4月23日以降、三番に



今季当初は四番も現在は三番に座る広島・鈴木誠也

 鈴木誠也は侍ジャパンで不動の四番だ。2019年のプレミア12では全8試合で四番に座り、打率.444、3本塁打、13打点と大活躍。首位打者、最多打点、最多得点のタイトルを獲得し、大会MVPで同大会の初優勝に貢献した。今年の東京五輪でも稲葉篤紀監督は四番の最有力候補として鈴木の名前を挙げ、全幅の信頼を置いている。

 高水準で確実性と長打力を合わせ持った稀有な存在だ。19年に打率.335で首位打者を獲得するなど、16年から20年まで球団初の「5年連続打率3割」の快挙を達成。プロ野球史上4人目の「5年連続打率3割、25本塁打」もクリアした。過去の達成者を見ると王貞治、落合博満、小笠原道大と球史に名を刻む強打者たちが。打撃だけではない。外野からの強肩は球界屈指で19年には25盗塁をマークするなど足も速い。メジャー・リーグから「日本で最もメジャーに通用する強打者」として高く評価されているが、驚きはないだろう。

 ただ、広島では「不動の四番」ではない。昨年は6月、7月と月間打率.340を超えるハイアベレージで最高のスタートを切ったが、8、9月の月間打率は2割6分台と調子が上がらなかった。9月28日のDeNA戦(マツダ広島)から三番に。シーズン終了まで四番に戻ることはなかった。

 トータルの数字を見れば打率.300、25本塁打、75打点と十分な成績を残している。ただ鈴木自身は満足していないだろう。殊勲打が少なく、チームも5位に沈んだ。一方で同情的な見方も少なくない。

「昨年はクリーンアップが固定できず、鈴木誠也一人に負荷がかかった。投手は『四球でもいい』と割り切って、ストライクゾーンに球が来ない打席も少なくなかった。広島の黄金時代は新井貴浩、バティスタ、松山竜平と強力な五番打者が控えていたので、投手も鈴木誠也と勝負せざるを得なかったが、今のチーム状態は違う。本人もその状況が分かっているからつなぐ意識より、自分が決めようという意識が強くなる。ボール球に反応して強引な打撃になってしまうのも理由があります。鈴木誠也がチャンスに弱いと評価するのはちょっと違うかなと思います」(スポーツ紙遊軍担当記者)。

 3年ぶりのリーグ優勝を狙う今年だが、苦しい戦いが続いている。2年ぶりの6連敗を喫するなど波に乗れず、鈴木の打順も固まらない。開幕から四番を打っていたが、4月23日の巨人戦(東京ドーム)以降は三番に。5月8日現在、打率.311、7本塁打、16打点、4盗塁と状態は決して悪くない。

打撃フォーム改造が……


 飽くなき向上心で上を目指す鈴木は昨オフに打撃フォーム改造に踏み切った。

 元中日の立浪和義氏は週刊ベースボールのコラムで、「もともと力のあるバッターですし、今の成績はまったく不思議はないのですが、今年は開幕から足を大きく上げ、より軸足に重心を残し、ポイントを近くするフォームにしていましたが、うまくフィットせず、少しつまずいていました。足の上げ方自体は、それぞれのタイミングの取り方もあります。ステップが狭いタイプなので、目線が動いたりという問題はないのですが、見ていると軸足に重心を置き過ぎて、体が前に出る動きがなく、バットが出にくくなっていました。これまでなら仕留めていた球を見逃したり、ファウルにしていました。メジャーの長距離打者は軸足にかなり重心を置いています。鈴木誠選手もそれを意識した変更だったとは思いますが、あれだけ前への体重移動がないと、なかなかバットは出ません。顔が上を向くくらいのスイングになっていて、これでは厳しいかなと思って見ていました」と分析していた。

 その上で、「鈴木誠也選手にすれば、さらに上のレベルに行くための挑戦であったと思います。それはそれで素晴らしいことだと思いますが、現時点では合わなかったということでしょう。今は体が前に行く動きがあり(もちろん、体が前に出されるのがいいわけではありません。あくまで適度の意味です)、軸足回転でスイングしていますので、アベレージも上がるし、ホームランも増えています」と評している。

 ポイントゲッターの鈴木をどの打順に置くか。広島の巻き返しへ、重要なポイントになりそうだ。

写真=BBM