8月12日、一般社団法人「スポーツを止めるな」が展開している「青春の宝」プロジェクトの一環として、静岡県の藤枝明誠高校にて富樫勇樹(千葉ジェッツ)が同校の試合を解説している映像のサプライズ上映会が実施された。

「青春の宝」プロジェクトは、新型コロナウイルス感染症の影響で最後の試合を待たずして引退してしまった選手たちの『思い出の試合』に、トップ選手などによる本格的な解説と実況を付けてプレゼントするプロジェクト。

 7月には、宮城県石巻工業高校ラグビー部の試合を、元ラグビー日本代表の五郎丸歩と野澤武史氏が解説した映像の上映会が実施された。藤枝明誠高校での上映会はこれに続く、同プロジェクトにおける2つ目の上映会となる。

 バスケットボールキング編集部は、この上映会の約2週間前に行われた収録の現場に潜入。高校生たちの「青春の宝」の解説に臨む富樫の様子を取材した。

◆■緊張しながらも見事な解説を披露した富樫

 収録日当日、何度か経験があるとはいえ、決して慣れているわけではない“解説”の役割を前に「緊張しています…」と語っていた富樫。しかし、いざ試合が始まればよどみない見事な解説を披露した。

 富樫が解説を担当したのは、今年2月に開催された東海新人大会静岡県予選の決勝、藤枝明誠高校対飛龍高校の一戦だ。追いつ追われつの大接戦となったこの試合、最終的には試合時間残り9秒に飛龍高校が決めた3ポイントが決勝点となり、56−54で勝利を収めている。

 試合中、富樫は高校生たちのプレーに対する称賛はもちろん、トッププレーヤーならではのアドバイスも口にした。また、実況を担当する松本圭祐アナウンサーとの掛け合いの中で、Bリーグとの差異やアメリカで過ごした自身の高校時代の思い出話なども披露。時には、高校生たちが繰り出すビッグプレーに感嘆の声を挙げることもあった。

 強豪校同士の対戦とあって、試合内容はハイレベルなもの。富樫自身も解説中に自身の姿をコート上に投影して、「やられてる姿が想像できました」と苦笑いを浮かべるなど、国内最高峰の選手も舌を巻くプレーが散見された。

◆■「もし自分が高校生だったら…」取り組みに参加した富樫の想い

 収録後、メディア対応に応じた富樫は今回の取り組みに賛同した理由について以下のように語った。

「インターハイが中止となって、もし自分が高校生だったらと考えると、何かを失った気持ちになっていたと思います。3年生は今年が最後ですし、プロのように次の1年があるわけではないので」

「僕がこの試合を解説することが、彼らの助けになるかはわからないですけど、少しでも喜んでもらえたらと思います。こうして高校生の試合を見ることは多くないので、僕自身にとってもいい機会でした」

 また、高校生たちの試合の感想としては「ハードなディフェンスやそれを支える体力など、日本の高校生らしさが両チームから見れました」とコメント。富樫自身は高校時代をアメリカで過ごしたが、「アメリカに行ったことは後悔しているわけではありませんが、日本の高校でもプレーしてみたかったという気持ちもありますね。特にウインターカップの雰囲気は好きなので、すごく憧れます」と日本の高校バスケへの想いも語った。

 そして最後に、新型コロナウイルスの影響で活躍の機会を失ってしまった選手たちへ、自身の経験を振り返りつつ以下のようなメッセージを送った。

「インターハイという大きな大会が中止になって、本当に残念だと思います。それでも、このどうしようもない状況の中で決まってしまったことなので、前を向いて、次の目標に向かって頑張ってほしいです」

「僕は起きてしまったことをずっと考えすぎるのはあまり好きではありません。僕自身、昨年のワールドカップを大きな目標として頑張っていた中、合宿中にケガをして出場できなくなってしまいました。けれどそれは、どんなに悔やんでも誰かが悪いわけではありません。状況は違いますけど、今回の新型コロナウイルスの影響も誰かがどうにかできたものではないと思うので、切り替えて、新たな目標を見つけてほしいです」

◆■上映会を経て、想いを新たにする選手たち

 富樫の想いは高校生たちに確かに届いていた。12日に行われたサプライズ上映会のあと、藤枝明誠高校のキャプテンである石橋永遠は、以下のような言葉で新たな目標への意気込みを語っている。

「解説を入れていただいた新人戦の試合をあらためて見て、足りない部分を確認しました。ウインターカップ出場に向けて頑張っていこうと思います。インターハイがなくなったことで、ウインターカップはどうしても出たいです。3年生だけでなく、下級生も。この期間で練習していきたいと思います。そして、ウインターカップのメインコートに立って、富樫選手に会いに行きたいと思います」

 はたして藤枝明誠高校の選手たちと富樫勇樹の再会は実現するのか。サプライズ上映会を経て、冬に懸ける想いを新たにした選手たちの今後の活躍に注目したい。

 一般社団法人「スポーツを止めるな」では藤枝明誠高校に続く、解説実況を希望する中高生のバスケチームを募集している。募集枠は男女問わず10チーム、募集期間は9月20日だ。トッププレーヤーが自分のチーム試合を解説するという、夢のような体験がしたいチームは「スポーツを止めるな」の公式HPをチェックしてほしい。

 また「スポーツを止めるな」では、今回の「青春の宝」プロジェクトを含む、学生アスリートや若いアスリートを支える社団の活動を支援するクラウドファンディングも実施中。アスリートの未来を想う支援の輪は、今なお広がり続けている。