速い球を投げる投手にロマンを抱くが、針の穴を通すような制球力で打者を抑える投手ほど監督にとって頼もしい存在はいない。現役投手ではドジャース・前田健太、巨人・菅野智之、阪神・西勇輝、秋山拓巳、中日・柳裕也、楽天・岸孝之の名が挙がる。では、平成の「ミスターコントロール」は誰だろうか。

“世界一”の胴上げ投手にも



巨人時代の上原浩治

・上原浩治(巨人、オリオールズ、レンジャーズ、レッドソックス、カブス)
※NPB通算312試合登板、112勝67敗33S23H、防御率3.02
※MLB通算436試合登板、22勝26敗95S81H、防御率2.66

 巨人1年目の1999年に20勝を挙げるなど抜群の制球力でエースに。最多勝、最優秀防御率、最多奪三振を2回、最高勝率を3回獲得した。メジャー移籍後も13年にレッドソックスの守護神で日本人初のワールド・シリーズでの胴上げ投手に輝くなど救援で活躍。史上初の日米通算100勝100セーブ100ホールドを達成している。テークバックが小さく腕の振りが速い投球フォームで、球の出どころが見づらく球速以上の速さを感じる。NPBで1500イニング以上投げた投手の9回あたりの与四球数は1.20(211与四球、1583回2/3)でNPB歴代トップ。フォークの落差を変幻自在に操り、変化もシュート回転させて右に落とすもの、スライダー回転させて左に落とすものなど数種類の軌道で投げ分ける。抜群の制球力は異次元の領域だった。

落合中日のエース



中日・吉見一起

・吉見一起(中日)
※NPB通算成績 223試合登板、90勝56敗11H、防御率2.94

 落合博満政権で黄金時代を築いた時のエース右腕。2008年から5年連続2ケタ勝利をマークし、09年に16勝7敗で最多勝、11年に18勝3敗、防御率1.65で最多勝、最優秀防御率、最高勝率を獲得した。直球の平均球速は140キロと決して速くないが、同じ腕の振りからスライダー、シュート、フォークボール、チェンジアップを抜群の制球力で投げ分けて凡打の山を築いた。通算与四球率1.55。2ストライクに追い込んだ後のアウトローに決める球の精度は精密機械だった。現役時代の後半は故障に苦しみ、思うような結果が出せなかったが、球界最高峰の制球力で対戦した打者からも一目置かれていた。

メジャーでも称賛された制球力



楽天時代の岩隈久志

・岩隈久志(近鉄、オリックス、楽天、マリナーズ、巨人)
※NPB通算成績 226試合登板、107勝69敗、防御率3.25
※MLB通算成績 150試合登板、63勝39敗2S、防御率3.42

 2003年から2年連続15勝をマークして球界を代表する右腕に。楽天では08年にシーズン65勝のうち約3分の1の21勝をマーク。最多勝、最優秀防御率、最高勝率、沢村賞、最優秀選手とタイトルを総ナメにした。身長191センチの上背から手足の長いしなやかなフォームで直球、スプリット、スライダー、ツーシーム、カーブとすべての球種が高精度。メジャーでは手元で動くムービング系の球を駆使してゴロの山を築き、3度の2ケタ勝利をマークした。捕手の構えたミットにきっちり投げ分け、全盛期は打者に「打てる球が1球もこない」と嘆かせるほど。メジャーでも「ミスターコントロール」と称賛されていた。

ダーツの腕前も抜群



ソフトバンク・攝津正

・攝津正(ソフトバンク)
※NPB通算成績 282試合登板、79勝49敗1S73H、防御率2.98

 新人の2009年からセットアッパーで2年連続最優秀中継ぎ投手賞を獲得し、先発転向した11年から5年連続2ケタ勝利とエースとして活躍。12年には17勝5敗、防御率1.91の好成績で最多勝、最高勝率、沢村賞のタイトルを獲得した。社会人野球・JR東日本東北で身につけたテークバックの小さい独特のフォームから内外角の制球力が抜群だった。右打者は直球と思って打ちにいくと鋭く内角に食い込むシンカーで内野ゴロに。ダーツのカウントアップは自己ベストが886点という腕前が投球にも生かされている。現役生活は10年と長くなかったが、その輝きは鮮烈だった。

写真=BBM