少女漫画家・少女小説家として数々のヒット作を世に送り出してきた折原みとさん。約15年ぶりに書いた少女小説『きみと100年分の恋をしよう』(講談社刊)シリーズが今、小・中学生の間で大人気です。「子どものころに折原みとさんの作品を読んでいた!」という保護者も多く、親子2代にわたって読んでいるご家庭も。長く愛され続ける作品を発表し続ける折原みとさんに、将来絵や文章に関する仕事を夢見ている子どもたちが今できることは何か、親の向き合い方はどうすればいいか教えてもらいました。

この記事のポイント

  • 夢に対する希望や不安、人間関係での悩みや葛藤は、今も昔も変わらない
  • 漫画でも小説でも、いろいろな作品を読むことが上達の基本
  • 親の先回りや供給過剰は、子どもが「簡単に夢が叶う」と勘違いする恐れが
  • 主人公に自分を投影して、前向きに生きられるきっかけになれば

夢に対する希望や不安、人間関係での悩みや葛藤は、今も昔も変わらない

——少女小説を書いたのは約15年ぶりとのことですが、今と昔では子どもたちの考えや悩み、感覚も違っているのでしょうか? 時代が変わっても作品が愛され続けることについて、折原さんはどうお考えですか?

今再び少女小説を書いていて感じるのは、時代が変わっても、将来の夢に対する希望や不安、恋愛や友情に対して抱くドキドキや悩み、葛藤といったものは、私が子どもの時と本当に変わっていないな、ということです。もちろん、子どもたちを取り巻く環境は全然違います。30年前だと携帯電話もない時代だし、SNSもない。それこそ昭和のいじめは上履きに画びょうを入れるとかだったのが、今はLINEなどでいじめる、みたいな。

でも、子どもの心の芯の部分、根っこの部分は変わっていない。だから、今この年の私が書いているものに、子どもたちが共感してくれているのかなと感じていて、それを信じて読者と同じ気持ちで書くしかないな、と思っています。そしてその作品を読んだ人からの「元気をもらえました」「この本を読んでいるとがんばろうと思えます」という声を見たり聞いたりすると、作品を通して伝わっているのだなと、とてもうれしい気持ちになりますね。

漫画でも小説でも、いろいろな作品を読むことが上達の基本

——「絵をかくのが好き」「文章をかくのが好き」な子どもたちは、もっと上手になりたい! と思っています。上手になるコツやヒントを教えてください。

そんなものがあれば私も知りたいと思ってしまいますが(笑)、絵に関しては、私が子どものときは、まずはまねをすることから始めましたね。好きな作家さんの絵を模写してみるとか。顔だけでなく、スケッチブックにいろんな動きを描いてみるのもいいと思います。

文章は、本をたくさん読むことが一番の近道です。本を読むと、文章力は自然に身に付くものなので、「勉強しよう」と思うのではなく、いろんな本をたくさん読んでください。その中で、「この文体すごく好きだな」と思えば、影響を受けていくかもしれないですし、「こういう気持ちがなかなかうまく書けないな」と思った時でも、その気持ちをうまく書く作家さんの作品に出合えば、「あ、こうなんだ」とわかるなど、学びはいろいろあると思います。本を読んでいて「あ、この表現素敵」「きれいな言葉だな」と思ったらそれをノートに書き出しておくことも、自分で書く時に参考になりますよ。

——絵や文章を毎日かき続けるほうが上手くなるのでしょうか?

毎日かくことは、必ずやらなければいけないということはまったくないし、自分のやりたい方法でやればいいと思います。ちなみに、私はやったことがないのですが、毎日仕事以外でも何かをかいている漫画家さんももちろんいます。でも漫画でも小説でも、やっぱりいろんな作品を読むのが基本かなと思います。

あと、情景描写の練習もおすすめです。小説をかくときにありがちなのが、一人称でセリフだけで進めてしまうこと。初心者のかたは、面倒なところはすっ飛ばして、書きたいところだけ書くということが多いのですが、そうではない地の文章も書けないといけませんから、プロを目指すのなら、いつも何かを見たら頭の中でそれを描写する言葉を考える癖を付けるといいと思います。
私は、たとえばすごくきれいな夕日を見たら、その夕日をどうやって表現しようかなっていうのを考えたりしています。夕日の色といってもオレンジ色とかだけではダメなので、もっと突っ込んだ、自分独自の表現みたいなものを考える訓練をしてみましょう。

——絵や文章をかいている子どもに対してどう接すればいいですか? 正直に思ったことを伝えたほうがいいのか、それともほめまくったほうがいいのでしょうか?

子どもはほめて伸ばすのがいいと思います! 私も、編集さんにまず作品を見せた時に、けちょんけちょんにけなされたらやる気がなくなっちゃいます(笑)。まず「ここすごくよかったです〜」とほめてくれたあとに、細かい部分で「でもここはこうしたほうがよくないですか?」とか言われるとすごく素直に聞けるんですよ。

お子さんがかく絵や文章は、どんなものでもいい部分はあると思うので、まずはほめてから「でもここもうちょっとこうしたほうがいいかもね」みたいに言ってみてはどうでしょうか。

親の先回りや供給過剰は、子どもが「簡単に夢が叶う」と勘違いする恐れが

——将来は好きなことを仕事にしたいと思う子どもも、そうであってほしいと願う親も多いと思います。その夢を実現するために親ができることはありますか?

