バイクやクルマは横断歩道を横断しようとする歩行者がいた場合、手前で減速・停止して譲らなければなりません。しかし信号機のない横断歩道などで歩行者の数が非常に多いと、何分くらい待てばいいのかわからずヤキモキすることもあります。実際、横断歩道の歩行者はどれくらいまで優先すれば良いのでしょうか。警察にお話を伺いました。

横断歩道は歩行者優先!交通ルールを守ることが大事

 道路交通法第38条に基づき、バイクやクルマが横断歩道に接近する場合は横断しようとする歩行者が明らかにいない場合を除いて、横断歩道手前で停止・もしくは減速する必要があります。これは、信号が設置されていない横断歩道でも同様です。

バイクやクルマが横断歩道に接近する場合は横断しようとする歩行者が明らかにいない場合を除き、横断歩道手前で停止・もしくは減速する必要がある
バイクやクルマが横断歩道に接近する場合は横断しようとする歩行者が明らかにいない場合を除き、横断歩道手前で停止・もしくは減速する必要がある

 警察庁が公表する情報によると、平成30年から令和4年までの過去5年間でクルマと歩行者が衝突した交通死亡事故は4678件発生しており、およそ7割の3295件は歩行者が横断中の事故であるといいます。

 つまりこの法律は、横断歩道で歩行者が犠牲となる交通事故が後を絶たないことが要因であるといえるでしょう。

 もしも横断しようとする歩行者を無視して走行した場合は「横断歩行者等妨害等違反」が適用され、違反点数2点に加え二輪車には6000円、原付の場合は5000円の反則金が科せられることになります。

 しかし、それでも横断歩行者等妨害等違反の取り締まり件数は年々増加しており、令和4年中は平成30年の約1.9倍となっています。警察もこの事態を重く受け止め、対策強化日を設定した全国一斉の取り組みやポスター・チラシといった各メディア等を活用するなどして、取り締まりの強化と広報啓発活動を推進しているようです。

横断歩道は歩行者優先とは言うものの…どれくらい待てばいい?

 事故を発生させないために、ライダーには慎重な走行と交通ルールの遵守が求められます。しかし歩行者に道を譲るとは言うものの、歩行者の数が非常に多く交通が途切れない場合、後続車へ迷惑がかかってしまうのでは…と不安に思う人もいるでしょう。

事故を発生させないために、ライダーには慎重な走行と交通ルールの遵守が求められる
事故を発生させないために、ライダーには慎重な走行と交通ルールの遵守が求められる

 では実際、横断歩道の歩行者はどれくらいまで優先すれば良いのでしょうか。警視庁交通相談コーナーの担当者は、「どこからが妨害でどこまでが妨害ではないのか、という明確な基準はありません。あくまでそのとき現場にいる警察官の判断になります」と話します。

例えば歩行者がアイコンタクトやジェスチャーで道を譲ってくれたタイミングで横断歩道を通過した場合、交通取り締まりの趣旨を考えると取り締まることは難しいでしょう。交通整理をしている警備員が、歩行者を止めている時も同様です。

 横断歩道の歩行者優先については、どれだけ優先すれば良いのか明確な時間や状況が定められているわけではないので、警察側でもどれくらい待てば良いと言い切ることはできないようです。

 また、歩行者から道を譲ってもらった場合は走行しても良いと受け取られがちではありますが、その場にいる警察官の判断によっては違反切符が切られる可能性が捨てきれません。歩行者の横断を待つことで生じる後続の渋滞が気になるかもしれませんが、基本的に歩行者が渡り切るのを待ってから通行しましょう。

※ ※ ※

信号の有無にかかわらず、横断歩道は歩行者が優先と交通法に定められています。歩行者が多い場合何分くらい待てば良いのかヤキモキすることもあるかもしれませんが、事故の危険性を少しでも減らすために、交通ルールを遵守した走行を心がける必要があります。

また、歩行者が途切れたと思ってもすぐに発進するのではなく、付近に歩行者が本当にいないか十分に確認することが大切です。