二死三塁のピンチで登板



中大・東恩納[左]は駒大2回戦でリーグ戦初勝利を挙げ、ウイニングボールを手にする。中大・清水監督[右]から絶対的な信頼を得たと言っていい[写真=矢野寿明]

 中大は開幕カードの駒大1回戦を落としていた。勝ち点奪取へ後がない2回戦も、劣勢の展開だった。3回表に2点を先制され、なおも二死三塁のピンチ。この場面で中大・清水達也監督は1年生・東恩納蒼(沖縄尚学高)を二番手として投入した。東恩納は迎えた打者を空振り三振に仕留め、窮地を脱した。

 4回以降もリズムの良い投球で、追加点を与えない。東恩納の抜群のテンポが打線に反撃ムードをもたらせ、6回裏に3点を挙げて、一気に逆転に成功した。東恩納は9回まで投げ切るロングリリーフ。6回1/3を3安打無失点に抑え、リーグ戦初登板を初勝利で飾った(4対2)。78球を投じて、持ち味のスライダーも威力を発揮、7奪三振をマークした。

「ミスターゼロ」は健在だった。

 昨夏の沖縄大会から甲子園3回戦(対創成館高)で失点するまで、47回1/3を連続無失点。チームの8強進出の原動力となった。勢いは止まらない。高校日本代表として出場したU-18W杯(台湾)では、プエルトリコとのスーパーラウンド第2戦で5回参考ながら「完全試合」を達成。初の世界一に大きく貢献した。大学でもスコアボードに「0」を並べた。


ダイナミックなフォームから威力あるストレート、得意球であるスライダーを投げ込む。大学生を相手にしても、決して臆することはなかった[写真=矢野寿明]

 東恩納は当初、大学進学を希望していたが、世界舞台での快投により一転、プロ志望届を提出。高卒プロに挑戦したものの、指名漏れに終わっている。4年後のドラフト1位を目指して中大進学。開幕カードからベンチ入りし、チームの救世主となった。

「戦国東都」で逸材ルーキーが圧巻のデビュー。甲子園のヒーローが新たなステージ・神宮でも大物ぶりを発揮した。清水監督は「オープン戦から安定した投球をしている」と語り、ベンチの信頼を得て、今後はさらに大事な場面で投入されることが予想される。東恩納は「チームを勝たせられるピッチングがしたいです」と意気込みを語った。スーパー1年生のピッチングから目が離せない。