ベンチに独特のムードを与える右腕



阪神・藤浪晋太郎

 阪神がセ・リーグのペナントレースで独走体勢を固めようとしている。強敵ひしめくパ・リーグとの交流戦では11勝7敗の2位で終了。再開したリーグ戦でも先導役となりそうだ。ドラフト制導入後としては最速の2ケタ本塁打をクリアした佐藤輝明、攻守走と3拍子そろった中野拓夢ら新人が活性化した若い野手のプレーが見どころだが、16年ぶりのリーグ制覇を果たすには、投手陣の力が不可欠となる。

 他5球団を制してゴールを切る絶対条件は、勝利の方程式を担う救援陣の活躍だ。これからの阪神には、野手の勢いをサポートしながら、手堅く白星を積み上げる作業が待ち受ける。優勝の“ジョーカー”となるかもしれないのが、交流戦直前まで中継ぎとして登板していた藤浪晋太郎だろう。

 開幕投手に指名された藤浪だったが、課題の制球難を克服し切れず4月下旬にファーム落ち。しかし、セットアッパーの岩崎優が二軍調整となるなど救援陣が手薄となった事情もあり、6月4日に再昇格した。交流戦では、中継ぎとして5試合に登板し、5イニングで防御率1.80。昨季も見せた救援投手としての適性を見せた。短いイニングを全力で投げることが、完全復活途上の現状には合っているのかもしれない。

 リーグ戦再スタート直前の6月16日、矢野燿大監督は「藤浪はそのまま、リリーフでいこうと思っている」と明言。調整を終えた岩崎が一軍復帰したことで、藤浪の先発起用もあり得た。だが、ベンチに独特のムードを与える藤浪の投球スタイルを高く評価する指揮官は、ペナントの行方を見据えながら、ブルペンの層の再構築を選んだ。

 ストッパーには、球団記録となる12試合連続セーブを達成したロベルト・スアレスがいる。絶対的守護神を保有するということだけを考えても、今年の阪神の優位は揺るがない。仕上げのスアレスにどれだけうまくつなげることができるかが、優勝への課題と言える。

05年Vの大きな力となったJFK



JFKと称された強力リリーフトリオ、久保田、藤川、ウィリアムス

 優勝を果たした2005年から08年まで、阪神は「JFK」と称されたジェフ・ウィリアムス、藤川球児、久保田智之という強烈な救援トリオを擁した。05年には、ウィリアムスが75試合3勝3敗37ホールドで防御率2.11、久保田が68試合5勝4敗27セーブ3ホールドで防御率2.12、最優秀中継ぎの藤川が80試合7勝1敗1セーブ46ホールドで防御率1.36と、いずれも圧巻の活躍。「中盤までに決着をつけないと勝てない」と巨人・堀内恒夫監督(当時)をうならせるほど、盤石の戦いぶりが目立った。

 場内に響く交代のコールだけで相手の戦意を萎えさせるためにも、できれば勝利の方程式の顔ぶれが確定することが望ましい。今年の阪神にはJFKの再来が期待される土壌が育まれている。岩崎をはじめ、藤浪、岩貞祐太、馬場皐輔、ジョン・エドワーズ――ら、ベンチには他チームもうらやむほどのそうそうたるメンバーが控える。長年の正捕手争いに勝ち抜いて今年から背番号2を背負い、5月にFA権を取得した梅野隆太郎が円熟味を増したのも、阪神の強み。巧みなリードは、セールスポイントとなるリリーフ陣の構築にも一役買いそうだ。

 コロナ禍の中、熱狂的ファンを持つ人気チームの躍動は何よりの明るい話題だ。「ここが自分にとっても、チームにとっても正念場」と突き抜けたピッチングを見せ、球史に“第二のJFKメンバー”として名を刻む投手は出てくるか。今年の阪神のファンには、はらはらどきどきの優勝争いのシナリオを楽しむ権利がプレゼントされている。

写真=BBM