私立大学の研究室が、決まった席や部屋のない「フリーアドレス」になって、研究や教育に支障が出ているとして、専任教員や元専任教員ら9人が梅光学院大学(山口県下関市)を相手取り、計1265万円の損害賠償を求めた裁判の控訴審判決で、広島高裁(倉地真寿美裁判長)は5月15日、請求を棄却した1審・山口地裁下関支部判決を支持して、原告の控訴を退けた。

判決文などによれば、梅光学院大の専任教員には個室の研究室が割り当てられていたが、2019年にできた新校舎では教員と職員の利用するフリーアドレス(共同研究室)が導入された(2022年1月から教員と職員のスペースは分離)。

専任教員らは、職員や学生が行き交う中では研究に集中できず、研究成果が盗用されるおそれもあるだけでなく、試験問題の作成や成績をつけることも難しいと主張していた。提訴は2021年8月27日付。研究・教育上の不利益による損害として、教員らは1カ月あたり5万円を請求した。

広島高裁の倉地裁判長は「研究室の用途や設備は、それを利用する教員の研究内容によって種々様々であり、私立の学校法人においては、どのような研究室を設置するかの決定に際し(中略)、被控訴人(大学側)が設置する研究室の具体的な仕様や構造等については、被控訴人に相当に広い裁量が留保されていると解するのが相当」とした。

また、専任教員に対して必ず研究室を備えるものとした文部科学省の大学設置基準について「大学側に研究室の水準・内容につき相当に広い裁量を留保していると解すべき」との考えも示した。

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●原告代理人「研究・教育への支障が現実的に生じている」

控訴審判決を受けて、原告代理人をつとめる西野裕貴弁護士は上告の考えを明かした。

「大学側に研究室の内容をどうするかという裁量が一定あると思うが、対立利益である大学教員の学問研究の自由は重要な権利利益です。控訴審では、大学教員の学問研究の自由の重要性を加味したうえで法解釈をするよう、憲法学・教育法学・労働法学の研究者の意見書をつけたうえで求めましたが、その点については、ほぼ言及がありませんでした」(西野弁護士)

●学校法人「本学の主張が認められた」

大学を運営する学校法人梅光学院は、弁護士ドットコムニュースの取材に「この度の判決は、本学の主張が認められたものと考えています。今後とも、より良い教育・研究環境の整備に努めてまいります」とコメントした。