月曜日、アストンマーティンは10月初旬にアンディ・コーウェルがグループのCEOに就任し、ローレンス・ストロールの右腕を3年間務めたベテランのマーティン・ウィットマーシュが退任することを発表した。

 ウィットマーシュのアストンマーティンでの日々が、間もなく終わりを迎えることを知ってもそれほど驚きではなかったが、アンディ・コーウェルの起用を予想していた人は多くなかった。F1のパドックで広まっていたのはマッティア・ビノットの名前だったのだ。

 アストンマーティンに近い情報筋によると、ビノットはチームオーナーのローレンス・ストロールの求める第一候補であり、ストロールの側近であるマルコ・マティアッチが強く推薦していた。

 ビノットはこれまでにストロールと何度も長時間の話し合いをしており、エミリア・ロマーニャGPの期間中はイモラで2時間のミーティングを行っていたと言われている。しかしビノットの野心は、自身のチームを支配したいストロールのやり方と衝突し、両者は妥協点を見つけることができなかったのだろう。

 同じ情報筋によると、ビノットの計画はアストンマーティンの新CEOになり、F1チームも完全に支配してチーム代表をなくし、現在のチーム情勢を変革することだったという。

 ビノットは、テクニカルディレクターからフェラーリのチーム代表としてその地位を築き上げたときと同様に、オペレーション全体を完全にコントロールし、F1チームの運営に非常に実践的なアプローチをとることで知られるストロールからの完全な自律性を持つことを望んでいたとされている。

 ビノットについては当てが外れたが、近い将来、もうひとりのイタリア人がアストンマーティンに加わる予定だという。それはテクニカルディレクターのエンリコ・カルディレだ。

 この物静かなエンジニアは、すでにアストンマーティンのファクトリーを訪れており、イギリスのチームに加わる条件に合意したと考えられている。しかし、彼はオーストリアGPが終わるまでフェラーリの人事部門に辞表を出さずに、契約が締結されて彼の将来が保証されるのを待ってから現在のチームに辞職を告げたようだ。

 なお、レッドブルリンクでカルディレの行き先について尋ねられたスクーデリアの数人の情報筋は、アストンマーティンに負けたようなものだと答えていた。しかし同じ情報筋によると、カルディレはシルバーストンで仕事を始めるまでかなりの期間待つ必要があるかもしれないという。

 カルディレが、フェラーリを去ることを社内で発表するのに時間をかけたという事実を、上層部はあまりよく思っていないのだろう。フェラーリのフレデリック・バスール代表とローレンス・ストロールの仲が充実しているわけではないということを考えると、たとえ多額の補償パッケージが提示されたとしても、バスールがカルディレの“ガーデニング休暇”期間の短縮を受け入れる可能性は低い。

 10月初旬にメルセデスから加わるロイック・セラを待つ間、バスールの新たな優先事項となっていることは、カルディレがマラネロの技術部門から重要な人材をひとりも奪えないようにすることだ。バスールはチームが前進を続けるために理想的な体制がほぼ整ったと考えているうえ、安定性の価値を理解しているからだ。

 カルディレのアストンマーティンへの移籍は数週間以内の予定だと言われている。彼が“ガーデニング休暇”期間が終わるのを待ちながら、傍観者として座っていなければならない期間がどれくらいになるかは、その時に初めて明らかにされるだろう。