想定以上の快投を披露



今季初登板から快投を続けている村上

 誰もが認める阪神の救世主だ。3、4月の月間MVPを受賞した大卒3年目右腕・村上頌樹の春先の活躍は衝撃的だった。

 5試合登板で2勝1敗、防御率0.28。今季初登板となった4月1日のDeNA戦(京セラドーム)は救援でマウンドに上がる。当初は先発ローテーションに入っていなかったが、秋山拓巳がピリッとせず、伊藤将司も左肩違和感で開幕二軍スタートと出遅れたため、村上に先発でチャンスが巡ってきた。4月12日の巨人戦(東京ドーム)で7回まで走者を1人も出さない完全投球。8回から救援登板した石井大智が岡本和真に同点アーチを被弾し、大記録達成もプロ初白星も逃したが、想定以上の快投で首脳陣の評価を一気に上げた。

 野球評論家の伊原春樹氏は、週刊ベースボールのコラムで村上を絶賛している。

「(投手交代は)岡田彰布監督も悩みに悩んだ末の決断だったはずだ。4月12日の巨人戦(東京ドーム)。阪神先発の村上頌樹が素晴らしいピッチングを見せた。大卒3年目の右腕。2016年、智弁学園高3年時にはセンバツ優勝投手となり、東洋大へ。入学時に当時の高橋昭雄監督から『身長は低いけど(174センチ)、将来面白いよ』と聞いており注目していた」

「21年にドラフト5位で阪神に入団。したが、2年目を終えて一軍登板はわずか2試合。ウエスタンでは1年目に10勝1敗、防御率2.23、勝率.909で最多勝、最優秀防御率、最高勝率の三冠に輝き、2年目も防御率3.09、勝率.700でタイトルを奪取していた。ウエスタンで好結果を残しているのに、矢野燿大前監督がなぜ一軍で起用しないのか不思議に思っていたが、今年から岡田監督が就任してチャンスが巡ってきた。1度の中継ぎ登板を経ての先発。ストレートの平均球速は145キロだが初速と終速の差がなく、小気味いい。打者からすると打てると思ってバットを振り出しても手元でも勢いが衰えないからポップフライが多くなる」

セ・タイの31イニング連続無失点


 巨人戦の好投がフロックではないことを証明する。次回登板となった4月22日の中日戦(バンテリン)で2安打10奪三振のプロ初完封勝利で初白星を飾る。29日のヤクルト戦(神宮)も8回2安打無失点の快投で2勝目を挙げる。5月9日のヤクルト戦(甲子園)は7回5安打1失点の力投も打線の援護に恵まれず今季初黒星を喫したが、6回まで無失点に抑え、2リーグ制後のセ・リーグタイ記録となる開幕後31イニング連続無失点を樹立。63年の中井悦雄(阪神)に並ぶ60年ぶりの快挙となった。

力感のないフォームからスピンの利いた球


 他球団のスコアラーは「入団したときから良い投手だと思っていました。直球は140キロ台前半ですが、力感のないフォームからスピンの利いた球をテンポよく投げ込むので打者が差し込まれる。カットボール、ツーシームの精度も高く、制球が抜群にいいのでなかなか連打が出ない。攻略のために対策を練る必要があります」と警戒を強める。

 村上が今年1月に弟子入りしたエース・青柳晃洋、西勇輝が3、4月に不安定な投球が続いたため、「村上がいなければ……」と肝を冷やした阪神ファンは多いだろう。

 同期入団の1位・佐藤輝明、2位・伊藤、6位・中野拓夢はプロ1年目から一軍で活躍している。村上も期する思いがあっただろう。智弁学園高では3度甲子園に出場し、3年春のセンバツではエースとして5試合を1人で投げ抜き、47イニングで防御率0.38と抜群の安定感で同校初の全国制覇に導いている。プロでも球界を代表する投手に――。今後の活躍が楽しみだ。

写真=BBM