レーシングドライバーの木下隆之さん(筆者)は、ホンダのバイクの内燃機関は安泰だと言います。どういうことなのでしょうか?
あれ? またやるの?
ホンダのF1復帰記者会見を聞いていて、「あれっ?」と思ったのは僕(筆者:木下隆之)だけではなかったのではないのでしょうか。「2026年からアストンマーチンF1チームにエンジンを供給する」そう発表したのです。
ホンダは2040年までにEV・FCV比率を100%にすると宣言しています。つまり、エンジンに絶対の自信を持つホンダが、自らの最大の武器である内燃機関を捨てると宣言したわけです。ですが、F1に関してはエンジンサプライヤー(パワーユニットサプライヤー)として復帰を宣言したわけです。
すでにF1レッドブルレーシングへの供給も終えています。影になり技術的な支援は継続していますが、ボディからHONDAのロゴは、一旦は消えました。
これまでホンダは、F1に関しては参戦と撤退と復帰を繰り返してきましたが、市販車から内燃機関を排除すると宣言したわけですから、そこで得た技術をフィードバックするというモータースポーツの性格上、レースを継続する意味がなくなったのです。ですが、二転三転、また復活すると言うのです。
復活の理由は、F1が2026年から、電動化の比率を上げるからだとしています。内燃機関は終えるけれど、電気とガソリンエンジを組み合わせたハイブリッドならば継続する意味がある、というワケです。
ですが、すでにF1マシンはハイブリッドです。電気モーターと内燃機関を組み合わせて走っているのです。いまさら電動化だからF1に復帰する……と。ハイブリッド時代にチャンピオンになりながら、ハイブリッド時代なのに参戦を終えた。だと言うのに、ハイブリッド時代だから復活する。これは不自然ではないでしょうか。
そもそも、ずいぶん前から2026年からマシンの電動化率が高まると噂されており、F1界の中心にいるホンダが知らなかったというのも不自然です。僕はやはり、世界的なEV化の傾向が懐疑的になっているいま、ホンダの内燃機関への執着が頭をもたげたのではないか、と想像しています。「やっはりガソリンエンジン、やりたいんだよ」これが本音ではないのでしょうか。
という意味で言えば、ホンダのバイクの内燃機関は安泰ですね。2025年までにホンダは電動バイク10車種を発売すると宣言しています。総販売数の約35%、年間350万台レベルの電動バイク販売を目指すとしています。クルマが内燃機関から100%脱却するとしたことより現実的ですね。
逆に言えば、総販売数の約65%は、内燃機関を作り続けると宣言したワケですから。
ホンダの経営戦略は不安定のような気がしますが、少なくともバイクの将来は安定しているように思えます。「エンジンのホンダ、永遠なり」……心の底から期待しています。