◆ 白球つれづれ2021〜第42回・プロ野球にPLあり

 中日の加藤宏幸球団代表が今月12日、与田剛監督の今季限りでの退団と、新監督として立浪和義氏に就任要請したことを明らかにした。立浪氏も就任に支障はなく、「前向きに考えたい」としているため、シーズン終了を待っての誕生は確実と見られる。

 現役時代は中日一筋22年。打っては2480本の安打を量産して名球会入り、守っては二塁、三塁、遊撃の3ポジションでゴールデングラブ賞を受賞するなど、「ミスタードラゴンズ」としてファンに愛された。

 2009年に現役引退後は、常に監督候補として名前が挙がってきたが、交友関係などが問題視され、前任の白井文吾オーナー時代の評価は低かったと言われる。しかし、昨年から大島宇一郎氏が新オーナーに就任。今春のキャンプでは臨時打撃コーチを務めるなど、徐々に障害はなくなったようだ。

 立浪氏と言えば、PL学園からドラフト1位で入団すると、1年目から遊撃のレギュラーを獲得して新人王に輝いている。

 当時のPLはまさに黄金期。同学年だけで立浪の他、野村弘樹(横浜)、橋本清(巨人)、片岡篤史(同志社大から日本ハム)らを擁して87年の甲子園春夏連覇を成し遂げている。2年先輩が桑田真澄、清原和博のKKコンビ、1学年下には宮本慎也(前ヤクルトヘッドコーチ)各氏らがいる。


 今でこそ、高校野球界の横綱格は大阪桐蔭高だが、1970年代から2000年初頭まで、野球少年の憧れはPLのユニフォームだった。

 鍛え抜かれ、洗練された隙のない野球は「逆転のPL」として全国区となり、桑田、清原の怪童コンビが甲子園を席巻。続く立浪世代も屈指の強豪として名をはせた。

 現在の大阪桐蔭が投打ともに大型選手を擁してねじ伏せる豪快野球なら、当時のPLは走攻守三拍子揃った、打ち勝つことも出来れば、守り勝つ野球も出来るチーム。史上最強と言われる所以である。

 そんなPL神話は身内から崩壊していく。2000年代に入ると相次いで部内暴力が発覚。母体であるPL教団内部でも野球部に対する情熱が薄れ、17年には、ついに大阪高野連に脱退届が提出されて、廃部(休部)が決まった。

 今回、立浪監督誕生を機にPL学園出身の現役プロ選手を調べてみると、福留孝介(中日)、小窪哲也(ロッテ)、中川圭太(オリックス)の3選手。メジャーでは前田健太投手がいる。廃部とあって後輩の出ようもないが、もう少し年配の指導者には驚くほどのPL人脈が見て取れる。

 <巨人>    桑田真澄投手コーチ、吉村禎章作戦コーチ
 <西武>    松井稼頭央二軍監督
 <ソフトバンク>平石洋介打撃コーチ
 <ロッテ>    今岡真訪ヘッドコーチ

 他にも今江敏晃、金森栄治(楽天)、尾花高夫(ヤクルト)、坪井智哉(DeNA)、入来祐作(オリックス)、山中潔(日本ハム)、各コーチなど、ほぼ全球団に人材を輩出している。


 立浪新監督のコーチングスタッフには、早くも同級生の片岡篤史氏の入閣が確実視され、二軍監督に就くと見られる。さらに一部報道ではヘッド格に宮本慎也氏の名前も挙がっている。いずれもPL人脈だ

 いずれにせよ、今季下位に沈んだ中日の病巣は明らかである。18日現在、リーグトップのチーム防御率に対して、同打率はリーグワースト。69本のチーム本塁打に至ってはヤクルトや巨人の半分にも満たない。

 「元打撃職人」の立浪氏をもってしても、短期間での強力打線作りは至難の業だ。まずはダヤン・ビシエドと並ぶ強力な新外国人打者の獲得と、春季キャンプで教えた京田陽太、根尾昴選手ら若手のレベルアップで活路を見出したい。

 立浪新監督に次いで、西武では松井二軍監督が来季から一軍ヘッドコーチに就任、近い将来の一軍監督が予想される。

 プロの世界、まだまだPL魂は死なない。


文=荒川和夫(あらかわ・かずお)