読者からの質問にプロフェッショナルが答える「ベースボールゼミナール」。今回は走塁編。回答者は現役時代、たびたび好走塁を披露した元中日ほかの井端弘和氏だ。

Q.チームの走塁力を上げることは、得点力を上げることにつながると感じています。プロの走塁コーチも経験された井端さんが思う、アマチュアの選手、チームが取り組むべき走塁の練習や、効果的な試合中の走塁テクニック(アイデア、意識)にはどのようなものがありますか。ぜひ、チームに取り入れたいと思っています。(北海道・21歳)(青森県・15歳)



中日時代の井端氏の走塁

A.コーチに頼らなくてもよいくらい判断力を磨くこと。どこにいても見て頭を働かせるだけで判断力は磨けます

 質問の方が言うとおりで、特にアマチュアではチームで走塁力の向上に取り組み、徹底すれば、得点力は格段に増すと思います。

 走塁の意識として、私が大事にしてほしいと思うことは、ランナーコーチに頼らず、自分の判断で動けるくらい、判断力を磨くことです。コーチに頼るのは、二塁ランナーがヒット1本でホームにかえるか、かえらないかの場面くらいでしょう。ボールがどこに飛んだかまでは確認したしても、打球に目をやっていては(飛んだ場所にもよりますが)スピードが遅くなってしまうからです。「抜けた」と分かれば、二塁ランナーはすべてホームを突く意識とスピードで走らなければいけません。それを止めるのがコーチの役割です。

 一塁ランナーがヒット1本で三塁を狙う場面でもコーチの指示に頼る選手もいますが、完全に打球処理が背中側で行われる二塁ランナーと違い、一塁ランナーは回りながらこれを見ることができるのですから(といっても、判断は一瞬です)、コーチに頼るのではなく、自分の判断を大事にすべきです。コーチの指示が遅い場合、これに頼り切りの選手は「どっちなんだ?」と指示を待っている間にスピードが遅くなる危険もありますね。練習のときなどは、あえて三塁コーチを置かず、自分で行けると思ったら行く、無理だと思ったら自重するという形で判断力を磨くといいでしょう。

 チームとして、塁上にいるランナーは「1ヒットで2つ狙う」という姿勢を徹底させることも大事だと思います。各駅停車でよければ、誰でもできますし、それこそ走塁練習なんて必要ありません。足が速いから走塁に興味あります、足が遅いから興味がありませんではダメですし、判断力をしっかりと磨けば、足が遅くても十分に走塁で勝負ができます。

 例えばランナー二塁で、ライナーで一瞬、足が止まり、打球が落ちてからスタートでは、どんなに足が速くても三塁止まりかもしれませんが、外野の位置や一歩目を見て、ライナーが飛んだ直後に「落ちる」と判断してスタートができれば、足が遅いランナーでもホームを狙えるでしょう。打撃練習中にランナーについてもいいですし、シート打撃などではランナーの順番待ちで後ろに並んでいても、一歩目までの判断を磨く練習はいくらでもできます。ベンチにいて「GO」「BACK」と口で言うだけでも頭のトレーニングとなります。ぜひ、走塁の意識を高めてください。

●井端弘和(いばた・ひろかず)
1975年5月12日生まれ。神奈川県出身。堀越高から亜大を経て98年ドラフト5位で中日入団。14年に巨人へ移籍し、15年限りで現役引退。内野守備走塁コーチとなり、18年まで指導。侍ジャパンでも同職を務めている。現役生活18年の通算成績は1896試合出場、打率.281、56本塁打、410打点、149盗塁。

『週刊ベースボール』2021年4月12日号(3月31日発売)より

写真=BBM