「宇崎ちゃん」献血コラボは「表現の自由」か「女性差別」か、国や人権団体はどう線引き?

日本赤十字社(名誉総裁:皇后陛下、社長:大塚義治氏)が1都6県の献血ルームで開催しているキャンペーンで、ラブコメディ作品『宇崎ちゃんは遊びたい!』のキャラクターを採用したことから、ネットでは議論が広がっている。

問題となっているのは、「カワイイ巨乳後輩」と説明されるキャラクター「宇崎ちゃん」。献血のキャンペーンポスターやノベルティには、大きなバストの形がはっきりとわかる服を着た宇崎ちゃんのイラストが使用されている。

男性を中心に人気がある一方で、「性的なキャラクターを公的なキャンペーンに使用するには不適切」「子どもには見せたくない」といった批判もある。

こうした女性キャラが「炎上」するケースが後を絶たない一方、国や自治体、日弁連など多くの公的機関は2000年代以降、男女平等などの視点から、広報や企画における表現のガイドラインを策定してきた。

その中では、「内容と無関係に、女性の水着姿や身体の一部などを使うと『性的側面を強調している』と受け取られるおそれがあります」(内閣府「男女共同参画からの視点からの公的広報の手引き」、2003年)といった注意が呼びかけられている。

弁護士ドットコムニュースでは、日本赤十字社に広報などについて同様のガイドラインがあるか確認したが、明確な回答は得られなかった。

また、日本赤十字社は今回のキャンペーンを「一般の方へのPRを目的としたものではございません」(経営企画課)として、あくまで一部ファンを対象としたものであると説明している。

●「宇崎ちゃん」のポスター、献血ルーム前の目立つ場所から移動

これまで、日本赤十字社は、日本最大の同人誌即売会「コミックマーケット」で献血応援イベントを実施したり、全国でアニメや漫画のキャラクターとコラボしたキャンペーンを実施。特に若い世代の男性たちから献血に多大な協力を得てきた経緯がある。

弁護士ドットコムニュースの取材に対して、日本赤十字社は「これまでも多くの漫画やアニメ作品にご支援いただき、ご好評を得てきたことから、​今回のキャンペーンも献血にご協力いただけるファンの方を対象として実施したものであります」とする。

「宇崎ちゃん」のキャンペーンは10月1日から1カ月間で、東京・神奈川・千葉・埼玉・群馬・栃木・茨城の献血ルーム約40カ所で実施。献血に協力すると、「宇崎ちゃん」の記念品がもらえるという。第2弾は来年2月に予定されている。

実際に記者が10月18日、東京・新宿西口の献血ルームを訪れると、一般の人たちが往来する地下道の目立つ場所に、「宇崎ちゃん」のポスターが掲示されていた。しかし、10月22日に再訪すると、同じ場所には別のポスターが置かれ、「宇崎ちゃん」のポスターは献血ルーム内に掲示されていた。

日本赤十字社は、「本キャンペーンは、作品のファンの方々に対するノベルティの配布を目的としており、​ポスター等による一般の方へのPRを目的としたものではございません」と説明する。

●これまでにも「性的」とされ、炎上してきたキャラ

10月1日にスタートした「宇崎ちゃん」のキャンペーンがネットで広く知られるようになると、さまざまな意見がSNSに投稿された。

「女性の体をモノとして扱っている」「性的なキャラクターを赤十字のような公的機関が使用するのはおかしい」といった女性蔑視や女性へのハラスメントであるとする批判や、「小学生の息子がキャラクターの胸に興味を持って困った」という保護者の声もあった。

こうした批判に対して、「キャンペーンで多くの人が献血をすることが大事」「表現の自由があるのだから、安易な規制は許されない」といった反論も多くみられた。

「宇崎ちゃん」だけでなく、これまでも数々の性的とみられる女性キャラが「炎上」してきた。三重県志摩市公認だった海女のキャラ「碧志摩メグ」(2015年8月)、岐阜県美濃加茂市がコラボした『のうりん』(2015年12月)、東京メトロのキャラ「駅乃みちか」(2016年10月)が挙げられる。

