グーグルとオラクル、クラウドに新たな投資 国内市場の動向活発化

グーグルとオラクル、クラウドに新たな投資 国内市場の動向活発化

 大手ベンダーのクラウドビジネスにおける日本への投資が加速している。日本オラクル(フランク・オーバーマイヤー社長CEO)は5月8日、「Generation 2(Gen2)」と銘打つ同社にとっての次世代クラウドインフラを備えた「Oracle Cloud」東京リージョンを開設した。また米グーグルのグーグル・クラウド部門(トーマス・クリアンCEO)は5月14日、「Google Cloud Platform(GCP)」の大阪リージョンを開設した。グーグルや米IBMは今年春のそれぞれのグローバルイベントで、企業のワークロードの8割がクラウド化されていないことに相次いで言及。デジタル変革のための新たなIT投資に伴うクラウド需要とは別に、既存システムのクラウドシフトにも巨大な需要が存在するわけだが、後者の需要はむしろこれからが本番だという見解を示している。この潜在的市場をいかに攻めるのか。各有力プレイヤーの具体的な取り組みが日本市場でも活発化してきた。(本多和幸)

●「残り8割」巡る大手ベンダーの争いが激化


 オラクルが自前のデータセンター(DC)の運用をついに日本でも開始した。後発のクラウドビジネスで巻き返しを図る起爆剤としたい考えだ。当面、東京リージョンで提供するサービスは、コンピュート(ベアメタルやHPC、GPUを含む)、ストレージなどで構成されるIaaS、ベアメタルサーバー上で提供するデータベース(DB)システム「Exadata Cloud」、自律的な運用管理を実現するDB「Autonomous Database」、エンタープライズ対応のKubernetesサービスなど約30種類。半年以内には大阪リージョンも開設する予定で、国内でDRを完結できるようにするという。
 東京リージョンは、オラクルがGen2 Cloudと呼ぶ次世代アーキテクチャーでインフラを構築している。昨年10月の年次イベント「Oracle OpenWorld 2018」で、同社のラリー・エリソン会長兼CEOはGen2 Cloudについて初めて詳細を公表。既存のクラウドについて、「エンタープライズITのミッションクリティカルなワークロード向けにはセキュリティと信頼性の面で課題がある」とし、Gen2 Cloudがその課題を解決し、既存ワークロードのクラウド移行を加速させる技術であると強調した。
 Gen2 Cloudの具体的な特徴としては、ユーザーが利用できるクラウド環境と、ベンダー側がそれを管理・制御する環境を物理的に違うマシンに分離。また、オラクルが競合に対する差別化要素として前面に押し出すAutonomous Databaseは“Gen2 Cloudネイティブ”なサービスであり、稼働しながらセキュリティの脅威の検知や排除を自律的に行い、システムを止めることなくセキュアに運用できるという。
 東京リージョンの開設にあたって、日本オラクルのオーバーマイヤー社長CEOは、「間もなく開設する大阪リージョンを含め、Gen2 Cloudベースのサービスを日本市場で提供できるようになることで、AWSやマイクロソフトなど先行するベンダーに対して大きな違いを提供できる」とした。特にAutonomous Databaseによる自動化が、導入期間の短縮や運用コスト削減、データ保護、既存ITのクラウド移行の容易性などの観点で競合に対する差別化要素になるとの見方を示した。
 Oracle Cloudの国内拠点としては、2016年に米オラクルと富士通がクラウドビジネスで戦略的提携を発表し、17年3月から富士通の国内DCを利用していた。ただしこれはGen 2 Cloud対応ではなく、販売チャネルが富士通に限定されていたこともあり、オラクル自身が運用する新たなDCの稼働が国内のパートナーやユーザーからも強く求められていた事情がある。その意味でも今回の東京リージョン開設はOracle Cloudの拡販の追い風になる可能性は高い。ただし、前世代のOracle Cloudのインフラは随時Gen2仕様にアップデートされる計画とのことで、富士通DCのインフラも近くGen2仕様にすべく富士通側と調整を進めるという。
 また、NECなど複数のパートナーが、Oracle Cloud専用ハードウェアによるオンプレミス型クラウドサービス「Cloud at Customer」を利用し、自社DCからOracle Cloudを提供しているが、Cloud at CustomerのGen2対応も19年中をめどに進める方針で、これに伴いパートナーのDC経由のOracle CloudもGen2化していく見込みだ。
 東京リージョンの開設に伴い、販売体制も強化する。日本オラクル社内にクラウドの専任営業組織を新設したほか、新規パートナーの獲得にも力を入れる。現状、クラウドビジネスにおけるパートナーは、既存のSIパートナーで330社、クラウドビジネスで新たに協業したクラウドインテグレーターなどが50社程度だというが、年内にそれぞれ40社増、25社増の計65社増を目指す。
 一方、16年11月に東京リージョンを開設したグーグルは、GCPの大阪リージョンの正式運用を開始した。グローバルで20番目のリージョンということになる。大阪リージョンでは、東京リージョンと基本的に同等のサービスを提供している。また、これに伴いすでに「G Suite」では実現していた24時間365日対応の日本語サポートをGCPにも拡大したという。
 競合のAWSは昨年2月に大阪リージョンを開設しているが、「ローカルリージョン」という特殊な位置付けで、東京リージョンと組み合わせたDRでの利用が基本だった。しかし、GCPの大阪リージョンは位置付けが異なる。DR用途も視野には入っているものの、「関西や西日本地域でミリ秒単位のレスポンスが必要なお客様は大阪リージョンが有効」(グーグル・クラウド・ジャパンの阿部伸一・日本代表)として、低遅延が求められるシステムをクラウドで運用するというニーズに対するカバレッジを広げた形だ。
 大阪リージョンの運用開始に伴い来日した米グーグルのトーマス・クリアン グーグル・クラウド部門CEOもそれを裏付けるように、「日本のユーザーは、高度で信頼性の高いアプリケーションを東京と大阪の二つのリージョンで実行し、DRも実現できるようになる。グーグル側のセールス、サポートなどの組織やパートナーエコシステムも強化していく。エンタープライズグレードのテクノロジー、サービスを日本でも提供していくというのがグーグルのメッセージだ」とコメントしている。
 さらにクリアンCEOは、今年4月に開いたグローバル年次イベント「Google Cloud Next '19」で発表したKubernetesベースのマルチクラウド/ハイブリッドクラウド対応プラットフォーム「Anthos」がGCPの大きな差別化要素になると改めて強調。本番環境でコンテナを活用する事例はまだまだ少数派だが、阿部日本代表も、「われわれが考えていたよりもコンテナやAnthosに対する反響は大きく、エンタープライズITのクラウド移行を強力に後押しできると考えている」と話した。


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