天気が悪い時や出かけるのが難しい時、子どもが家で楽しく過ごせるように何か遊びを提案したいと考える保護者のかたもいらっしゃるでしょう。
「どうせなら遊びながら何か力がついてくれたらうれしい……」
「親も一緒に楽しめたらさらに最高」
そんな願いに近づく家遊びについて、子どもの発達心理学を専門に研究されている目白大学の荒牧美佐子先生にお話を伺いました。

この記事のポイント

  • 実はすごい? 家遊びで育つ子どもの力とは
  • どんな家遊びがいい? 考え方のポイント
  • どう接する? 子どもの家遊びへの関わり方
  • みんなはどうしてる? 楽しい家遊びアイデア

実はすごい? 家遊びで育つ子どもの力とは

—せっかくなら子どもの成長につながる家遊びをしたい、という保護者のかたもいると思いますが、家遊びの中で子どもの力は伸ばせますか?

荒牧先生:お子さまが主体的に「やってみたい!」「遊びたい!」と楽しく遊ぶ中で、お子さまはさまざまな力を伸ばしていきます。

たとえば今、「よく生きる力」として注目されている「やり抜く力」や「主体性」「創造性」「協調性」……といった「非認知スキル」が注目を集めていますね。そういった「非認知スキル」は保護者のかたが「〇〇の能力を伸ばすためにこの遊びをさせよう」と意図して伸ばせるものではありません。

家での過ごし方として一番重要なのは、お子さまがリラックスして、好きなことを(ある程度は)自由にやれる雰囲気を大切にすることだと思います。保護者のかたも、○○してあげなければいけない! とあまり肩ひじ張らずに、まずは、お子さまのありのままの姿を受け止めることで十分だと思います。

—園や学校の遊びとは違った、家遊びのメリットはなんでしょうか?

家族でコミュニケーションを楽しめることですね。そしてお子さまがやってみたいことに没頭できること。
お人形にしても積み木にしても、家の遊び道具は、園や学校のように大勢で使うものではなく、基本的にお子さま一人だけで独占できるものですよね。
お子さまが気に入った遊び道具でとことん遊べるのは家遊びのメリットだと思います。
時間的にも、園だと時間がきたらいっせいに終わって中断されることも多いと思いますが、家だと「今、夢中に遊んでいるから続けさせてあげよう」など多少柔軟に考えてあげられるかもしれません。

そういう意味で、家遊びでは好きなことへの興味・関心を育てたり、「思いきり没頭する力」を伸ばせる可能性があります。
また園や学校では落ち着いて楽しめないような、ルールの難しいボードゲームやトランプなども、保護者のかたと一緒に楽しむうちに、お子さまは「ルールを守る」「勝てないイライラをコントロールする」ことなども自然に覚えていけるかもしれません。

どんな家遊びがいい? 考え方のポイント

—家遊びの選び方のポイントを教えてください。

シンプルに子どもがやりたいことや、保護者のかた自身が楽しんでいることからスタートすればいいと思います。
家遊びはトレーニングではありません。
親が「〇〇力をつけさせなきゃ」というモードだと、子どもにとってそれは宿題の延長線上になって楽しめません。保護者のかたにとっても負担が増えて大変だと思います。
何より「やりたい」「遊びたい」という気持ちがないと遊びではなくなります。お子さまの力を伸ばしたいならよりいっそう、子どもの主体性を重視して楽しめるものを選んでください。

—子どもが何をしたいのかわからない時はどうすればいいでしょう?

シンプルに何をしたいのか聞いてみる、あるいは「一緒に何かしようか?」と問いかけてみる。お子さまが、保護者のかたに自分の気持ちを素直に言えることが何より大切ではないでしょうか。もちろん、特に何もしたくない、ということもあると思います。そういう時は、お子さまと一緒にゆったり過ごしてください。何もしないことに罪悪感を感じる必要はありません。

ほかには園や学校で今どんなことがはやっているのか把握することも、家遊びのヒントになります。
お子さまの間でブームになっていることに興味を持ってあげること、どうしてそれが好きなのか、楽しいのか、お子さまの話を聞いてみることもいいと思います。
ちなみに園で何がはやっているかは、お迎えに行く時などに、園の壁に貼ってあるものをチェックしたり保育士さんや先生に聞いてみたりするといいですよ。それがまた、園での遊びや活動での広がりや楽しみにつながっていきます。

あとは日常生活の中でお昼ご飯を一緒に作ることなども、お子さまにとっては新鮮で楽しいことだったりします。
同じ家事でいえば、洗濯を「洗濯物たたみ競争!」にしたり、ふき掃除も「どっちがきれいにふけるか競争!」などにすれば、子どもには面白い遊びになります。
ゲームとして行えば生活のいろいろなシーンが楽しめる遊びになるんです。

あるいは保護者のかた自身が今、興味があって楽しんでいる趣味を「子どもと一緒にできないか?」と考えてみることから始めてもいいんです。
いつもお子さまの好きなことばかりに寄り添っていては、負担になることもありますよね。
自分が興味があることをお子さまができるレベルで「一緒にやろう!」と誘ってみると、自分の好きなことを子どもと楽しめるかもしれないですよ。

どう接する? 子どもの家遊びへの関わり方

—お子さまの成長段階によって遊びへの関わり方は変わりますか?

