攻守でチームの勝利に貢献



主将としてもチームを引っ張る岡本和

 WBCで激闘を繰り広げて頂点に立った侍ジャパンのメンバーはシーズンに入り、試行錯誤するケースが少なくない。大きな重圧を抱えて戦っただけに、疲れが残っているのは当然だろう。だが、この男は主砲としての役割を全うしている。今年から主将に就任した巨人・岡本和真だ。

 今年の巨人は主力選手に誤算が相次いだ。不動の遊撃として活躍し続けた坂本勇人が開幕から打撃不振でスタメン落ちを経験、丸佳浩、吉川尚輝も打撃の状態が上がらず、春先はスタメンから外れた。中田翔は本塁打を量産していたが、5月上旬に右太もも裏の肉離れで3週間離脱。原監督も打線の組み合わせに苦労しただろう。その中で、四番に書き込む名前は毎試合変わらない。岡本和はチームで唯一全47試合出場して打率.301、9本塁打、23打点。本塁打はリーグトップタイだ。

 不動の大黒柱として活躍する一方、チーム事情で複数のポジションを守っている。本職は三塁だが、中田翔の離脱でドラフト4位の門脇誠を三塁で起用した際、一塁に回った。さらに、中田が5月25日のDeNA戦(東京ドーム)から一塁でスタメン復帰すると、岡本和は左翼へ。守備に神経を使う中で、打撃で結果を出していることは大きな価値がある。3、4月は月間打率.330、2本塁打、7打点をマーク。5月に入ると22試合で7本塁打と打球が上がってきた。5月21日の中日戦(東京ドーム)から3試合連続アーチ。打率3割をキープし、交流戦に突入する。

キャリアハイの成績を期待


「今年の岡本和はきっちり自分の間合いで打てている。WBCでの活躍が自信になった部分は間違いなくなると思います。昨季は村上宗隆(ヤクルト)が三冠王を獲得しましたが、今年の岡本和はそのチャンスが十分にある。一番のハードルは打率ですが、坂本、丸ら他の主力打者が調子を上げれば岡本和もストライクゾーンで勝負してもらえる。キャリアハイの成績が期待できます」(スポーツ紙デスク)

 2020、21年と2年連続本塁打、打点の2冠王を獲得。昨季は球団の生え抜きで史上3人目の5年連続30本塁打をマークした。侍ジャパンに不思議と縁がなかったが、今年3月のWBCで輝きを放つ。レギュラーが確約されていた立場ではなかったが、大会前の実戦6試合で20打数7安打、打率.350、1本塁打、6打点とアピール。一塁のポジションをつかんだ。準々決勝・イタリア戦で3回に左越え3ランを放つなど5打点の大活躍。決勝・アメリカ戦でも1点リードの4回に貴重な追加点となるソロを左中間スタンドに叩き込み、優勝に大きく貢献した。全7試合に出場し、打率.333、2本塁打、7打点。9四球を選んで出塁率.566と申し分ない活躍だった。

「スイングの中でミートする幅がある」



重厚感のある打法で快打を連発していく

 大久保博元一軍打撃チーフコーチは、昨年12月に週刊ベースボールのコラムで岡本和について以下のように綴っている。

「2008年、西武ライオンズで日本一になったときは、本塁打王、最多安打、最高出塁率、最多盗塁を西武の打者たちが獲得。今年も村神様、ヤクルトの村上が打撃三冠王になり、チームが日本一になっています。優勝するには、それくらいの記録を残す打撃陣が必要だということです。巨人に目を向けると、その部分ではやはり岡本和。タイトル獲得が可能な打者だと思っています。当然、村上を抑えての本塁打王も十分にあると思います」

「08年当時、西武の四番にさんぺいこと中村剛也がいました。彼と岡本、2人とも豪打の右打者。似ているといえば似ていますが、似てない点があります。さんぺいは、軽くバットを振りながらクルッと体を回転させて打ちます。軽く見えますよね、スイングが。一方、岡本和は少し重厚感のある打ち方です。でも一番の違いは、スイングの方法です。さんぺいはボールとバットの一点で当てていくので、落ちるボールなど外されると空振りしてしまいます。しかし岡本和は、スイングの中でミートする幅があります。そのためフォームを崩されても、バットとボールの接地面が多くあることでヒットにしやすい。ここが大きな違い。打つポイントが多い分、勝負強い打撃ができるので本塁打と打点も挙げやすい。一昨年までそうでしたから、そこに戻すことができれば、巨人打線も強くなると思います」

 首位を快走する阪神に同一カード3連敗を喫して借金1となったが、まだペナントレースは3分の1も消化していない。岡本が勝利へ導く一打を打ち続ければ、覇権奪回の道筋が見えてくる。

写真=BBM