「普段どおり」が合言葉



明治安田生命は初の東京第1代表で4年ぶり7回目の都市対抗出場を決めた。表彰式後の集合写真では、多くの会社幹部が集合写真に収まった

 応援リーダー、吹奏楽、チアリーダーが動員され、社員が声援を送った。神宮球場は会社を挙げての応援態勢である。明治安田生命はJR東日本との都市対抗東京第1代表決定戦(5月31日)を8対2で勝利し、4年ぶり7回目の本大会出場を決めた。

 表彰式後、同社の根岸秋男会長はグラウンドに降りて「歴史的快挙!!」と岡村憲二監督以下の指導スタッフ、選手たちを労うと、ナインの手によって胴上げ。神宮の夜空を、大きく舞った。7回目の都市対抗出場で、第1代表は同社初の偉業である。白球で社員の士気高揚。社会人野球が果たすべき役割を、明治安田生命は体現したのである。

 今季から主将を務める森龍馬(法大)は「会社の方々、それ以外の家族、友人が駆けつけてくれた。大応援が力になりました。感謝の気持ちでいっぱいです」と頭を下げた。日大三高、法大で主将を務めたリーダーシップは、社会人野球においても健在だった。

 就任3年目の岡村監督は男泣き。過去2年は最後の1枠、第4代表決定戦で敗退していた。

「今年にかけていました。監督として、苦しかった。力不足の監督を選手がカバーした。野球の神様が見てくれていたのかな、と思います」。涙について問われると「考えると、(過去を思い出して)泣きそうになる」と、ウイニングボールを手にし、感慨深げに語った。

 今年は春先から好調だった。3月の東京都企業春季大会で、3試合を勝ち上がり優勝。4月のJABA四国大会で準優勝、JABA日立市長杯でも決勝トーナメント進出(準決勝敗退)と、安定した戦いを展開していた。都市対抗二次予選も3連勝で、頂点に立った。


就任3年目の明治安田生命・岡村監督はウイニングボールを手に、第1代表の喜びを語った

 なぜ、明治安田生命は飛躍したのか。岡村監督は「投手を中心とした守り」を強調した。今季から新谷博ヘッドコーチ(元西武ほか)が就任。「(投手陣は)素直な気持ちでチャレンジしてくれた」(岡村監督)。第1代表決定戦では右腕・竹田和真(早大)が5回無失点に抑え、ベテラン左腕・三宮舜(慶大)らが持ち味を発揮。好リードでけん引した正捕手・森川大樹(法大)の貢献度も絶大だった。

「投手陣が粘ってくれるので、野手陣も応えようと、良い循環になった」と、森主将が語るように、二次予選では3試合で23得点、3失点と追求してきた野球を実践できた。また、どんなステージでも平常心を貫き「普段どおり」がチームの合言葉だった。主将・森は言う。

「(都市対抗を逃した期間は)つらい、悔しい3年間でした。心が折れそうなときもありました。皆で前を向いて、苦しい時期を乗り越えてきた。都市対抗本戦でも、いつもどおりの全力プレー、明治安田生命の野球を気負うことなくやりたい。自分たちはまだ、発展途上のチーム。常勝を目指していきたいです」

 東京第1代表を記念した撮影では、多くの同社幹部が集合写真に収まった。会社一丸でつかんだ都市対抗出場。本大会の舞台となる東京ドームも、熱狂の大応援団が後押しする。

文=岡本朋祐 写真=BBM