「男の子なんだから泣かない」
「女の子はしっかりしてるから、忘れ物が少ないよね」

子どもとのやりとり、保護者同士の会話でよく耳にする言葉です。「性差別のつもりはない」「ただの日常会話」なら問題はないでしょうか。日本は「ジェンダー・ギャップ指数2021」で世界156カ国のうち120位で、主要7カ国では最下位。小学校でもジェンダー教育がはじまった今、大人の感覚は時代とズレているかもしれません。

性差別発言のSNS炎上やニュースで、「ジェンダー」という言葉目にすることも増えました。でも、家庭でのジェンダー教育については自信がない人も多いはず。そこで、助産師、性教育YouTuberとして活動し、書籍『こどもジェンダー』(ワニブックス)を発売したシオリーヌさんに「なぜ子どものジェンダー教育が必要なのか」「子どものその子らしさを守るため、保護者はどんな風に寄り添えばいい?」を聞きました。

この記事のポイント

  • これからの世の中に必要な、ジェンダー教育とは
  • 「男の子だから」「女の子だから」から、子どもたちが受け取るジェンダー観
  • 大人のジェンダー観をアップデートしよう
  • 「その子らしさを大切に」。メッセージを伝えるには

これからの世の中に必要な、ジェンダー教育とは

・ジェンダーとは、社会でつくられた性差

—なんとなく見たり聞いたりしている「ジェンダー」ですが、そもそもどういう意味でしょうか。

シオリーヌ(大貫詩織)さん(以下シオリーヌ):生物学的な性別を「セックス」と呼ぶのに対し、「社会のなかでつくられた性差」のことをジェンダーと言います。女性は料理ができて当たり前」のように、ジェンダーによって役割を分ける考え方もありますね。

—SDGs(持続可能な開発目標)の5番目の目標に「ジェンダー平等を実現しよう」があります。「ジェンダー平等」とは、性別による決めつけをなくすことになりますね。
シオリーヌさんの本のタイトル『こどもジェンダー』には、どんな意味が込められているんですか?

シオリーヌ:ジェンダーやセクシュアリティに関して、幼いお子さんでも理解してもらえるようにと思って付けました。
ひらがな・カタカナなので漢字を知らないお子さんでも自分で読めるし、もちろん親子でいっしょに読んでもらってもいいと思います。

「男の子だから」「女の子だから」から、子どもたちが受け取るジェンダー観

・ジェンダー教育の必要性

—「こどもジェンダー」を出版したのは、子どもたちにジェンダー教育の必要性を感じたからでしょうか。

シオリーヌ:子どもたちはふだん、周囲の大人の言葉かけや様々な人のふるまいから「ジェンダーロール」(編集部注:社会的・文化的に期待される性別役割のこと)を学び取っていると思うんですね。
家庭で親御さんが「男の子だから」「女の子だから」の声かけをしないよう心がけていたとしても、どこかで「ピンクは女の子の色」と覚えてきたり、「男の子なら強くあるべき」といったメッセージを受け取ってきたりします。

—ありますね。意識的にジェンダー教育の機会を持たないと、どんどんジェンダーロールの思い込みが増えてしまう可能性が……。

シオリーヌ:よく言われる「男らしさ」「女らしさ」みたいなものは、子どもたちは自然に覚えられるんですね。だからこそ、古くからあるようなジェンダー観が染みついてしまう。
その前に、世の中にはいろんなセクシュアリティの人がいることや、いろいろな生き方があることを知ってもらうことが大切だろうと考えて、今回の本の出版に至ったところがあります。

—自分たち大人の感覚が時代に合わず、間違っているのではという不安もあります。

シオリーヌ:いわゆる従来の考え方、古くからあるジェンダー観が間違っていると思っているわけではありません。ただ、「女の子だからこう」みたいな決めつけをすると、服でも習い事でも選択肢が少なくなってしまいますよね。子どもたちの視野が狭くならないように、幼いときから働きかけが必要だろうなと考えています。

