開幕から好調続く



チームの窮地を救った城西大・恋田孝一朗

【5月28日】入替戦
城西大3-1武蔵大
(1勝1敗)

 首都大学リーグ入替戦2回戦。初戦は1部6位の武蔵大が2部優勝の城西大を下して先勝。しかし、崖っぷちに追い詰められた城西大が底力を見せ3対1で勝利し、1勝1敗の五分に戻した。

 先制点を挙げるなどして勝利に貢献し、チームの窮地を救ったのは恋田孝一朗(3年・関西高)だ。関西高時代は2年春の中国大会で優勝を経験。しかし、3年時はコロナの影響で夏の甲子園大会が中止に。「正直、かなり落胆しました」と振り返る。その悔しさをぶつけるべく、「大学で活躍したい」という願いを成就させるために選んだのが城西大だった。

「村上文敏監督と直接対面してお話をする機会があったのですが、その時に『野球のプレーだけを見るのではなく、日常生活やあいさつ、グラウンドでの態度や振る舞い方を見ている。そういう部分も一緒に成長させたい』とおっしゃっていました。それを聞いて『村上監督の下で野球をやりたい』と思ったんです」

 城西大に入ると、1年春からリーグ戦に出場。昨秋は打率.348、リーグ初本塁打も放ち、チームの2部優勝に貢献した。しかし、入替戦で明治学院大に敗れ、昇格はならず。そこで、この冬のオフシーズンではさらなる打撃強化を目指してフォームを修正してきた。

「上体がブレてしまうことがあったので、頭を動かさないようにスイングすることを意識してきました。そのために毎日300回素振りをして、自分のスイングを確認してからバッティング練習をするようにしていました」

 プライベートでも仲がいい同学年の坂口渉(3年・興譲館高)とは互いにフォームをチェックし合う仲。その甲斐もあり「オープン戦から調子が良く、ノーヒットの試合はほとんどありませんでした」と調子を上げていた。

 リーグ戦でも玉川大との開幕戦から猛打を見せた。二塁打と三塁打を一本ずつ放ち勝利に貢献。その後も好調は続き、終わってみればリーグ7位の打率.375をマークして外野手で初めてベストナイン(2部)に選出された。

 打点も9を記録したが、特に「今季は『絶対に先制点を取りたい』と思っていたので、1打席目のチャンスで打つことを強く意識していました。ただ、実際の打席ではあまり考え過ぎずに自分のやるべきことに集中していました」と話す。

 村上監督にもその実力は認められており、「もともと打力があって下級生の頃から起用していたのですが、頼もしいクリーンナップに成長してきています」と信頼感が増しているようだ。

1部昇格へ必勝誓う


 武蔵大との入替戦。初戦を落としたものの、「4年生が『負けたら4年生の責任』と話し、自分たち下級生には『好きなようにやればいい』と言ってくれました」と、気負うことなく迎えられたという。

 すると1回表、いきなり回ってきた一死三塁で、「ランナーが俊足の松川玲央(2年・関西高)だったので前に飛ばせば点が入ると思いミートを心掛けました」とセンターへクリーンヒット。1打席目のチャンスをしっかりとモノにし、貴重な先制点をたたき出した。

 さらに4回表の第2打席では、「村上監督から『自分のスイングをしろ』と言われていたので『しっかりと振って後ろにつなげられれば』と思っていました」と左中間を破る三塁打。次打者の坂口の中犠飛で生還し、得点も記録した。

 実は坂口には、試合中も一球ごとにアドバイスをもらっているそうで、「この打席でも『体が前に突っ込んでるぞ。後ろでボールを見ろ』とか『今のはいいぞ』と、声を掛けてもらっていました」という。

 試合は8回表に1点を追加した城西大が3対1で逃げ切り、これにより1勝1敗の五分に。村上監督は「オープン戦の時から、選手には『勝敗を分ける綱を離したり、無理に引っ張たりするな。我慢しておけ』と言い聞かせてきたのですが、ようやくできるようになってきました。あともう1試合頑張ります」と手応えを語った。

 恋田は「1部で勝てるチームを目指してきたので、今はまだ通過点。この入替戦にかける思いは強いです」と話し、村上監督に対しては「1年生の頃から結果が出なくても試合で使っていただき、しんどい時にもいろいろと声を掛けてもらいました。ここで1部に昇格できれば恩返しになると思います」と、これまでの恩に報いるためにも必勝を誓う。

文=大平明 写真=BBM