台頭してきてほしい左腕



今季初先発の4月27日DeNA戦で勝利を挙げた横川だったが……

 一軍昇格に向け、アピールできなかった。巨人・横川凱が5月17日のイースタン・リーグの西武戦(カーミニーク)に先発したが、4回8安打5失点で降板。毎回失点と内容も伴わなかった。初回一死三塁から西川愛也の中前適時打で先制を許すと、2回は二死一、二塁で川野涼多に2点左中間適時二塁打。3回は渡部健人に中越え適時二塁打、4回もモンテルに右前適時打と立ち直れないままマウンドを降りた。

 巨人で先発枠に当確ランプがともっているのは戸郷翔征、山崎伊織、菅野智之、堀田賢慎の4人。ソフトバンクからトレードで加入したサブマリン右腕・高橋礼は19日の広島戦(マツダ広島)で1回4失点KOを喫し、登録抹消された。残りの2枠を巡り、赤星優志、井上温大、ファームで調整中のフォスター・グリフィンが有力候補となるが、能力を考えると台頭してきてほしいのが横川だ。

 大阪桐蔭高では甲子園に4度出場し、全国制覇3度。「大阪桐蔭最強世代」と形容されるが、エリート街道を歩んできたわけではない。同級生の根尾昂(中日)、藤原恭大(ロッテ)、柿木蓮(日本ハム)は中心選手だったが。横川は三番手投手。3年夏の3回戦・高岡商高戦で現在のチームメートでもある山田龍聖との投げ合いを制し、5回9奪三振1失点で白星を飾ったが、準決勝や決勝のマウンドには根尾、柿木が立っていた。

2度の育成落ちを経験


 ドラフト4位で入団した巨人でも2度の育成落ちを経験。プロで生きる道を模索していたが、2022年の秋に投球フォームの改造に踏み切ったことで道を切り拓く。190センチの長身を生かし、グラブを高く上げ、その反動で左手を振り下ろす体の使い方で球に力強さが増し、130キロ台だった直球の球速が140キロ台後半に上がった。支配下復帰した昨年は春先から開幕ローテーションに入り、4月23日のヤクルト戦(神宮)で5回2失点と粘りプロ初勝利。20試合登板で4勝8敗、防御率3.95と大きく前進した。

 今年はオープン戦で3試合登板して無失点と好調を維持していたが、他の投手との兼ね合いで開幕は二軍スタートに。4月中旬に一軍昇格すると、救援で3試合連続無失点と好投し、先発登板した27日のDeNA戦(横浜)は5回3安打無失点で今季初勝利。このまま白星を積み重ねたかったが、5月6日の中日戦(バンテリン)は制球に苦しみ4回2失点で黒星。リズムを作れず、登板後にファーム降格が決まった。

2度の最多勝を獲得した内海



巨人の左腕エースとして通算135勝を挙げた内海

 巨人は先発で一本立ちする左腕がなかなか出てこない。横川が先発ローテーションに定着すれば、大きなプラスアルファになる。長身左腕でシルエットが重なるのがかつて、エースとして活躍した内海哲也(現巨人一軍投手コーチ)だ。

 内海は2度の最多勝を獲得するなど、現役時代にプロ通算135勝をマーク。身長186センチの長身から投げ下ろす直球は145キロ前後と決して速い部類ではないが、球速表示以上の速さを打者が感じていた。スライダー、チェンジアップとのコンビネーションで07年に最多奪三振(180)のタイトルを獲得している。

 内海は入団当初から順風満帆だったわけではない。プロ1年目の04年は3試合登板で未勝利。05年は堀内恒夫元監督に才能を見出され、先発ローテーションの一角としてマウンドに上がった。26試合登板で4勝9敗、防御率5.04と悔しい結果に終わったが、翌06年から3年連続2ケタ勝利とエースへの階段を上る。

 当時について、「とにかく、僕が心配するくらい使ってもらったので。2年目でしたが大したピッチングをしていないのに、まだ投げさせてくれるのか、と。『堀内さんは大丈夫かな』とこっちが心配になるくらい、我慢して使ってくださいました。もちろん、ありがたいことですし、結果として返さないといけないという気持ちはメチャクチャ持っていたんですけど、いかんせん技術がなくて。八方ふさがりという状況でした。そんな状況でも一軍のマウンドに上げてくれた恩はすごくあります」と週刊ベースボールのインタビューで語っていた。

 もがき苦しむ時間は成長への糧となる。横川も内海の系譜を継ぐ左腕エースになれるか。もう一度はい上がってきてほしい。

写真=BBM