東京都江東区にある日本最大の温泉テーマパーク「東京お台場 大江戸温泉物語」が昨年9月5日に閉館した。東京都から借りている3万809平方メートルの土地が2021年末に契約期限を迎えるが、延長も再契約もできなかったため閉館を決めた。03年に開業した温泉施設で、臨海副都心の南西の端、新交通ゆりかもめのテレコムセンター駅近くに立地する。

 東京湾の地下1400メートルからくみ上げた天然温泉が露天風呂、砂風呂など10種類以上の浴槽に使われる。江戸時代の街並みをモチーフにした飲食店街や休憩所がある。館内では浴衣を着て縁日や屋台を楽しめる。江戸情緒たっぷりの温泉施設は、日本人はもちろん海外観光客にも人気で利用者は年100万人にのぼるという。

 米投資ファンドのベインキャピタルは大江戸温泉物語ホテルズ&リゾーツ(登記上の本社は東京都中央区)を米ローンスターに売却することを予定している。ベインが大江戸温泉を買収したのは15年。19年には資金回収のため売却手続きに着手したが、その後のコロナ感染拡大で延期を余儀なくされていた。当面は支援を続けたが、感染収束が見通せないうえ、投資期間も長引いているため売却を決めた。

 入札には米系や中国系のファンドが顔を揃えた。最終的に買い手はローンスターに決まった。金額は非公表だが、15年のベイン買収時は負債も含めて約500億円。今回は600億円程度とみられている。ベインは大江戸温泉が16年に上場した大江戸温泉リート投資法人に保有施設を売却した際、しっかりとリターンを得た。

 大江戸温泉の買収を決めたローンスターは米国に本部を置く大手ファンド。日本では全国のゴルフ場を買収してグループ化したPGMホールディングス(現在は遊技機大手の平和傘下のパシフィックゴルフマネージメント)などがある。20年には不動産会社ユニゾホールディングスの株式非公開化を支援した。

大江戸温泉は買収と転売の歴史

 大江戸温泉物語は買収と転売の歴史を繰り返している。01年、温泉施設・テーマパークの経営を目的として設立。東京・副都心の開発が進むお台場で、都が保有する遊休地を活用することで発足した。03年、江戸開府400年に合わせ、日本初の温泉テーマパーク「東京お台場 大江戸温泉物語」を開業した。

 04年、出資者である橋本浩キヨウデン会長(当時)が社長に就任した。橋本氏は一代でプリント配線基板の設計・製造のキヨウデンを東証2部上場会社に育て上げた起業家。ガラス繊維などの工業材料メーカーの昭和KDE、総合スーパー長崎屋などさまざまな企業を再生に導いた実績を持つ。一方でシンガーソングライターとしての顔もある、経済界の異端児として知られている。

 大江戸温泉物語の社長に就いた橋本氏は、07年から全国の温泉旅館のM&A(合併・買収)を開始した。東京お台場の土地は東京都から借りているので、契約が満了になれば更地にして返却しなければならない。それに備えて全国の温泉旅館の買収に乗り出した。

 10年、栃木県日光市の有名温泉旅館「鬼怒川観光ホテル」を買収。同年には、香川県丸亀市でテーブルマーク(旧加ト吉)などが運営していた四国最大規模のテーマパーク「ニューレオマワールド」を手に入れた。レオマワールド内のホテル「レオマの森」、天然温泉「森の湯」の経営権もテーブルマークから取得した。

 相次ぐ買収で大江戸温泉は全国29カ所で温泉旅館や温浴施設を運営するまでになった。そこで転売する道を選んだ。ベインキャピタルが15年3月、大江戸温泉を買収した。橋本氏と一族から全株式を取得。橋本一族は経営から手を引いた。

 買収額は負債を含めて約500億円。大江戸温泉は台湾や韓国などアジアからの客が増え、業績は伸びていた。ベインが持つ外国人向けの販売促進策のノウハウを活用して、訪日外国人をテコに成長を目指す。ベインは11年に買収した外食大手すかいらーくの経営を立て直すなど、チェーン店企業の再生に実績がある。

 ベインは大江戸温泉の株式上場を想定していた。だが、新型コロナの感染拡大で計画は頓挫。コロナ禍でインバウンド需要が蒸発したからだ。大江戸温泉物語ホテルズ&リゾーツの決算公告によると、21年2月期の売上高は161億円。コロナ前の20年2月期の381億円から激減した。最終損益は23億円の赤字から107億円の赤字へと赤字幅は拡大。累積赤字は189億円に膨れ上がった。

 22年2月期の財務内容は一段と悪化していると思われる。これがベインが売却を決断した理由だが、買い手のローンスターはいかにして、インバウンドが消えた大江戸温泉を立て直すのか。稼ぎ頭だった「東京お台場 大江戸温泉物語」は営業を終了している。ベインの手腕が問われることになる。

(文=Business Journal編集部)