クルマで多く見かける光景ではありますが、駅などに誰かを送ったり迎えに行ったりする際に、目的地手前の信号待ちで人を乗せたり下ろしたりする様子を見たことがある人は多いと思います。バイクの場合で言うと、タンデムの後ろに乗せている人ということになりますが、この行為は違反に該当するのでしょうか。実際に警察に聞いてみました。

時間の効率を考えて、信号待ち中に同乗者を降ろしたい

 同乗者をどこかに送り迎えする際に、目的地手前の信号で引っかかってしまったという経験がある人は多いでしょう。

 目的地はもう目と鼻の先なのに、信号が混んでいて中々進まないという場合、信号待ち中であるにもかかわらず同乗者を下ろしたり乗せたりしたことがある人も居ると思います。

 この行為は、違反にあたるのでしょうか。

信号待ちでタンデムしている人を下ろす行為は違反ではない
信号待ちでタンデムしている人を下ろす行為は違反ではない

 警視庁交通相談コーナーの担当者は、次のように話します。

「まず、信号の手前での駐停車は法律上違反になります。信号待ちの状態は運転者が運転を放棄していなければ、運転継続中であるので駐停車状態ではありません。そのため、法令上では信号待ちの状態で、バイクの同乗者が乗り降りをしても違反になるということはありません」

 しかし、一概に信号待ちの状況での乗り降りが違反にならないというわけではない、とも言います。

「道路交通法には明記されていませんが、バイクの同乗者の乗り降りは停車状況に該当する可能性もあります。現場での判断とはなるものの、信号待ちでのバイクの同乗者の乗り降りに対して、周囲に交通上の妨害があった場合は警告を与えることがあります。

 その状況での判断に委ねられるため、確実に取り締まるとは言えません。しかし、他人に迷惑をかけた場合など交通を妨害した場合には、運転者の遵守事項に抵触するため、取り締まりの対象になる可能性があるので注意してください」

 つまり、信号待ち中にタンデムしている人を降ろしても違反にならないかどうかは、遵守事項に抵触するかがポイントになってくるようです。

違反になるのは、具体的にはどんな場合?

 そもそも駐車状態というのは、道路交通法第二条において「車両等が客待ち、荷待ち、貨物の積卸し、故障その他の理由により継続的に停止すること」または「車両等が停止し、かつ、当該車両等の運転をする者がその車両等を離れて直ちに運転することができない状態にあること」と規定されています。

 そして停車状態は、「車両等が停止することで駐車以外のもの」を指します。簡単にいうと、駐車はすぐに発進できない状態でバイクを停めている状況、停車はすぐに発進できる状態とイメージすると良いでしょう。もちろん、駐車または停車状態かの判断は、ケースバイケースで変化する可能性があります。ただ、前述の担当者が話すように、違反等に問われるかどうかは、最終的にはその場に居合わせた警察官が総合的な状況判断をおこなうことになります。

タンデムしている人を下ろす際は周囲の安全に気を付ける
タンデムしている人を下ろす際は周囲の安全に気を付ける

 では、「運転者の遵守事項」とは、いったいどのような内容なのでしょうか。

 道路交通法七十一条によれば運転者の遵守事項とは、道路や交通状況に応じて、他人に危害を及ぼさないように運転しなければならないという内容となっています。

 具体的には、道路交通法七十一条四の三「安全を確認しないで、ドアを開き、又は車両等から降りないようにし、及びその車両等に乗車している他の者がこれらの行為により交通の危険を生じさせないようにするため必要な措置を講ずること」が、これに該当するといえるでしょう。

 つまり、運転手が運転を継続している場合は信号待ちでの同乗者の乗り降り自体は法律に触れることはありませんが、その行為によって他人にとって危険な状況を作ったり、交通の妨げになると、運転者の順守行為違反になるというわけです。

 例えば、同乗者がバイクを降りた際に歩行者や原付・クルマと接触すると、これは運転者の順守行為違反に抵触する可能性が考えられます。また、タンデムしている人がバイクから降りた際にライダーがバランスを崩し、転倒してしまった場合なども、後続車の交通の妨げになる可能性大。

 安全の観点からも、何か緊急な事態でない限りは、信号待ち中にタンデムしている人を降ろす行為は避けたほうが良いでしょう。