アメリカの起業家、イーロン・マスク氏が買収したTwitterで混乱が続いている。特に物議を醸しているのが大量の人員解雇だ。マスク氏は、世界で約半数の社員を解雇したことを認めており、日本法人のTwitter Japanでも約半数の社員が解雇されたとの報道も出ているが、先進国のなかでも解雇規制が厳しいとされる日本で、今回のような突然の解雇は法的に問題ないのだろうか――。

 マスク氏によるTwitter買収の動きが明るみになったのは、同氏がTwitter株の9.2%を取得して筆頭株主となった今年4月のことだった。同月にはマスク氏がTwitterを440億ドル(約5兆6000億円)で買収することで同社と合意したが、その後、一転してマスク氏が買収契約を解除する動きをみせ、一時はTwitterが裁判所に提訴するなどの紆余曲折を経て、マスク氏は10月に買収を完了させた。

 その直後からSNS上では、Twitterから突然解雇されたという元社員による報告が相次ぎ、マスク氏は解雇の事実を認めつつ「会社は1日あたり400万ドルを超える損失を出しているため、ほかに選択肢はない」と説明。約3700人の社員を解雇したとみられているが、誤って解雇した元社員に復職を要請しているとも伝えられている。

 買収の影響は日本にもおよんでいる。今月4日、SNS上では、日本法人のTwitter Japanを突然解雇されたという投稿が相次ぎ、同日以降、各ジャンルのトレンドワードなども表示される「ニュース」フィールドが一時、更新ストップとなり、「トレンド」フィールドでそれまで頻繁にランクインしていたジェンダー系やポリコレ系、SDGs系、左翼系のキーワードが激減したという指摘も続出。Twitter側がトレンド表示を“操作”していたのではないかという疑いも広がっている。

「Twitterのヘルプセンターによれば、トレンドはアルゴリズムで決定されています。ただ、背景情報の追加や不適切な投稿の除外など、人間の手による『操作』も入っているようです。そもそもアルゴリズムは人間が作るものなので、ユーザーにとって『アルゴリズムか人間か』の違いはあまり重要ではないでしょう」(ITジャーナリスト・山口健太氏/11月8日付当サイト記事より)

「SNSの運営企業として不適切」

 一部報道によれば、先週4日にTwitter Japanの全従業員向けに解雇対象か否かを通知するメールが一斉に送信され、解雇対象者は業務用PCやメールアドレスを使用できなくなったという。

「Twitter Japan広報部に連絡がつかないという状態が続いており、同社の公式Twitterアカウントの更新も1日以降、一度も更新されていない。日本法人も約半数の社員が解雇されたという情報は、あながち嘘ではないとの見方も強い」(全国紙記者)

 マスク氏本人が全世界で約半数の社員を解雇したと認めている以上、日本法人でも同じ事態が起きていてもおかしくはないが、こうした突然の大量解雇は日本では法的に問題ないのだろうか。

「いきなり半数近くの社員を解雇するのに、日本の労働法上『合理的な理由』と認められるものが存在するとは考えにくい。つまり、Twitter Japanは極めて違法に近い行為だと認識した上で解雇に踏み切ったわけで、そのような“脱法的企業”が高い公共性を帯びるSNSの運営企業としてふさわしいはずはない」(上場企業の管理部門社員)

とりあえず解雇するという程度なら、解雇は不当

 山岸純法律事務所代表の山岸純弁護士は次のように解説する。

「日本法人であるTwitter Japan株式会社も、当然のことながら日本法の適用を受けます。かつて、外資系の日本法人を相手方として法的トラブルの交渉をしていた際、“渉外事務所”と呼ばれるところに勤務する弁護士が『アメリカの法律では〜』などと、日本では適用されない法律を振りかざして主張していたことがあり、爆笑したことがありますが、日本法に準拠し、日本で設立された株式会社には、間違いなく日本法が適用されます。もちろん、労働基準法、労働契約法などのいわゆる労働法も適用されます。

 したがって、Twitter Japanにおいても、『客観的に合理的な理由』と『社会通念上相当』でない限り、従業員を解雇することはできません(労働契約法第16条)。

 今回のイーロンさんによるTwitter Japan従業員の解雇がどのような理由によってなされたのかは、正直、ニュースを見てもよくわかりません。もし、不採算部門の整理、破産を回避するための会社全体的な整理といった究極的な目的によるものではなく、また、一人ひとり営業成績や品行等を熟慮してのやむなくの解雇などではなく、“オレが新しい株主になって社長になったから、オレの経営方針によって、旧来の従業員はとりあえず解雇する”という程度なら、解雇は不当であり、無効となることでしょう。

 刑事罰などはないのですが、従業員が『解雇は無効である』として、裁判手続などで給料の支払などを求めてきたら、まぁ、キビシイ状況になるのは目に見えてます。日本の裁判では、『解雇は無効である』と判断された場合、『解雇した日以降の給料』を支払わなければなりませんし、それだけではなく『Twitter Japanの従業員であることを認める』という判決になるので、イーロンさんがやりたかったことは、全てムダに終わります(最悪、おカネだけ払ってサヨナラしてもらう、というわけにはいかないのです)。

 また、日本には、英米法なんかで言われている一時解雇(景気変動や不況により業績悪化した場合に、一時的に人件費を下げるため、一時的に労働者の再雇用を前提とする解雇をすること)の制度はありません。正直、何考えているのかわかりません」

(文=Business Journal編集部、協力=山岸純弁護士/山岸純法律事務所代表)