大人のジェンダー観をアップデートしよう

・日本のジェンダー教育の現状

—小学校の授業でジェンダー教育の機会も生まれつつありますが、大人世代のジェンダー観の影響がまだまだ大きそうですね。

シオリーヌ:親御さん世代もそうですし、おじいちゃんおばあちゃん、幼稚園や保育園の先生達から古くからあるジェンダー観に基づくメッセージを受け取った話はよく耳にします。

—幼稚園や保育園では、あまり意識が変わっていないのでしょうか。

シオリーヌ:もちろん自ら勉強されている園や先生方も多いと思います。ただ、幼稚園教諭・保育士になるための教育課程でジェンダーに関して学ぶことは特にないとも耳にするので、まだこれからなのかなと思います。

—大人たちがまず学んでいく必要がありますね。
保護者のなかには、父親が母親に子育て・家事をすべて押し付けて当たり前としていたり、息子に「男らしくしろ」と命令したりしてジェンダー観がアップデートできないという声もあります。

シオリーヌ:パートナー間でジェンダーの考え方がちがうのであれば、しっかり話し合うしかないと思います。
今は共働きが当たり前になり、社会も家族のあり方も変わっています
子どもが将来社会で暮らしていくためにも、パートナーとともに「親が伝えられるメッセージは何だろう?」と考えてほしいと思います。

「その子らしさを大切に」。メッセージを伝えるには

・ジェンダー教育に、保護者ができること

—家庭でジェンダー教育を働きかけるにはどうしたらいいでしょうか。

シオリーヌ:まず、「お子さんの生活やお子さんの体はお子さん自身のもの」の意識を親御さんが持つことが大切です。お子さんの選択に対して、「男の子だから」「女の子だから」といった理由で制限することは避けたほうがいいと思います。

—制限することで、子ども自身が好きなものを好きと言えなくなったり、選べなくなったりするということですよね。
子ども自身が「俺は男だから」のような発言をしたとき、どう対応したらいいでしょう。

シオリーヌ:その人なりの答えがあるでしょうし、「こうしたほうがいい」みたいな答えはないんです。
でももしも、お子さんが自分らしい選択をできなくなっている可能性があるなら、「性別にとらわれず、あなたが選びたいものを選んでいいんだよ」と声をかけてあげてもいいですよね。「男だから泣かない」であれば、「男の子だって泣いていいよ」と言ってあげたらいいんじゃないでしょうか。

選んだお洋服に対して「こっちのほうがいいんじゃない?」とか、ランドセルの色に対して「こっちのほうがいいかもよ」とか。お子さんが選んだものに自分の意見を付け足したくなるときもありますよね。
その理由にもしも「男の子なのに」「女の子なのに」といったことがあれば、親御さん自身のジェンダー観と向き合ってみるタイミングだと思います。

『こどもジェンダー』より

まとめ & 実践 TIPS

「こんな風に言ってはダメ」ではなく、まずはジェンダーにとらわれない「その子らしさ」を認めることから。ジェンダー教育は、親も受けた経験がないものです。これからの世の中で生きる子どものために、親子でいっしょに学んでいきましょう。

執筆/樋口かおる

『こどもジェンダー』(シオリーヌ(大貫詩織):著、松岡宗嗣:監修、村田エリー:絵/ワニブックス)

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Global Gender Gap Report 2021
https://www.weforum.org/reports/global-gender-gap-report-2021

プロフィール

シオリーヌ(大貫詩織)

助産師/性教育YouTuber。助産師として総合病院産婦人科病棟で勤務ののち精神科児童思春期病棟で若者の心理的ケアを学ぶ。2017年より性教育に関する発信活動をはじめ、2019年2月よりYouTubeチャンネルで動画投稿を開始する。著書に『CHOICE 自分で選びとるための「性」の知識』(イースト・プレス)