あらゆる打順に対応する勝負強い打撃



パンチ力あるバッティングが日本ハムで開花した郡司

 快進撃を繰り広げる日本ハム。5月26日の楽天戦(エスコンF)は敗れたが2カード連続勝ち越しを決め、貯金7で交流戦を迎える。その立役者となっているのが郡司裕也だ。

 本職は捕手だが、三塁、一塁、左翼とチーム事情に合わせて複数のポジションを守る。4月下旬から三塁のレギュラーに定着したのは努力の賜物だ。昨年は清宮幸太郎が三塁でチーム最多の87試合に出場したが、今年はキャンプ直前の自主トレで負傷。左足関節捻挫で出遅れると、郡司は出場機会を増やすために今年の春季キャンプから三塁に初挑戦し、ノックを受け続けた。

 清宮は4月中旬に一軍昇格したが9試合出場で打率.083、0本塁打、2打点と結果を残せずファームに逆戻り。三塁のレギュラー奪取を狙った和製大砲・野村佑希も開幕から打撃の状態が上がって来ない中、郡司がポジション争いで一歩前に出た。三塁の守備はまだまだ不慣れだが、39試合出場で打率.268、4本塁打、21打点。得点圏打率.351と幾度も殊勲打を放ってきた。一番、二番、三番、五番、六番とあらゆる打順で対応し、勝負強い打撃で結果を残している。

 4月29日のオリックス戦(エスコンF)では0対0の8回二死二塁で、左前に抜ける決勝打を放ち、勝利に大きく貢献。5月15日の西武戦(エスコンF)では、貴重な一発で思わぬアクシデントも。4点リードの3回無死一塁で隅田知一郎の直球を捉えた打球が右翼ブルペンに設置されたカメラに直撃して損壊。自己最多の4号2ラン。投球動作を撮影するカメラは約30万円相当するという。「給料から引かれていないか心配ですね。ベンチ帰ったらすぐに『あれ30万だぞ』って言われて。おめでとうが先だろうと思いましたけど。すみません、弁償します!」とスタンドをわかせた。修理代は球団が払うこととなったが、勝利に導く「破壊弾」なら懐は痛くないだろう。

トレードで変わった野球人生


 トレードで野球人生が変わる。郡司は象徴的なケースと言えるだろう。中日で一軍定着できず、山本拓実と共に日本ハム・齋藤綱記、宇佐見真吾の交換トレードで昨年6月19日に移籍。「中日ドラゴンズで3年半、応援していただいた、ファンの皆さまには本当に感謝しています。ドラゴンズでは結果が出せずに申し訳ない気持ちでいます。結果を出すことができませんでしたが、このトレードをきっかけに新天地で、心機一転頑張ります」と中日の球団公式ホームページを通じ、日本ハムでの活躍を誓っていた。

 そして、有言実行の働きを見せる。昨季は移籍後に自身最多の55試合に出場し、打率.254、3本塁打、19打点をマーク。中日ではノーアーチだったがパンチ力を見せる。今季は早くも4本塁打と自己最多を更新。他球団のスコアラーは「中日でもファームで格の違いを見せていましたし、今の活躍に驚きはありません。タイミングの取り方がうまく、広角に強い打球を打てる。まだまだ打撃の精度を高められますし、打率3割、20本塁打をクリアできる力は持っている。郡司が打つと、打線全体が勢いに乗るので気分よく打たせたくないですね」と警戒を強める。

手強いチームに変貌した日本ハム


 新庄監督が就任し、2022、23年と2年連続最下位に沈んだ日本ハムだが、個々の選手のレベルが底上げされ、攻守で精度が上がっている今季は手強いチームに変貌している。野球評論家の伊原春樹氏は開幕前に、日本ハムの浮上を予告していた。

「日本ハムは昨年、1点差試合に17勝31敗と大きく負け越した。接戦で1点をめぐる争いに勝ち切れなかったが、戦力層の薄さが原因だった。だが、今年は練習試合やオープン戦での戦いぶりを見ていると、底力がアップしているように感じる」

「特に日本ハムは中日以上に上位進出する可能性を感じる。新庄監督からは『監督にとって一番大事なことは何ですか?』など質問攻めにもあった。監督を筆頭に前に、前に、という貪欲さがにじみ出る」

 郡司は中学時代に千葉市リトルシニアに所属し、3年春には全国大会優勝を成し遂げている。仙台育英高では2年秋に明治神宮大会優勝、慶大でも4年秋にリーグ優勝、明治神宮大会も優勝とアマチュア時代に全てのカテゴリーで全国の頂点に立っている。日本ハムでも歓喜のビールかけを味わえるか。

写真=BBM