今季は自己最多の94試合に出場した楠本

 大きく花開く時は着実に近づいている。楠本泰史は5年目の今季、自己最多の94試合に出場し、存在感を高めた。外野のレギュラーと呼べる位置まではあとわずかだ。

 東北福祉大時代に大学日本代表で四番を務めるほどの実力者ながら、ドラフト8位入団と前評判は決して高くなかった。ルーキーだった2018年は巧みなバットコントロールが当時のアレックス・ラミレス監督の目に留まり、開幕一軍をつかんだ。ここから結果を積み上げていくことが期待されたものの、プロの世界は甘くなかった。

 1年目は56試合で打率.205に終わると、出番は年々減っていった。潮目が変わったのは三浦大輔監督が就任した昨季だ。開幕は二軍で迎えたが、5月にファームでサイクル安打を達成して一軍昇格をつかむと、代打で勝負強さを見せて信頼を高めた。そして今季は故障や新型コロナウイルス感染での離脱はあったものの、大きな戦力として働き続けた。

 中でも9月は月間打率.345と好成績を残した。ヒントとなったのは同じ左打ちの好打者である秋山翔吾(広島)だ。8月に対戦した際に「投手が投げる前に、自分の間で打席で待てている」と感じたという。これを参考に始動を早めるフォームに変更し、好結果につながった。

 キャリアで最も充実した1年にも「自分の力でつかみ取ったというより、結果が出ていなくても監督が使ってくれたという感覚」と慢心はない。チームにはドラフト9位から主将を務めるまでに駆け上がった佐野恵太がいる。その足跡を追うように、来季は不動の地位をつかめるか。

写真=BBM