結末に。

 最後の最後まで首位を追いかけ続けた14号車ENEOSが2位に入り、これでトヨタ陣営が“鬼門”鈴鹿でワン・ツー・フィニッシュを達成。3位に16号車ARTAが続く表彰台となった。その背後では、ともに最終盤でのポジションチェンジを成し遂げた2台、12号車MARELLIがチャンピオンの36号車auを86周目に仕留め4位に。

 そして陣営内バトルを繰り広げた100号車STANLEYの山本尚貴と17号車Astemo太田の勝負は、ファイナルラップで先輩を差し切った太田に軍配が上がり、予選Q2のスピンオフで最後尾スタートに回りながら手負いのタイヤで追い上げ殊勲の6位カムバックとしている。