5月30日、「arrows」シリーズなどのスマートフォン(以下、スマホ)を展開するFCNT(旧富士通コネクテッドテクノロジーズ)が民事再生手続きを開始した。同社は主に高齢者や子どもなど初心者層をターゲットにしたスマホでシェアを稼いでいた。しかし、円安の進行や半導体不足による原価の高騰によって携帯端末事業の収益・資金繰りが悪化した。5月15日には同様の層を狙う京セラが個人向けスマホ事業からの撤退を発表したばかり。スマホ業界の再編が進んでいる。家電量販店・ネットショップの実売データを集計する「BCNランキング」で、その背景を探る。

 FCNTの5月4週のメーカー別販売台数シェアは11.2%と、Google、シャープ、SAMSUNGに次ぐ4番手。4月には新生活需要を取り込み、3週には13.5%までシェアを伸ばしていた。同社の売れ筋「arrows We」は2022年のAndroidスマホのシリーズ別年間販売数で「Pixel 6a」や「OPPO Reno5 A」などを抑えての首位。初心者層を狙うニッチ戦略は一定の成功を収めていたかに見えた。しかし、端末自体が低価格であることに加え原価の高騰などの環境変化が収益を圧迫。経営破綻に追い込まれた。
 FCNTは「携帯端末の製造・販売事業については、現時点において具体的なスポンサー支援の意向が表明されていない中で事業を継続することは極めて困難」として、「本日(5月30日)以降速やかに事業を停止させていただくことを予定」と表明。3大キャリアはいずれも販売・サポート体制を維持することを発表しているものの、今後のシェア下落は免れないだろう。
 5月のAndroidスマホ市場では、Googleの躍進が目立った。シェアは5月2週に29.6%まで急上昇。3週には32.5%と1月1週以来の3割超えを果たし、4週には33.8%と今年最高を記録した。好調の要因は5月11日発売の新製品「Pixel 7a」。「Pixel 6a」で確立した人気を引き継いだことに加え、NTT docomoが2019年の「Pixel 3a」以来に同シリーズを取り扱ったことも寄与した。Androidスマホ市場ではしばらくGoogle一強の状態が続くとみられる。こうした、2位以下の各社が苦戦を強いられる環境でFCNTは弾き飛ばされてしまった。
*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などの実売データを毎日収集・集計している実売データベースで、日本の店頭市場の約4割(パソコンの場合)をカバーしています。
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