投手と野手、どちらもドラフト1位として



日体大の150キロ左腕・矢澤宏太は東海大1回戦(10月16日)で2失点完投も敗戦投手。優勝の可能性を残していたが、この一戦で、東海大の首都大学リーグ制覇が決まった

 首都大学リーグに「二刀流」がいる。来年のドラフト候補に挙がる日体大の150キロ左腕・矢澤宏太(3年・藤嶺藤沢高)だ。

 1年春から外野手として出場機会に恵まれると、同秋はマウンドにも上がった。1年生ながら大学日本代表候補に選出され、侍ジャパンの有力メンバーにリストアップされた。新型コロナ禍による2年春のリーグ戦中止を経て、同秋は外野手部門のベストナインを初受賞。投手としても、救援で実績を重ねていた。

 今春からは、1回戦の先発登板の際にもクリーンアップで右翼手に入るケースもある「リアル二刀流」。2回戦は右翼手として先発出場し、投打にわたってフル回転していた。50メートル走5秒9の俊足で、全身がバネのような躍動感で、攻守にスピードがある。

 今秋の3勝はいずれも完封だ。開幕カードの帝京大1回戦で「四番・投手」で出場すると、2安打シャットアウト。桜美林大1回戦、武蔵大1回戦でも完封し、きれいにゼロを並べたが、この2戦で左打席には立たなかった。

 リーグ優勝への大一番となった東海大1回戦で、日体大・古城隆利監督は矢澤を投手に専念させることを選択。9回2失点と粘ったものの、打線の援護がなく、0対2で惜敗し、東海大のリーグ制覇を目の当たりにした。

 1回裏に一死満塁の先制機も、得点することができなかった。古城監督は試合後「結果的に初回のチャンスが……。シーズンを通してあと一本が出ない」と頭を抱えた。

 矢澤は東海大1回戦を迎えるまで20打数6安打、2打点、打率.300をマークしていた。この秋、筑波大・川村卓監督が「矢澤君は投打ともにウチのリーグでは抜けた実力があります。どちらで出てきても嫌な存在です」と明かしていた。矢澤がラインアップに入るだけで、相手バッテリーに重圧を与えられるはずだが、古城監督は試合後にこう言った。

「打撃が本調子ではなく、この秋は投手に専念させたときは良いピッチングをしている。あまりに矢澤一人に負担をかけるようなチームでは、優勝できません。(MLBで活躍する)大谷(翔平)選手(エンゼルス)も一、二番を打っており、打線の中心ではないわけですからね」。古城監督はあくまでも攻撃陣の奮起を促したが、矢澤の本音としては打席に立って、チームに貢献したい思いが強いという。

 今秋のシーズン中、矢澤は投手一本で出場した際に「信頼されていないんだな、と。もっと練習していきたい」と明かしたことがある。許されるのであれば、ずっと、グラウンドに立っていたい、そんな野球小僧だ。「投手と野手、どちらもドラフト1位として評価されるようなレベルに持っていきたい」と力強く語る。気は早いが、2022年のドラフト戦線において、目の離せない逸材である。

文=岡本朋祐 写真=川口洋邦