子どもの年齢が上がれば上がるほど、子どもが大人から離れて過ごす時間も増えていくと思います。ですが、それは子どもを放置してよい、ということではありません。特に小さいうちは、寄り添いながら伴走することがすごく大事です。
子どもだけは途中で飽きたりあきらめたりしてしまうことも、大人が一緒に楽しんだり、ある程度道筋をつけてあげたりすることによって、次の遊びにつながることがあります。
たとえばブロックやパズルで、最初のうちだけ一緒に作って楽しむなどですね。あるいは、大人が常に遊びに加わらなくとも、そばでゆったり見守ってあげているだけでも、お子さまは安心できます。お子さまから求められた時だけ参加する、必要な時だけサポートするので十分かもしれません。

ほかにはルールがあって勝負のつくゲームでは、大人が一緒に遊ぶことでルールが理解しやすくなり、いっそう面白くなるということはよくあります。
子どもどうしだとズルをしても、勝ちたい! という思いが先行してしまうことがありますが、ゲームはルールに沿って、勝ち負けが決まるからこそ楽しいもの。必要に応じて、大人がルールをわかりやすく説明してあげたり、勝った時のうれしい気持ちや負けた時の悔しい気持ちに寄り添ってあげることは大切です。
小学校の中学年以上になると、親よりも友達と遊ぶことが楽しくなってきます。
普段の対話の中で、子どもが友達と何をして遊んでいるのか、どんな子と仲がいいのかなどを把握しておくことも重要です。これは、必ずしもお子さまの友達づきあいを監視しなければならないということではありません。お子さまにとって、どんな時も、親が自分に関心を持ってくれていると思えることは、安心感につながります。

高学年になると、大人が作るような難しいレベルのプラモデルや複雑なパズルにもチャレンジしたくなるかもしれません。
大人と同じレベルの手芸や料理なども一緒に楽しみたいと思えるようになれば、遊びというより趣味を楽しむ感じになってくるかもしれないですね。

—家遊びのNGな関わり方を教えてください。

家が学校にならないように注意が必要です。
つまり、「できた」「できない」と、遊びに成果を求めないようにしましょう。
特に小学校に入れば学校で何かしらの形で評価がついてきます。家の中の遊びまで「できる・できない」の評価がついてまわったら、お子さまはほっとできないのではないでしょうか。

みんなはどうしてる? 楽しい家遊びアイデア

さてここからは保護者のかたから寄せられた、楽しい家遊びの体験談(※1)をご紹介します。
家遊びの参考にしてください。

★年長以下のお子さま編

パズル型のボードゲームで遊んでいます。ひらめく時が楽しいそうです。
(滋賀県 ammさん 年長以下のお子さまの保護者)

うちの子はよく工作をしています。「こうしたい」「ああしたい」と思いをふくらませて楽しそうにしています。
(静岡県 ゆかさん 年長以下のお子さまの保護者)

家では将棋などのボードゲームで遊びます。難しい局面では親に頼ったりもしますが、複雑なルールを守って遊びを楽しめています。
(神奈川県 めいこさん 年長以下のお子さまの保護者)

スライム作り、人形遊び、折り紙などで遊ぶことが多いです。子どもの創造力と想像力に圧倒され、何より子どもが幸せそうに遊んでいると感じます。
(京都府 まちさん 年長以下のお子さまの保護者)

※小さいお子さまの場合、おもちゃを使用する際は、誤飲などの事故を防ぐため、あらかじめ商品の対象年齢を確認してください。また、遊んでいる時はお子さまから目を離さないようにしましょう。

★小学校低学年のお子さま編

最近はあやとりがブームのようで、自分から動画配信サイトなどで何度も動画を再生してやり方を練習しています。できた技を家族や友達に見せて自慢しています。
(沖縄県 とびっこさん 小学1年生の保護者)

最近はアイロンを使ってモチーフを作れるビーズを楽しんでいます。想像しながらいろいろ柄を考えたり、それをもとにビーズを置いたり、創造する楽しさを学んでいるようです。
(千葉県 ゆうみさん 小学2年生の保護者)