昨年10月に、NHKがノーベル賞特設サイトでVチューバーの「キズナアイ」を起用したことが物議をかもしたことは記憶に新しい。公的機関、公共性の高い組織において、性的とみられる女性キャラが広報や企画に使用された場合、「炎上」するケースが少なくない。

●2000年代、国や自治体は次々とガイドラインを策定

では、そうした公的機関や公共性の強い組織は、こうした問題にどのように向かい合ってきたのだろうか。

明確に政府が方針を打ち出したのは、男女共同参画基本法(1999年)に基づいて策定された「男女平等参画基本計画」(2000年)。その中に、「メディアにおける女性の人権の尊重」が盛り込まれた。その後、冒頭に挙げた内閣府の「男女共同参画の視点からの公的広報の手引き」(2003年)がまとめられたが、これは「地方公共団体、民間のメディア等に広く周知するとともに、これを自主的に規範として取り入れることを奨励する」ものとされた。

国の動きや社会情勢を受け、各地方自治体でも次々にガイドラインが策定されていった。たとえば、次のようなものが挙げられる。

「目を引くためだけに『笑顔の女性』を登場させたり、体の一部を強調することは、意味がないばかりなく、『性の商品化』につながります」「(性の商品化とは)体の一部を強調されたり、不自然なポーズをとらされることで、女性の性が断片化され、人格から切り離されたモノと扱われること」(東京都港区「刊行物作成ガイドライン「ちょっと待った! そのイラスト」、2003年)

「自治体のPR動画やイベントポスターなどで、男女の描かれ方や過度に性的な『萌えキャラ』等が問題となり、動画の公開中止やポスターの作り直しになる事態が生じています。問題となっている表現は、女性を性的対象物として描いたり、これまでの固定的な性的役割分担にとらわれた表現への批判です。注目してもらうために、感性に訴える表現は必要です。しかし、見る人が不快になるような表現にしないためには、人権への理解を深め、男女共同参画の視点に立った表現をすることが一層重要となっています」(埼玉県「男女共同参画の視点から考える表現ガイド」、2018年)

●日弁連や人権団体にもガイドライン、日赤は「回答なし」

国や自治体以外にも、同様のガイドラインを策定している公共性の高い組織はある。たとえば、日本弁護士連合会では、「公式企画の実施にあたり基本的人権擁護等の観点から留意すべき事項に関するガイドライン」の中で、チラシ・パンフレットなどの表現方法への配慮として、「必然性もないのに露出度の高い人物の画像を使用するなど、アイキャッチャーとして、性的側面を強調しないよう留意する」と明記する。

また、公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンでも2016年、日本が批准する国際条約「児童の権利に関する条約」に基づき、「子どもに影響のある広告およびマーケティングに関するガイドライン」を策定した。このガイドラインでは、「広告表現、広告手法に関する配慮事項」として、「過度な性表現」を挙げている。

そこには次のように書かれている。

「感受性の強い未成熟な子どもの性に対する興味をいたずらに助長し、性的欲求を過度に刺激するような表現、また不快感や精神的苦痛を与えるような表現には十分配慮する」

「子どもが主たる訴求対象ではない商品・サービスの広告を子どもが見て、性に対する興味や欲求を過度に刺激する可能性がある。このような表現については、表現自体を見直したり、広告媒体または時間帯を考慮することが望ましい」

日本赤十字社は民間組織とはいえ、日本赤十字社法による認可法人であり、災害支援や地域医療、国内唯一の血液事業を担うなど、「中立性をもった人道的な活動を行う認可法人として活動」(公式ホームページより)している。公共性が高いといえるが、こうしたガイドラインや基準の有無について、回答は得られなかった。

日本赤十字社は、今回のキャンペーンについて、一部のファンを対象としたものとしながら、「しかしながら、様々なご意見を頂戴していることにつきましては、真摯に受け止め、今後の参考とさせていただきます」とコメントしている。


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