“お金のことはあまり話題にしない”のが日本文化…。でもこれからの時代を生き抜くために「マネーリテラシー」は必須とされます。お金の教育は早ければ早いほど良いというのは税理士の大河内薫さん。お金教育の義務教育化を掲げ全国の子どもたちに授業を行っています。今回は小学生への教育に続き、「中高生へのお金教育について」、伺ってきました。

この記事のポイント

  • 中高生へのお金教育は何からはじめる?
  • 中高生にお金の仕組みを体感させる方法
  • 教育費や親子の学びで、マネーリテラシーを高めていく

中高生へのお金教育は何からはじめる?

アルバイトも始める年頃で、
まったくお金の知識がなかったら?

中高生になると、小学生よりもおこづかいの額がアップしますし、親のいないところで1人で使うことも増えてくるでしょう。高校生ではアルバイトを始める子もいますし、さらに大学生になれば、学生用のカードを持つことも。
自分でお金を扱うようになるのに、お金のことだけなんの練習もしないで社会に放り投げられるのが、今の日本の現状です。学ぶタイミングがないんです。

だから、初めての給料をもらった後、いろんな罠に引っかかってしまうことがあります。
かわいいキャラクターがリボ払いの宣伝をしていればみんなが使っているように思ってしまうし、日本では一般的な貸与型の奨学金も借金には変わりありません。
リボ払いは利率や過払いの問題を見ていると、地獄への片道切符に十分なりうるものです。
またお金に疎い学生への詐欺も巷で横行していますし、引っかかってしまったら一発で人生を“詰んで”しまうことになりかねません。

「お金は貸すな」程度の小言だけで、お金についてまったく教育をしないで社会に放り出して本当に大丈夫でしょうか? 不安になりますよね。

お小遣い、「貯めておきなさい」
はもうNG?

お小遣いのあげ方も、中高生になれば工夫や仕掛けを入れたいところです。「貯めておきなさい」も言って悪いことではないですが、実際問題として「貯める」ことだけでは将来の生活防衛はできないですよね。これはまた大人が学ぶべき問題でお話しします。
小学生と同じく、中高生へのおこづかいは現金であげるのが基本ですが、ICカードでも悪くはありません。でも大きな金額になるほど必ずお金は見せた方がいいと思います。お金を変に怖がらない大人に育てるためです。

知り合いが実際に親に取られていた方法なのですが、月末におこづかいの残高の何%かを、次の月にあげるという取り決めをしていたそうです。つまり利息ですね。ここでたくさん使ってしまうと翌月もらう額が少なくなりますし、多ければ複利でどんどん増えていきます。これだと、利息と複利の概念を覚えていけます。これこそ自然なお金教育だといえます。

中高生にお金の仕組みを体感させる方法

メルカリも活用して
商売を学ぶ

今あげたおこづかい方式では、残高が多ければいいので、例えばメルカリをやって残高を増やすというのもアリにしてみるのもいいでしょう。メルカリは、お母さんお父さんと小学生のうちから一緒にやるのも楽しいはずです。

若い起業家と話していると、「商売の基本はメルカリから教わった」と言ってはばからない人がいます。確かにそうなんですよね。メルカリでは、お金がどういう流れになっているかを小さい規模で再現できるんです。
例えば「買うときにちょっと高くても、メルカリで売れるなら安く買ったのと一緒」と中高生でもリセールを考えるようになったりもします。安く買って高く売るのは商売の基本です。

メルカリも小学生の頃は親のお手伝い程度だったものが、中高生になればもう親と一緒に、もしくは親の許可のもと1人でもできるようになるでしょう。
高校生になればアルバイトを始める子もいますが、もしかしたら今の時代であればメルカリの方が割りがいいから、アルバイトはしないという子もいるかもしれません。

親世代、祖父母世代はつい「働くとは汗水垂らすことだ」と思うかもしれませんが、こういったお金の稼ぎ方も労働だと認めることが大事かもしれませんね。人とコミュニケーションを取らなければいけないですし、作業も発生します。仕入れからやる場合は目利きも必要で、それは仕事となんら変わらないわけですから。