最近はかるたで遊ぶことが多いです。
健康や日本地図などをモチーフにした、さまざまなかるたに挑戦しているので、楽しいだけでなく学びにもつながっています。
また、きょうだいがお互いに負けたくない気持ちが強いので、勝負がつくたびに泣きながらやっています(笑)。やる気とリアクションがスゴいです。
(神奈川県 にこさん 小学2年生の保護者)

★小学校中学年のお子さま編

子どもたちで「バスボム」作りをしました。みんな夢中になって取り組んでいました。他にも百均などで売っている実験キットなども楽しんでいます。
(東京都 みくなたさん 小学4年生の保護者)

かるたや百人一首、けん玉などの昔遊びにはまっています。小学校で行われる百人一首大会のためにやりだしたのですが、大会が終わってもきょうだいで楽しそうに遊んでくれます。
(千葉県 lotusさん 小学4年生の保護者)

駐車した車を脱出させる知育おもちゃで遊んでいます。前後にしか動かせない制限の中、車を脱出させようといろいろ工夫してがんばっています。
(京都府 よりこりさん 小学3年生の保護者)

友達を呼んで室内用の雪玉で雪合戦をしています。いいコミュニケーションになるし、対戦中に室内のものを活用して防御壁にするなど頭も使っているようです。
(愛知県 ひかりん 小学3年生の保護者)

★小学校高学年のお子さま編

少し体を動かせるテレビゲームやトランプなどのカードゲームを、家族全員でやっています。うちの子は家族で遊ぶことが大好きで、とても喜びます。
また、よく家族で協力しながら、段ボールで射的の的を作ったり、厚紙で工作をしたりしています。
(東京都 りんごさん 小学5年生の保護者)

きょうだいでケンケンパをしたり、トランポリンで飛んだり、大きなカレンダーの裏にみんなで絵を描いたりしています。
きょうだいでもめることもありますが、しっかり話し合って順番に遊んだり、相手のことを考えて行動できるようになりました。
(千葉県 みどりさん 小学5年生の保護者)

「子どもたちだけでお昼ご飯を作ってみる」「子ども部屋の整理整頓をきょうだいみんなでやってみる」など、私が設定したミッションを協力してやってもらうと、1人でする以上に楽しくなるようです。
あえて親が入らず、子どもたちだけで取り組むことで、ケンカが減って協力し合う場面が多くなるように感じます。
(大阪府 となりさん 小学5年生の保護者)

ブロック遊びにはまっています。ブロックは安く手に入るだけでなく、いつの間にか子どもの手先が器用になり、集中力もついてよかったです。
(埼玉県 きりんさん 小学5年生の保護者)

段ボールでミニカーのコースを作っています。段ボールを自分で切ったり貼ったりして組み立てるので、考える力がつくと思いました。
(宮城県 はむさん 小学5年生の保護者)

おやつ作りをすることが増えました。たとえば、チョコフォンデュをしたり、ギョウザの皮で小さなピザを作ったり。きょうだいで仲良くトッピングを変えるなどして楽しんでいます。
(神奈川県 ちゃさん 小学5年生の保護者)

子どもが自分からトランプタワーを始めました。時間を忘れて凄まじい集中力を見せ、タワーが完成した時の達成感もすごかったです。上の子がやっているのを見て、下の子もマネしだしました。
(兵庫県 ちーつーさん 小学5年生の保護者)

かわいい空きビンといらない保冷剤、キラキラのラメを使ってアロマポット作りをしています。
好きな香りや絵の具、ラメなど、いろいろな素材の中から選ぶ作業が楽しそう! 子どもは物作りが大好きなので、終始ウキウキでした。
(青森県 かおさん 小学5年生の保護者)

カードゲーム、ボードゲー厶、お菓子作り(クッキー、ケーキ、クレープ)、好きな食べ物を作る(ピザ、パスタ、炙り寿司)などをして遊んでいます。
本人がやりたいことを好きにやらせると、非常に満足して楽しそうです。
(福岡県 こあさん 小学5年生の保護者)

まとめ & 実践 TIPS

お子さまが家でひまそうにしていると、「何か遊べるものを与えなきゃ」「この遊びをすればこんな力が付くかも」などと、つい肩に力が入ってしまうかもしれません。
でも、まずはお子さまの家遊びは、お子さまの「やりたい!」「遊びたい!」が最も大切です。
まずは身近なことを一緒に楽しむくらいの気持ちで、楽しい時間を過ごしてみましょう。
そうすれば、きっと保護者のかたも負担を増やすことなく、余裕を持ってお子さまと向き合えるのではないでしょうか。

※1 2024年2月に行った「保護者のかた向けアンケート」(1,217人回答)に寄せられた体験談をもとに作成。