インタビューした選手に「現在成長著しい選手」「ライバルだと思っている同世代選手」「ベテランから見て将来が楽しみだと思っている若手」「若手から見て憧れているベテラン」などを指名してもらい、リレー方式で掲載するこの企画。車いすバスケットボール選手の個性的なパーソナリティーに迫っていく。

文・写真=斎藤寿子

2018年に男子U23日本代表としてデビューした宮本涼平(LAKE SHIGA BBC)。Vol.9で登場した同い年の髙柗義伸(栃木レイカーズ)らとともに、東京パラリンピック後に日本での開催が予定されている男子U23世界選手権での活躍が期待されている一人だ。さらに今年度には東京パラリンピックを目指すシニアの強化指定選手にも選出された。小・中学校時代にはJリーグ・京都サンガF.C.のジュニアユース(U−15)で活躍し、中学3年時には高円宮杯にも出場した経験を持つなど、運動神経の良さは折り紙付きだ。そんな将来が有望視されている宮本にインタビューした。

◆刺激を受けたアメリカでのキャンプ

 
 宮本は小学4年から続けていたサッカーをやめ、高校では自転車部に入部した。サッカーで鍛えた脚力を買われ、入部してすぐに上級生たちと同じメニューを課されたという。ところがその1カ月後のこと、険しい峠を走行中、下り坂で猛スピードのままカーブに入った宮本は激しく転倒。脊髄を損傷する大ケガを負い、車いす生活となった。

 それでも周囲が心配するほどに大きく落胆することはなかった。

「あんなに大事故だったのに生きているんだから、何か意味があるんだと思うよ」。そんなふうに言ってくれた両親の言葉が、気持ちを前向きにしてくれていたのだ。

 入院して半年が経とうとしていた頃、新たな世界に飛び込んだ。車いすバスケだ。もともと“サッカー少年”だった宮本は、チームスポーツがしたいと考えていた。そしてリハビリで経験したスポーツの中で、最も魅力を感じたのが車いすバスケだった。

 まだ入院中に外出届を出し、地元京都のクラブチームの体験会に参加。初めて乗った“バスケ車”(競技用車いす)は日常用とはまったく違い、軽くて簡単にクルクル回り、乗っているだけで楽しかった。退院後、すぐにチームに加入し、車いすバスケに熱中した。

 宮本がトップステージを目指して、本格的に取り組むようになったのは、車いすバスケを始めて2年後の2017年のこと。その年の夏に参加したアメリカの大学が主催するキャンプがきっかけだった。

「アメリカでは一人一人がみんな個性を出してプレーをしていて、見ているだけでとても楽しかったんです。自分がプレーすることだけでなく、観客を楽しませるようなバスケをしている感じでした。そして選手同士でよく褒め合い、称え合っていたんです。なんだかスポーツの原点を思い出させてくれた感じがして、自分もこの選手たちとまたどこかでプレーできるくらいの選手になりたいと思いました」

◆代表落選で気づかされた闘争心の重要性

 帰国後の宮本は、車いすバスケにより真摯に向き合うようになった。すると翌18年3月のドバイ遠征では、初めてU23日本代表にメンバー入りし、国際大会デビュー。さらに上を目指してトレーニングを重ね、8月のジュニア合宿に挑んだ。それは3カ月後の「北九州チャンピオンズカップ」(北九州CC)に出場するU23日本代表の選考会でもあった。満を持して臨んだ合宿に、大きな手応えをつかんでいた。しかし、結果は落選。12人のメンバーに入ることはできなかった。

 自信があっただけに、受けたショックは大きかった。しかし、振り返ると反省する点があった。U23日本代表の京谷和幸HC(今年からシニアの日本代表HCを兼任)が最も重視しているのは闘争心を出して戦うこと。それを胸の内に秘めたまま、表にはあまり出してはいなかった。

 もちろん二の轍を踏むつもりはなかった。その後は常に闘争心を心がけ、全力プレーに邁進。すると翌19年、北九州CCのメンバー入りを果たし、全試合に出場。2年ぶりの優勝に貢献した。

「やっぱり優勝するって最高だなと思いました。みんなで喜びを分かち合ったあの瞬間は、今も強く心に残っています。僕自身は緊張で自分のプレーが出せず、あまり良くなかったりもしたのですが、それでもオーストラリア戦で初得点を決めたら、ベンチのみんながすごく盛り上がってくれたんです。これは個人競技では味わえない喜びですよね」

 この北九州CCの1カ月後に、シニアの選考合宿に招へいされ、2020年度の強化指定選手に選出された。車いすバスケ歴5年にして、日本のトップ選手の仲間入りを果たした宮本。彼に寄せられる期待の大きさがうかがい知れる。

 目標とするプレーヤーは、アメリカでのキャンプで目にしたジェイソン・ネルムズ。2004年アテネ、12年ロンドンとパラリンピックに出場した元男子アメリカ代表だ。

「ノールックパスなんかお手の物といった感じの広い視野を持った技ありのプレーに、観客は大盛り上がりでした。僕も見ていて鳥肌が立ったくらいです。彼のようなプレーで観客を楽しませることができるプレーヤーになりたいと思っています」

 サッカー時代にはウイングバックとして活躍した宮本は、視野の広さと予測判断の速さには自信がある。その強みを車いすバスケで発揮し、さらに磨いていくつもりだ。そして誰にもないプレースタイルを築きあげ、唯一無二の存在となる。

(Vol.11では、宮本選手が注目している選手をご紹介します!)