中高生なら、株式投資の話もわかるようになる

中高生なら、投資の話をし始めてもいいと思います。例えば、不動産投資はするしないにかかわらず、こんな商売があるんだよと教えるのに子どもでもわかりやすいですね。また、なぜ株があるのかや、どうして株価が上がっていくのかも教えたらいいと思います。株式について順序だてて教えられない大人は多いです。こどもに教えるために親も学ぶべきで、自信がない場合は投資系の入門書のベストセラーを買って読むのが手っ取り早く、おすすめです。高校生であれば、そうした本を読む力があるので、一緒に読めばいい。
また、お金を払って、将来いいことがある「自己投資」についても引き続き教えてあげたらいいと思います。

稼ぐ方法は一つではないと
伝えることも大事

中高生になれば、小学生よりもなりたい職業が具体化してくるかもしれません。ここで、稼ぐ方法は一つではない、会社に勤めるだけではないことを教えてあげるべきだと思いますね。子どもたちが大人になった時、働き方はますます多様化しているはずですから。

10年後も「とりあえず就職」という流れは変わらないと思うのですが、週休3日や時短正社員などいろんな働き方がもっと出てくるでしょう。空いた時間で何ができるか、選択肢を持った人が残っていくでしょう。またすでに成熟しきった大企業よりこれから成長する企業の方がいいかもしれません。いい企業に入ることが豊かさの最高潮ではないということはもうみんなわかっていますし、お金があれば幸せかどうかという話は決着がつきつつあります。例えばアメリカでは年収が800万を超えると、それ以上増えても幸福度が変わらないと言われています。
こんな話を子どもともしながら、いろんな価値観を伝えていけたらいいですよね。

日本には恵まれた社会保障制度があって、失敗をしても飢え死にすることはありません。だからチャレンジする土台はある。「正社員こそ正義」という価値観は消えつつあると思います。
だって思い出してください、子どもの頃は土曜日も学校がありましたよね? でも今はなくて当たり前です。こうして、社会は変わっていくものです。

教育費や親子の学びで、マネーリテラシーを高めていく

教育にいくらかかっているか、教えるのもアリ

例えば私立の高校で授業するとき、「君たちに親が一体いくらお金かけているかわかる?」と聞きます。教育費には大体これくらいかかるよ、平均的な生涯年収のうちこれくらいの割合だよと言うと、素直に「高い!」という反応が返ってきます。

僕も芸術学部の出身ですが、最初は親に「お金がないから無理」と言われたんです。なので初年度は自分で学費を出しましたし、バイトもしました。これがお金と向き合うきっかけになり、「お金がないとやりたいこともできないのか」、という現実的な気付きを与えられました。

将来の夢を一緒に洗い出してみて、どんなものを叶えようとしてもお金は必要だねということを一緒に考えてみてください。人気のYouTuberになるのにもお金がかかります。

お金が関係しない瞬間はほとんどないわけで、家計を透明にして、あけすけに話す方が僕はいいと思っています。そこで遠慮を学ぶのも教育かもしれないし、自分の進路を自分で考えるためにも必要です。どこまで言うかはそれぞれかもしれませんが、何も話してあげないのは不正解に違いないと思います。

小学生からお金について親子で話をしてお金が身近なものになっていれば、中高生は、このようにお金の増やし方について考えさせる段階です。アルバイトやメルカリ、お小遣いのあげ方など身近なものから、お金の仕組みを体感させましょう。また株式投資についても理解できるので一緒に学んでも良いですね。教育費がかかってくる年代ですが、一緒に家庭のお金の使い道を考えていくのも手だと思います。

第一回 小学生こそ「お金教育」を始めるタイミング。子どもをマネーリテラシーの高い大人にするために必要なこと【税理士・大河内薫さんのお金教育】

第三回 マネーリテラシーは大丈夫?お金に漠然と不安な大人が、知っておくべきこととやるべきことを聞いてみた【税理士・大河内薫さんのお金教育】

プロフィール

大河内薫

税理士、㈱ArtBiz代表取締役。日本大学芸術学部卒。芸術分野に明るい税理士としてクリエイターや芸能・芸術系の顧客に特化した税理士事務所を経営。また、登録28万人超のYouTube『税金チャンネル』や、著書『お金のこと何もわからないままフリーランスになっちゃいましたが税金で損しない方法を教えてください』(¥1,320/サンクチュアリ出版/発行部数15万部超)など、お金や税金の知識をカジュアルに発信している。お金の教育を義務教育に導入することを目標に掲げて、小・中・高校などでも出前授業を展開。