静岡県磐田市で1月12日、自転車に乗っていた女子中学生が、車を避けたところ転倒するという事故が起きた。

静岡放送などによると、転倒した中学生は車とは接触していないが、車がそのまま走り去ったことから、県警は「ひき逃げ事件」として捜査しているという。

今回のケースは、どうして「ひき逃げ」にあたるのだろうか。車に「非」がなくても、運転手は責任を問われるのだろうか。西村裕一弁護士に聞いた。

●非接触でも「交通事故」となり得る

――報道では、車が「救護義務」を怠り、立ち去ったとされています。今回のように、車と自転車が非接触であったとしても、自転車が転倒した場合に、車の運転手側が救護義務違反に問われることは一般的にあるのでしょうか。

非接触だからといって、交通事故に100%あたらないということはありません。急ブレーキや交差点への飛び出しにより、バイクや自転車、歩行者が転倒してしまった場合には、交通事故となり得ます。

したがって、非接触でも、転倒したケガ人を放置してその場を立ち去ってしまえば、救護義務違反となることはあり得るということになります。

今回報道されている事故の現場は、中央線のない1本道で、車と自転車が並走していたとされています。警察としては、自転車が田んぼに落ちてしまったことを車の運転者が当然認識していたと考えているのではないかと推測されます。

●車に非がなくても「救護義務違反となることはある」

――たまたま並走中に自転車が転倒した場合など、車の運転手側にまったく非がなかったとしても、救護義務違反となることはあるのでしょうか。

あります。なぜなら、救護義務について規定する道路交通法72条では、救護義務があるのは「運転者の過失がある交通事故」の場合のみではなく、広く「交通事故があったとき」と定められているからです。

警察のホームページでもその旨が明確に示されています。たとえば、兵庫県警のホームページでは、相手方の信号無視など、事故の主原因が相手方にあったとしても、救護措置を取らずに現場を立ち去った場合に「事故の過失責任は別として、救護義務違反は成立」するとの記述があります。

事故の過失割合と救護義務については、別物と考えていただくことが必要です。

――車を運転している人が自転車の転倒に気づかずに立ち去った場合は、救護義務違反にあたるのでしょうか。

自動車の運転者が本当に転倒に気づいていないということであれば、法的には過失運転致傷罪が成立し得る可能性はあるものの、救護義務違反にはなりません。

ただし、「本当に転倒に気づかなかった」という運転者の言い分が、警察での取調べや裁判においても認められるかについては、具体的な事故の状況によって当然変わってきます。

●車を運転する側が気をつけるべきことは?

――救護義務を怠ったなどとして責任を問われないために、車を運転する側は、どのような点に気をつけるべきでしょうか。

責任を問われないようにするためには、非接触でも転倒を目撃した場合には、停止してその場で状況を確認しなければなりません。

今回の報道のケースでは、先ほど述べたとおり、田んぼ道で周りに遮るものがなく、自転車がいたことは運転者には明らかだったのではないかという事情があると考えられます。

イヤホンでの大音量、運転中にスマホを使用する「ながら運転」や急な飛び出し、無謀運転など、自転車側にも問題があるケースもありますので、「気をつけようがない」という声もあるかと思います。

しかし、道路交通法72条は過失の大きさを問題視していないので、注意が必要です。

【取材協力弁護士】
西村 裕一(にしむら・ゆういち)弁護士
福岡県内2カ所(福岡市博多区、北九州市小倉北区)にオフィスをもつ弁護士法人デイライト法律事務所の北九州オフィス所長弁護士。自転車事故も含め、年間100件以上の交通事故に関する依頼を受けており、交通事故問題を専門的に取り扱っている。
事務所名:弁護士法人デイライト法律事務所北九州オフィス
事務所URL:https://koutsujiko.daylight-kitakyushu.jp/