現存する世界最古のバイクレースとして知られる「マン島TTレース(Isle of Man TT Races)」が、2023年5月29日〜6月10日の日程で始まりました。予選最終日となる5日目の模様をお伝えします。

順調に進む予選ウィーク、コースレコードを上回るペースの走りが!

「ツーリスト・トロフィー(Tourist Trophy)」の名で市販車の信頼性と技術力を競う場として、また観光資源の目玉として1907年に始まった「マン島TTレース(Isle of Man TT Races)」(以下、TTレース)。予選ウィークの最終日(5日目)となる6月2日の金曜日もまた快晴に恵まれ、この日のスケジュール通り13時から走行が始まりました。

「スーパーツイン」クラスにイタリアのPaton「S1-R」で参戦しているマイケル・ダンロップ選手は、カワサキ「Z650」で参戦しているジェイミー・カワード選手に20秒以上ものタイム差で予選1位となった(写真/小林ゆき)
「スーパーツイン」クラスにイタリアのPaton「S1-R」で参戦しているマイケル・ダンロップ選手は、カワサキ「Z650」で参戦しているジェイミー・カワード選手に20秒以上ものタイム差で予選1位となった(写真/小林ゆき)

 前日までとは異なり「サイドカー」クラスからの走行となりましたが、これは天候その他の理由により予定が変更された場合に、クラスによって走行機会に不公平が生じないようにするための工夫です。

 サイドカークラスのトップに立ったのは、ピーター・ファウンド/ジェバン・ウォムズリー組でした。昨日までトップのベン&トム・バーチャル兄弟組は何らかの理由によりコース途中で停止後、ゆっくり1周しましたが、結果的に全体1位はバーチャル兄弟組となりました。

 続いて「スーパースポーツ」と「スーパーツイン」のセッションが始まりました。両方のクラスにエントリーしている選手がほとんどなので、時間内にどちらのクラスを重視して走行するかが決勝レースへの重要な作戦となります。

 軽量クラスに強いマイケル・ダンロップ選手は、まずスーパーツインクラスのパトン「S1-R」で出走し、ラップレコードを非公式(予選なので)に塗り替えました。

 なお、ピーター・ヒックマン選手はヤマハ「YZF-R7」で出走しましたが、1週間を通して完走周回できず、予選通過とはなりませんでした。

 スーパースポーツクラスはこの日、さらに記録を更新したダンロップ選手(Yamaha YZF-R6)が全体の1位となりました。

 日本から参戦している山中正之選手は、スーパーツインクラス32位(出走38台)、スーパースポーツクラス50位(出走53台)で、どちらも予選通過しました。

「スーパーバイク」クラスで4位と好位置に付けた若手の有望選手、ホンダ「CBR1000RR-R Fireblade」を駆るデイビー・トッド選手(写真/小林ゆき)
「スーパーバイク」クラスで4位と好位置に付けた若手の有望選手、ホンダ「CBR1000RR-R Fireblade」を駆るデイビー・トッド選手(写真/小林ゆき)

 最後に「スーパーストック」と「スーパーバイク」クラスのセッションが続きました。こちらも、ほとんどの選手が両方エントリーしていますが、この日はスーパーストッククラスでの出走の方が多めでした。

 スーパーストッククラスはこの日、若手ライダーのデイビー・トッド選手(Honda CBR1000RR-R Fireblade)がトップタイムを記録。トッド選手はエンデューロやスーパーモト選手権にも参戦経験がある選手で、表彰台獲得に期待がかかります。

 スーパーストッククラス全体では、ヒックマン選手(BMW M 1000 RR)が予選1位での通過となりました。

 スーパーバイククラスは、ダンロップ選手(Honda CBR1000RR-R Fireblade)がスタンディング・スタートで平均時速135.531マイル(216.840km/h)を記録。予選中なので非公式の記録となりますが、これまでのコースレコードを更新するペースでの走りを見せました。

「スーパーバイク」クラスではマイケル・ダンロップ選手に後塵を喫したピーター・ヒックマン選手(写真/小林ゆき)
「スーパーバイク」クラスではマイケル・ダンロップ選手に後塵を喫したピーター・ヒックマン選手(写真/小林ゆき)

 今年のTTレースは連日、好タイムが連発されていますが、理由はいくつか考えられます。

 一番の理由は、雨も霧もない好天に恵まれたことですが、マシン側の進化もあります。コロナ禍が落ち着き、レース開催数も戻って実戦テストが進み、マシンやタイヤの熟成がさらに進んだことなどです。

 また、マン島のTTマウンテンコースそのものの改革も影響があると思われます。例えば、コースの一部の路面が改修されたこと、コースのあちこちで日照を阻んでいた道路際の大きな木を切ったことにより、路面が明るくなって視認性が良くなったこと、路面温度が高まりやすくなったことなどです。

 なお、今年のプログラムの表紙にもなっている地元の雄、コナー・カミンズ選手は感染症に感染して走行を取りやめ、決勝レース初日と2日目の欠場を発表しました。また、マリア・コステロ選手など何人かの選手は、転倒による怪我で出場をとりやめています。

「サイドカー」クラスで2番手に付けるピーター・ファウンド/ジェバン・ウォムズリー組。撮影場所はジンジャー・ホールと呼ばれるカーブで、このように観戦客とマシンとの距離はわずか数メートル(写真/小林ゆき)
「サイドカー」クラスで2番手に付けるピーター・ファウンド/ジェバン・ウォムズリー組。撮影場所はジンジャー・ホールと呼ばれるカーブで、このように観戦客とマシンとの距離はわずか数メートル(写真/小林ゆき)

 いよいよ2023年のTTレースは6月3日、土曜日に「モンスター・エナジー・スーパースポーツTTレース1」と「3wheeling.mediaサイドカーTTレース1」から始まります。

 翌4日の日曜日は、昨年までレースとレースの合間の日となり通称「マッド・サンデー」と呼ばれ、バイクで観戦に訪れたライダーたちがTTコースを非公式に楽しむような日でした。しかし今年はTTレース史上初となる日曜日のレースとなり、「RSTスーパーバイクレース」が行なわれます。

【2023年TTレース開催日程:マン島TTマウンテンコース(1周約60km)】

■6月3日 土曜日
Monster Energy スーパースポーツTT レース1(4周)
3wheeling.media サイドカーTTレース1(3周)

■6月4日 日曜日
RST スーパーバイクTT(6周)

■6月6日 火曜日
RL360 スーパーストックTTレース1(3周)
Carole Nash スーパーツインTTレース1(3周)

■6月7日 水曜日
Monster Energy スーパースポーツTTレース2(4周)
3wheeling.media サイドカーTTレース2(3周)

■6月9日 金曜日
RL360 スーパーストックTTレース2(3周)
Carole Nash スーパーツインTTレース2(3周)

■6月10日 土曜日
サイドカー100周年記念パレードラップ
Milwaukee シニアTTレース(6周)