米イリノイ州シカゴで先月29日、13歳の少年が警官に射殺される事件があり、シカゴ警察は15日、警官のボディーカメラの映像を公開した。

映像では、シカゴ西部のリトル・ヴィレッジ地区で、警官が「(武器を)捨てろ」と怒鳴った後、ラティーノ系のアダム・トレードさん(13)の胸に向けて1発発砲した。

トレードさんは発砲された瞬間、両手を上げており、武器は所持していなかったように見える。ただ、その直前に木製フェンスの後ろに何かを捨てたようにも見えるほか、撃たれて倒れた場所の近くで警官たちが拳銃1丁を見つけた様子が記録されている。

発砲した警官はこれまでのところ、犯罪行為には問われていない。

地元紙シカゴ・サンタイムズによると、この警官は34歳の男性で元軍人。2015年に警官になり、職務をめぐり苦情を受けた記録はない。

トレードさんの家族の代理人のアディーナ・ワイス・オーティズ弁護士は15日、記者会見で、トレードさんは銃撃された時には銃を持っていなかったと述べた。

同弁護士はまた、銃撃を受ける直前に武器を所持していたかどうかは「100%の確信」をもって断言はできないと話したと、シカゴ・サンタイムズは伝えた。

シカゴのロリ・ライトフット市長は映像の公開前に、市民らに冷静を保つよう呼びかけた。市内の商店の一部は、窓ガラスに板を張って騒動に備えた。

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今月11日には、ミネソタ州ミネアポリス近郊で、警官が黒人男性ドーンテ・ライトさん(20)を射殺する事件が起きている。

ライトさんの事件は、ミネアポリスで昨年5月に黒人男性ジョージ・フロイドさんを殺害したなどとして起訴された、元警官デレク・チョーヴィン被告の裁判が開かれる中で発生。激しい抗議活動を引き起こしている。

ボディーカメラの映像

公開された映像では、警官が警察車両から飛び出し、中南米系のトレードさんを走って追跡。暗い裏通りで追いついた。付近では別の容疑者が押し倒された。

警官は「警察だ! 止まれ! 今すぐ止まれ! 両手! 両手! 両手を上げろ!」と叫んでいる。

トレードさんは振り返り、両手を上げたが、銃は視認できない。警官は「捨てろ」と怒鳴り、銃を発砲した。警察車両を飛び出てから19秒後のことだった。

付近の監視カメラの映像には、警官に追いつかれたトレードさんが、フェンスのすき間に何かを投げ落としているような様子が記録されていた。

警官のボディーカメラの映像では、発砲後に木製フェンスの裏で、警官らが懐中電灯の光を拳銃に当てている。

発砲した警官は救急車を要請。トレードさんに「しっかりしろ」と呼びかけた。他の警官らが駆けつけ、蘇生術を施した。

車への発砲をきっかけに

検察によると、トレードさんはルーベン・ローマン容疑者(21)と一緒にいた。ローマン容疑者は通行車両1台に向けて発砲し、警官が出動。今回の死亡事件へとつながったとされる。

地元メディアによると、ローマン容疑者は、武器の加重不法使用、銃の危険発砲、子どもを危険にさらした疑いで訴追され、11日に裁判所に出廷した。

シカゴ警察の職務を検証する当局は15日、今回の警官のボディーカメラ映像と監視カメラ映像を公開。逮捕報告書や、警官の出動につながった発砲音の録音も公表した。

市長と家族が平静を呼びかけ

シカゴのライトフット市長は、映像公開の直前に記者会見を開催。見るのが「大変苦しい」映像だと述べた。

「率直に言って、私たちはアダムの力になれなかった」と市長は話した。「これ以上、市内で若者を1人たりともこのように失うことがあってはならない」。

市長は市民に向かい、平静を保ち、捜査の終結を待つよう訴えた。

「私たちの街には警察による暴力と不法行為の長い歴史がある」

「今回の事案について審判を下すだけの情報はまだ得ていないが、多くの住民の心にまたしても相変わらずの怒りと痛みがこみ上げているのはもっともだ」

トレードさんの家族も、平静を呼びかけた。

家族は声明で、「抗議活動が今日も予定されているという報道を耳にした。そうした動きについて直接は知らないが、私たちはこの街のために祈り、みんなが落ち着いて平和的にアダムの思い出を大切にし、改革推進のため建設的に動いてくれることを願っている」とした。

地元紙シカゴ・サンタイムズは、トレードさんが撃たれた現場はストリートギャング団「ラテン・キングス」の勢力地域にあることから、シカゴ警察本部は警官らへの報復を警戒していると報じた。