小孫竜二

 敗戦処理だったかもしれないが、確かな一歩だった。5月20日のロッテ戦(楽天モバイル)。1対6で迎えた9回、マウンドに上がったのは小孫竜二だった。

 先頭の中村奨吾を内角直球で遊ゴロ。しかし続くポランコに四球を与えると、安田尚憲には中前打を許した。岡大海を二ゴロに仕留めて二死二、三塁。

 ピンチを背負ったが、最後は和田康士朗をカットボールで見逃し三振。1イニングを初めて無失点に抑えた右腕は「内容はどうであれ、ゼロで帰ってこられてよかった」と胸をなで下ろした。

 屈辱からはい上がった。プロ初登板となった4月4日の西武戦(楽天モバイル)では、2点ビハインドの9回にマウンドへ。しかし制球が乱れて3者連続四球を与え、無死満塁のピンチを招いたところで降板。一死も取れずに、試合後には二軍落ちを命じられた。

 鷺宮製作所を経て、今年ドラフト2位で入団した最速156キロ右腕は、あらためて投手としての心構えから見つめ直した。

「自分との戦いではなく、打者との戦い。それを常に心掛けてやってきた」。イースタンでは12試合に登板し、防御率3.09。課題だった制球も安定し、5月19日に再昇格をつかみ取った。

 高校、大学、社会人で3度の指名漏れを経験。社会人2年目まで、ドラフト会議のたびに涙を飲んだが「指名漏れは間違いなく、今の原動力になっています」。何度も自分自身と向き合って、成長につなげてきた。

 一軍定着に向け、直球に加えて変化球もさらに精度を上げる覚悟だ。24歳のルーキーは、持てるすべてを出し尽くして逆境からはい上がる。本領発揮はこれからだ。

写真=BBM