主力離脱で奮闘する助っ人



パンチ力のあるバッティングが魅力のカリステ

 混戦のセ・リーグで踏みとどまれるか。再浮上を狙うのが中日だ。

 球団史上初の2年連続最下位からの巻き返しを誓う今季はスタートダッシュに成功。4月5日の広島戦(マツダ広島)から1つの引き分けを挟み6連勝するなど、貯金を一時は最多の6に増やしたがその後は5連敗を喫するなど下降気味に。5月は4勝8敗1分で現在は借金4。主力に故障者が相次いでいるのも大きな痛手だ。開幕から「三番・三塁」で復活の兆しを見せていた高橋周平が右ふくらはぎ肉離れで4月中旬に戦列を離脱すると、巨人を退団して新加入した中田翔も右太腿裏痛で5月16日に登録抹消された。

 精神的支柱でもある高橋周、中田の穴をカバーしなければいけない中、奮闘している助っ人がいる。内外野を守り、俊足でパンチ力に定評があるオルランド・カリステだ。

 来日2年目を迎えた今季は開幕からベンチスタートが続いたが、高橋周が故障で抜けた後は三塁でスタメン起用されるようになり、中田の休養日には一塁を守る。さらに、最近は左翼での出場が続いている。5月15日の阪神戦(バンテリン)では、外野の美技でチームを救った。7回二死で、坂本誠志郎の左中間に飛んだ打球をダイビングキャッチ。マウンド上の小笠原慎之介は両手を上げ、好守をたたえていた。

 昨季に中日の一軍内野守備走塁コーチを務めていた荒木雅博氏は今年3月の週刊ベースボールの取材で、「シーズンを通してカリステが遊撃を守るとなると、内野全体が落ち着かないような気がします。個人的にはカリステは肩も強く守備範囲も広いので、中堅を練習させても面白いと思いますけどね」と外野守備の適性について言及していた。

ユニフォームを泥だらけで全力プレー


 打撃でも貢献度が高い。4月17日のヤクルト戦(神宮)で、0対0の6回に均衡を破る2点適時二塁打を放ち、この一打が決勝点に。同月24日の巨人戦(東京ドーム)で、初回一死一塁で左翼ポール直撃の1号先制2ラン。24イニングぶりの得点となり、2リーグ制後の球団ワーストタイ記録だった本塁打なしの連続試合も13で止めた。5月10日の広島戦(マツダ広島)では0対0の4回に左翼席へ先制の3号2ラン。マツダ広島は昨年9月1日に来日初本塁打を放つなど、通算8本塁打のうち4本塁打をマーク。抜群の相性を誇る。

 日本球界で成功をつかもうと、ユニフォームを泥だらけにして全力でプレーする姿がファンの心をつかんでいる。来日1年目の昨季は開幕から打率1割台と結果を残せず、4月の下旬から3カ月半の間ファーム暮らしが続いたが、8月の一軍昇格以降は遊撃の定位置をつかみ、打率.260と成長の跡を見せて契約延長を勝ち取った。今季は37試合出場で打率.296、3本塁打、10打点をマーク。スポーツ紙記者は「足が速いし、パンチ力もある。内外野を守れるし起用法の幅が広い。首脳陣にとってありがたい選手です」と評価する。

上位浮上へ必要不可欠


 立浪和義監督は就任3年目を迎え、低迷期脱却に向けてチーム改革を進めていた。二遊間のレギュラー格だった阿部寿樹(楽天)、京田陽太(DeNA)をトレードで放出した際は賛否両論の声が上がったが今年は二塁・田中幹也、遊撃・村松開人が成長の跡を見せ、三塁は高橋周と石川昂弥、一塁は中田。そして内外野守れるカリステが控えていることで選手層が厚くなった。

 今年の開幕前に週刊ベースボールのインタビューで立浪監督は、「ずっとBクラスが続いて低迷しているチームですから、やはり選手を変えていかないと変わっていかない。それは1年目にすごく感じたことです。その中でもすぐに結果を出していかなければならないのですが、変えたからと言ってそんなにすぐに結果が出るものでもない。でもそこは批判覚悟でね。結果が出なければ言われるのは当然ですし、それは監督の責任ですから。今年は腹をくくってやりますよ」と語っていた。

 カリステは「三番・左翼」でスタメン出場した5月17日のDeNA戦(横浜)でも初回に左前打を放ち、先制点をおぜん立て。試合は逆転負けで最下位に転落したが、首位・阪神に4ゲーム差と団子状態が続く。攻守で飛躍的に成長している助っ人は上位浮上へ、必要不可欠な存在だ。

写真=BBM