私の親は、私が「漫画家になりたい」って言った時に「なれるわけないでしょう」と相手にもしてくれませんでした。なので、やりたいことを実現するために自分でアルバイトをして必要なお金をためたりしたのですが、その時代に比べたら、今は子どもの思いに寄り添ってくれる親が多くて素敵ですよね。
でも、「この子がやりたいから」と一生懸命それに関するものを親が先回りして調べたり買い与えたりすると、供給過剰というか「夢は簡単に叶うもの」と勘違いしてしまう恐れもあるかなと。

自分がやりたかったら、親に反対されようが何をされようがやるものなので、あんまり親が何かしてあげようと思わないほうがいいのではないかと思います。子どもがしたいことを客観的に見て「それってどうなの? できるの?」と言うのはいいかもしれませんが、「やってみなきゃわからないじゃん」と言うのであれば、まずはやりたいようにさせてみるといいのではないでしょうか。子どもの自主性を大事にしていただきたいです。

——将来漫画家や小説家になることを目指している子どもと保護者に向けてアドバイスをお願いします

本当に一度も失敗なくストレートに夢が叶うことなんて、なかなかありません。たとえば漫画家でも、持ち込みに行ったら酷評されることだってあるし、何回漫画スクールに応募してもダメってこともいっぱいあります。ですから、あまり自意識過剰にならないでください。最初からうまくいくと思っていると、1回、2回ダメだった時に、「ああ私はダメなんだ」となってしまうので「ダメでもともと」という気持ちが大事。とりあえず、「失敗してもいいからやってみようかな」くらいのスタンスでチャレンジしてみましょう。そして、ダメだった時にも、「これがダメなら、あれはどうだろう」と気持ちや考え方を切り替えられるようになれるといいと思います。

そして、夢が叶ったあとも大変なこと、うまくいかないことはたくさんあります。そんな時にも「とりあえずやってみよう」「ダメでもともと」という考え方ができると、壁を乗り越えることができるし、自分の新たな可能性も見いだせるかもしれません。本当に好きで、叶えたいことがあるというのは、とても素敵なこと。諦めないでチャレンジしていってほしいですね。
保護者のかたは、子どもの諦めたくない、やってみたいという気持ちを尊重して、まずはやらせてみてください。そして夢を叶える過程で、子どもが壁にぶつかり悩むことがあったら、「自分もそういう時があったよ」とご自身の体験を話してあげるといいかもしれません。「親も同じように悩んだり失敗したりしたんだ」「自分だけじゃないんだ」と前向きに気持ちを立て直せるのではないかと思います。

主人公に自分を投影して、前向きに生きられるきっかけになれば

——折原さんが作品を書くうえで心がけていること、子どもたちに伝えたいと考えていることを最後に教えてください

私は基本的には、読んで暗い気持ちになるものは書きたくないんです。読んでいて元気が出るものとか、読んだ人が何か一つでも役に立つ言葉を見つけられたり、役に立つ気持ち・情報を知ってくれたりするといいな、と思っています。そして、デビュー時からずっと揺るがないことなのですが、読んだ人が前向きな気持ちになるきっかけになるような作品を書きたいという思いがあります。
読んでくれる子どもたちは、主人公やキャラクターに自分を投影して読んでくれていると思うので、つらいことや悩み、コンプレックスを作品の主人公やキャラクターと一緒に乗り越えて、生きていくうえでのヒントを得てもらえたらいいな、夢を持って明るく生きていってほしいな、と願っています。

まとめ & 実践 TIPS

絵や文章が上手になりたいなら、どんどんいろいろな本を読むこと、そして「いいな」「素敵だな」と思う表現があったら、ノートに書き留めておくのがおすすめとのこと。うまくいかないこともありますが、「ダメでもともと」と前向きにとらえて、夢に向かってどんどんチャレンジするのがいいですね。保護者のかたも、自分が子どものころに、誰に何を言われても「自分で夢に向かってがんばりたい」と思ったことは必ずあるはずです。そのときの気持ちを思い出すことで、子どもに寄り添えるのではないでしょうか。

『君と100年分の恋をしよう 大好きがいっぱい』(講談社刊)

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進研ゼミ「まなびライブラリー」でも『きみと100年分の恋をしよう』が公開中です。会員以外の方はこちらで「ためし読み」できます。
https://library.benesse.ne.jp/member/nm/
※閲覧できる作品等は時期によって異なります。

『乙女の花束』(ポプラ社刊)

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取材・文/本間勇気

プロフィール

折原みと

折原みと

1985年に少女漫画家として、87年に小説家としてデビュー。91年刊行小説『時の輝き』が110万部のベストセラーとなる。約15年ぶりの少女小説『きみと100年分の恋をしよう』シリーズは小・中学生の人気が高く、ベネッセ学びライブラリーでも上位にランクイン。小説の他、エッセイ、絵本、詩集、料理本、CDなどで幅広く活躍。2017年に小説家デビュー30周年を迎えた。